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ちょっと踏み込んで考えてみる

先週から、LAから2時間ほどに位置するメキシコと国境を接する街、サンディエゴに滞在している。
週末のコインランドリーでの出来事。
車から降りると、駐車場で若い男性が中年カップルの女性の方に対して、
「いい歳して10歳の子供のような格好して頭おかしいんじゃないか」と冷やかしていた。事情はよくわからなかったし、私はその女性がどんな格好していたか十分に確認していなかったけれど、、何となく場の空気が良くなかったので、
「可愛いからいいじゃない」と反射的に彼らに向かってコメントした。飽くまでも笑顔で。正義感でというよりは、ちょっとでも場が和めばいいと思って軽い気持ちで言った。
そしてそのまま、コインランドリーに入って、洗濯の準備をしていたら、やはり外が騒がしい。カップルと男性が言い争いを続けていた。
耳を傾けていると、どうやら男性が、喫煙禁止の場所でタバコを吸っていたところを中年女性が注意したことから口喧嘩になったらしい。
しばらくしてから、男性がへらへら笑いながら「あいつら頭おかしいんだぜ」と言いながらコインランドリーに入ってきた。どうやら争いは収まったらしい。
私はコインを入れて洗濯機が回ってることを確認して外に出た。
駐車場で中年女性に「さっきは庇ってくれてありがとうね。私たちホームレスなのよね。」と言われ、彼らの車の中をチラッと見ると、雑多なもので溢れていた。そして、確かに彼女のファッションも10歳の子供のような格好だった。
ありがたく思われて悪い気はしなかったが、少し複雑な気持ちになった。

実は、若い男性が黒人で、中年カップルが白人だったことから、反射的なコメントした後に「もしかしたら、黒人男性の方が先に人種差別的なことを言われたのかもしれない。」と頭によぎった。「それだったら、中途半端にコメントなんてしない方が良かったかも。」と思ったのだ。しかしながら、サンディエゴのエスニシティの事情もよくわからないし、「人種」というメガネで全ての物事を判断するのは危険だよなと思い直した。後から喫煙のことでの揉め事だとわかって正直ホッとした。
確かにホームレスの女性はちょっと変な格好をしていた。でも、公共の場で糾弾されるレベルではない。おそらく彼らがホームレスであることから、男性側が強く出て言い争いになったのだと想像する。「ホームレスにとやかく言う資格などない」といったように。
事情を知る限りでは、喫煙禁止の場所でタバコを吸っていて、それを注意されたことにキレた男性側が悪いだろう。いや、もしかしたら、中年女性の注意の仕方が悪かったのかもしれない。いや、男性側が日常的に差別をされて辛い思いをしていたのかもしれない。人に変だと思われる格好をしていたら、頭も変だと思われても仕方がないと思う人もいるかもしれない。

…いやはや、通りすがりの自分が、咄嗟に他人の痴話喧嘩の正当性を判断するは不可能だし、そもそも判断する必要はないだろう…

もう一つの出来事。
先日、遊歩道を歩いていたら、向かいから自転車が来たので、気持ち程度に右に避けた。(狭い道ではなかったので、自転車が通る幅は余裕であった)ここの人はちょっとでも道を避けると「ありがとう」と言ってくれるので、こちらも避け甲斐があるのだが、その自転車に乗っていた男性が、私の顔を見て、真顔で”Poor me”と言った。直訳すると「かわいそうな私」と言う意味だが、はて、何故に?と疑問が残った。「私と目が合ったことで不快に思われた?それとも私の顔など見るに値しないのか?」何を思おうがその人の勝手だが、面と向かって言われるとなると別問題だ。もしかして、”Poor me”には私が知らない意味があるのかもしれないと思って、現地の友人に自転車の男性が何を言いたかったのかと聞いてみた。が、友人にも何故彼が”Poor me”と言ったのかは意味不明だった。「私、もしかして人種差別された?それならはっきり言ってくれていいよ。」と言ってみたが、「いや、それは考えられない。もしかしたら精神的に問題がある人かもね。」と。ふむ。自転車に乗っていた男性は、いわゆる知的なミドルクラスの白人で、一軒家に家族と暮らしていそうな外見だった。精神的に病んでいるとは考えにくい、と咄嗟に思ったが、いやはや可能性はなくはない。もしかしたら、男性はその日職場で解雇を言い渡されたのかもしれないし、”Poor me”というのが口癖なのかもしれないし、お腹を壊していてトイレにたどり着く前のギリギリの状態だった可能性もなくはない。

自分には関係のないことだと思って片付けるのは簡単だし、多くの場合によってはそうすることはスマートだ。
でもここでちょっと踏み込んで考えてみる。そしてこう思うのだ。
もしかしたら、日常的に結構な確率で、私たちは他人に対して見た目や偏見で状況を判断して片付けているのではないだろうか。どちらが弱者で、どちらに非があるかなんて、外から見てすぐに判断できるものなのだろうか。

「世の中には色んな人がいる」(だから面白い)

そんな日常の小さな出来事について、せせこましく考えを巡らし、他人の事情について想像している、そんな暇人の独り言。


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