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バックソフトボール・ジニー

Vol.1 ジニーが乱闘を起こす

女子ソフトボールの試合。
国際試合だ。
オリンピックの試合かも。

アナウンス・ブースの中。
アナウンサーと解説者の二人がいる。

アナウンサー「ジニーです! ジニーが乱闘を起こしました!
ジニーは、代表選手になるために、日本に帰化したそうですね」
       
解説者「そうらしいですね」
       
アナウンサー「それにしても、珍しいですネ。
ソフトボールで乱闘とは」

解説者「私は、初めて観ましたよ」

アナウンサー「しばらく観ていましょう!」

画面、乱闘騒ぎのアップになるが、
騒ぎの音は、消えて聴こえない。

乱闘するジニー。

バックにディズニーの「It's a Small World」が、かかり、
タイトル、出演者の名前などが、ながれ始める。

画面だんだん暗くなり、
出演者、スタッフの名前だけが、ながれる。
「It's a Small World」は、かかったまま。

夜。
日本チームの宿舎。
食堂。

薄暗い。

ジニーと良子が、二人、並んで食事をしている。

良子「ジニー、お箸、使うの上手くなったわねー。
もうフォークを使わずに食べてる」

ジニー「ひとりで特訓したの」

良子「コントロールも、それぐらい良くなってくれるといいんだけど」

ジニー「あれは、headを狙ったのじゃない!」

良子「でも、そう思われたわよ」

ジニー「うーん」

良子「瞳もスタンばってなかったし、
退場になってたら、どうするつもりだったの?」

ジニー「歩(あゆみ)が来た!」

歩、ジニーと良子に近づいて来て、
「ジニー、監督が部屋に来てって、呼んでる」

良子「きたわよー」

ジニー「OK!」

良子「あたしも一緒に行くわ。これでも、キャプテンだしネ」

ジニー「ありがとう、リョコ!」

良子「リョーコ!!」

Vol.2 監督の名前は、"Love"

女子ソフトボールの試合。
国際試合である。

ピッチャー・ジニーが、
ランナーを、二人、背負っている。
“フォアボール”を、二回、出したのだ。

キャッチャー・良子、
「ジニー!」
と声を掛けながら、ピッチャー・マウンドへ歩み寄る。

良子「これ以上、“Walk”を出したらマズイ。
交代させられるわよ」

ジニー「“Walk”、三回で交代なの?!」

良子「監督の名前、“愛”だけど、
ぜんぜん"With Love"じゃないからね!」

ジニー「“愛”って、"Love"っていう意味だったんだ」

良子「瞳は、コントロール良いから、交代もあるわよ」

ジニー「Manager、怖い!
Manager、ひょっとしてピッチャー出身だったの?」

良子「そうよ。
バッターが手を出しにくいところに、
ストライクを投げるって、
有名だったんだから。
あと5年早く生まれてたら、
私も監督のボール、受けられたのになァー。
とにかく、ここストライク先行でね!」

ジニー「OKay!」

良子、守備位置へ戻りながら、
「しっかりいくわよ」
と大声で言う。

ジニー、前かがみになって、
良子のサインを良く見るため、
サンバイザーを少し上へあげる。

したたり落ちる汗は、ぬぐわないが――。

Vol.3 テッドの訪問

女子ソフトボール、
日本チームの宿舎。
昼。
今日は、試合がない。

ジニーの部屋のドア。
良子がノックしながら、
「ジニー、お客様」
と言う。

ドアが開き、ジニーが顔を出す。
「リョコ!」

良子「“リョーコ”! 
何回、言ったら分かるの?
マッケイっていう人が来てる」

ジニー、
「テッド!」
と叫んで走り去る。

良子「あーあ、鍵もかけないで――」

宿舎内のロビー。

ジニー、
「テッド!」
と叫んで、テッドに駆け寄り、
足まで抱きつく。

テッドは、かなり背が高い。

テッド「ジニー、そんな抱きつき方をされたら
キスもできない――」

ジニー「ごめんなさい――。
えっ。キスするの?」

テッド「もちろんジョークさ。
道の向いにカフェがあったから、
そこで話をしよう」

宿舎の前のカフェ。
窓際の席。

ジニー「しばらく日本に居るの?!」

テッド「フランスの出版社からの依頼で、
日本についての写真集を出すことになったんだ。
しばらくは、日本とフランスの往復かな」

ジニー「写真だけの『日本の本』?」

テッド「そうだ。
その国の文化を知るには、
写真を撮るのが一番いいんだ。
少なくとも、俺はそう思っている」

ジニー「もちろんモノクロームね?!」

テッド「“セピア”にしようと考えている――」

ジニー「『現代の日本』を“セピア”で切り取るのね。
素敵! テッドらしい」

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