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モノローグ「胸を張れ」



作・コジマヒロヒサ

だから何度も言ってるだろ。舞子との結婚は認めん。
土下座なんてやめなさい!
…だから、違うと言ってるだろ。
君が役者だからダメだって訳じゃない。

いいかいケイタ君、そもそも役者はそんな申し訳なさそうにしなければならない職業かね?
君には黙っていたが、何度か君の舞台も観させてもらった。
下北沢でやってたあれ、なんて言ったかな?
五反田とかいう演出家の…そうそうそれ!
カワウソ少女たかはしだ!
あれはなかなか面白かった。
…まあ、確かにケイタ君の出番は少なかったが、あの役がなければストーリーは成り立たんよ!
それにアンサンブルシーンもお見事だった!
私はあの芝居を観て、しばらく立ち上がれんくらいの衝撃だったよ!

実はな、ケイタ君。
私も昔、役者をやっていたんだよ。
そりゃーもうゴリゴリのアングラ劇団にいてね。
まあ貧乏だった。
DMを出すのに銀行のATMにある封筒を使ってたよ。
いつも腹を空かせていた…でも楽しかった。

30の時に父が倒れてね、実家に帰って仕事を継いだ。
それを機に役者を諦めた。
後悔がなかったかと言われれば、もちろんあったよ。
でも私には才能もチャンスもなかったんだ。

正直なことを言おう。
私はね、君が羨ましい!
舞台の上であんなにも楽しそうに躍動する君が私には眩しい!
ケイタ君!君は役者としてまだまだ伸びしろがある!
なのにどうして役者を辞めて働くなんて言うんだ!
結婚するから、舞子を幸せにしたいから辞めるって、役者のままでは舞子は幸せにできないのか?
私は君が役者のまま舞子を幸せにすると誓わない限り、結婚は認めない!

困った時はいつでも私を頼ればいい。
だから胸を張って役者でいてくれ。


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