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何のために勉強するの?~息子と一緒に考えた我が家の記録(現在進行中)~

1.勉強をやめてみた

息子、小学5年生。
3ヶ月ほど前、息子が家で勉強をしなくなったので、
それならば、今まで勉強にあてていた夜の1時間半を何して過ごすの?という話になった。

今までは息子に付き合って、私が勉強を教えたり、夫が勉強を教えたりしていた時間。息子が勉強しないならば??


勉強しなくなったのは、息子が勉強をやりたがらないから。
それでも、ずっと小学1年生の頃から決まってやってきた夜の勉強時間なので、だましだまし、息子がやる気になるように手を変え品を変えて小学5年生になった今日まで勉強を続けてきた訳だけど、息子のあまりにもやる気のない態度に付き合っているのがいよいよ馬鹿らしくなったのだ。

勉強が嫌いなのはいいよ。みんなそう。あたりまえ。

でも、例えば教えてもらってる時、その態度はなくない?
やる気なくあさっての方ばかりむいてボーッとしてたり、変な言い訳をしてみたり、わからなくてイライラして当たり散らしたり、そんな態度だから、私は何度も注意したし、息子も何度も反発した。

想像できると思うけど、全然楽しい勉強時間じゃなかった。家の中がギスギスするだけ。そんな日々を何ヶ月も過ごして、こんな嫌な思いをしてまで、家で勉強をしなくちゃいけないんだろうか?と思っていた。息子にとっても私にとっても、これは良いこととは言えないんじゃないか?と思っていた。

それでとうとう、しばらく勉強をやめてみようということになったのだ。そんなにやりたくないならしなくていいよ、と。
4月の半ばくらいのことだったと思う。

でも、だからといって、空いた1時間半ゴロゴロしてマンガを読んで過ごしていい訳はない!なんでか?だってそれは、、なんかムカつくから!笑

もともと息子との勉強にあてていた時間だったので、私と夫はそれぞれ仕事をする時間にし、息子にもそれ相応の時間の使い方をして欲しかった。

それで、何をさせるのがいいか考え、家のお手伝いをさせることにした。
ちょうど晩御飯が終わった後なので、洗い物と、リビングの掃除をさせてみた。これからは毎日この時間にやるんだよ、と。


2.勉強しないかわりに家のお手伝いをしたら?

お掃除初日、息子は洗い物や掃除をめんどくさそうに嫌そうにやった。
リビングのモップかけだって、すごく適当に床の広いところだけササッとやって「終わった」と言った。

いやいや待て待て。
お掃除は綺麗にするためにするんだよね?
そこらへんだけササッとやって、隅っこの方とか、ちょっとゴチャゴチャと物があるところはどうするの?動かせるものは動かして綺麗にしようよ。そもそもあなたのおもちゃがいっぱい散らかったままなんだけど、これは片付けないの?
どんなふうにすればキレイになるのか、自分で考えながらやってよ?

すると息子は変な言い訳をした。
「もう十分キレイだよ!」とか
「じゃぁなに!?コンセントも全部はずせっていうの!?」とか。
注意する私に「ムカつく」とも言った!!(私はここでブチ切れた!)
そして面倒くさそうに掃除をした。
もう態度で丸見え。
こんなにも人の気持ちは態度に出てしまうものなんだ、と逆に気付かされたのだけど。

そんなふうにして、お掃除初日は結局またお説教で終わったのだけど、大きな収穫もあった。

それは、息子がなおさなくてはいけないところがよくわかったということ。

やりたくなくても、やらなきゃいけないことはいろいろある。
決められた時間だけでも、きちんと前向きに取り組みなさいと話した。イヤイヤやるんじゃなく、ね。
学校でも気をつけなさい。あなたのその態度はやりたくないのが丸見えだよ、と話した。


<息子が直さなければいけないところ>
・親や目上の人への言葉遣い、きちんとした受け答えをする
・人の言葉・アドバイスを素直に聞く気持ちをもつ。
 すぐ変な口ごたえするのをやめる。
・やりたくないことでも前向きに取り組む気持ちを持つ。物事に取り組む姿勢。

勉強が嫌いだからいつも勉強の時間にあんな態度になっちゃうんだと思っていたけど、そもそも、勉強に取り組むための土台がちゃんとできてないんだなぁと思った。だって、今挙げた3点は、勉強に取り組むにあたって絶対必要なものだと思わない?
どうしたら身に付くのかなんてわからないけど、とりあえずしばらく毎日のお手伝い・掃除を続けてみようと思う。



3.お手伝いを始めて一週間たった頃

ごく最初のうち、息子は1時間半のお手伝い&掃除の時間が苦痛なようだった。「勉強の方がましだった」と言ったりしたけど、3日目くらいからはとくに文句も言わず淡々とやるようになった。

洗い物や掃除機かけ・モップかけだけではすぐ終わってしまうので、雑巾がけやトイレ掃除、お風呂掃除、玄関掃除、洗面所の掃除、ユニフォームの洗濯(泥汚れ)、ペットボトルの分別、古紙の整理、洗濯物を畳む・しまう、など、思いつく限りのことは全てやり方を教えて、どれでも一通りできるようになった。

でも、その日にどれをやるべきか、は特に伝えず、自分で考えてやるようにと言っている。トイレが汚れているな、と思ったらトイレ掃除、ペットボトルがたまってきたな、と思ったらペットボトルの分別、、など、自分で考えて行動できる力もつけて欲しいと思っていた。

最初は汚いものに触るのも嫌がったりしていたけど、今ではトイレ掃除だって這いつくばって頭を便器にこすりつけながら(笑)いろんなところを磨いている。おかげで我が家はいつもキレイになった。

何と言っても、リビングに散らかされていた息子の脱いだ洋服や持ち物類がきちんとしまわれるようになったので、それだけでも部屋は見違えるように整頓されて感じた。私が今まで何度「片付けなさい」と注意しても片付けなかったのに。

学校で使ったお箸や水筒も、自分が洗い物をする時に忘れずに自分で出して洗うようになった。今までは私が洗い物をする時に毎回、「お箸出してー!」とか「水筒出して」と言わなければいけなかったけど、そういうことも無くなった。

玄関で脱ぎ散らかされていた靴も、今までは帰ってくるたびに「靴はちゃんと揃えてくれないかな」と思っていたけど(最初のうちは注意していたけど、毎日言っても直らないので最近はもう言ってなかった)、今は毎晩自分で玄関掃除のたびに揃えているし、脱ぎ散らかすことは少なくなったような気がする。

そして毎日、掃除の最後には反省会をして、今日はどうだったか?どんなことに気づいたか?どこを掃除したか?自分で考えて行動できたか?などを話すようにしたことで、報告の仕方や話し方なども練習した。

まだまだ雑なところも多いし、ちょっとだらけているなぁ、と思う時もあるけど、嫌な顔をせず、やらなければいけないこととしてちゃんと取り組めるようになったし、時には期待以上の仕事をしてくれるようにもなって、少しずつ息子は変わってきているように感じていた。

家の中がいつもキレイになったし、私の仕事が減って家事が楽になったし、勉強をしていた時のようなギスギスした時間はなくなったし、息子がいつでも一人立ち出来そうなくらい家事ができるようになったし、お互い感謝の気持ちをもてるようになったし、この計画は良いことがいっぱいだと思っていた。

でも、それと同時に、

「本当にこれでいいのかな?」とも思っていた。



息子は毎晩、家政婦のように働き続けているけど、
本当にそれでいいのかな?

いつか、勉強がしたい、と言い出してくれたら、いつだってこの時間は勉強にあててくれてかまわないと思っているけど、「勉強したい」と言い出すことなんてこのまま待っていてやってくるのかな?

息子の人生の貴重な時間を、こんなにお手伝いに使わせていいんだろうか?いつか、息子が目標を持ってそれに向かって動き出す時、一分一秒も惜しんで何かに取り組み始めた時、今のこの時間を悔やむことはないだろうか?


勉強ってなんのためにするんだろう。
小学生のうちから夢や目標のある子なんて少ないだろうし、そんな子どもたちに「どうして勉強するのか?」なんてさ、どう教えてあげたらいいんだろうね。


小学生や中学生の頃の勉強って、いつか、もっと大きくなって高校生や大学生になった時、本当にやりたいことが見つかった時に、目標に向かってしっかり頑張ることができる自分になるための「土台作り」なんじゃないかなぁ、と思う。

基礎学力という面もあるけど、どうしたら目標を達成できるのか?何をしたらいいのか?って自分で考えることのできる力や、挫けそうになっても諦めない精神力とか、そういう部分を、いつか本当に必要になる時のために準備しておく期間なんじゃないかと思う。

勉強なんて、今全然できなくても、いつか「やらなきゃ!」と思った時にそういう精神がしっかりと身についていたら、きっと死に物狂いで勉強して進めるものなんだと思う。


なんて、思ってはいるけど、実際な~んにも勉強しない息子を見ていると少しばかり不安にもなる。そうやって、そんなお掃除の日々がもう2ヶ月くらい続いていた。



4.お手伝いを始めて2ヶ月がたった頃

息子はいろんなことが一人でできるようになった。掃除も洗濯も洗い物も、これまでより上手にしっかりとできるようになった。少し前までは、洗い終わったお茶碗に洗い残した汚れや取れなかったご飯粒が残っていたり、油がよく落ちていないお皿があったりして、毎回数枚の食器が流しに戻された。

食器洗いというのは簡単そうだけど、意外と力が必要だと思う。泡で優しくなでただけでは汚れは落ちない。しっかりとゴシゴシしなくては取れない汚れがあることを息子は初めて知った。

また、油でギトギトのお皿を洗う時は、ポットのお湯を使う方法を教えてあげたら、なるほど~と言って毎回自分で判断してお湯をかけたりしている。
洗濯だって、これまでは私が横で見守りながら洗濯機をピッピッとやっていたけど、今では一人でも完璧に洗濯ができるようになった。(まあ全自動洗濯機なんて誰でも使えるようにできているんだけどw)そして、そんな一つ一つのことが少し嬉しそうだった。一人でできることが増えていくことが嬉しそうに見えた。

それでも時々は、私の目の届かないところでダラダラと同じところを拭いていたり、適当にザザッと掃除機をかけてゴミが取れてない、ということがある。集中してやる気のある日と、ダラダラしている日があり、誰も見ていなければついつい楽な方楽な方へと流されていくものだ。そんな時はビシッと掃除箇所を点検し、「私ってば、姑かよ」と思いながらも心を鬼にして注意する。


そんな風に毎日過ごしてきた6月のある日。


夫と息子は二人で遠くまで車ででかけたのだが、帰り道の車の中でいろんな話をしたらしい。

夫は今でこそ、そこそこ稼ぎのある個人事業主だけど、若い頃は勉強が大嫌いで、長いことフリーターだった時代がある。

幼い頃、幼稚園か小学校か忘れたけどお受験をして合格し、中学校までは賢い学校の学生だった。親が家庭教師をつけて、週に何度か先生がやってきたが、どうやって逃げ出すかばかりを考えていたらしい。そのくらい勉強が嫌いだったので案の定、高校受験で失敗し、私立の中程度の高校へ行ったが、そこでも悪さをして退学になり、さらに下のランクの高校へ編入した。その高校はヤル気のない生徒ばかりで、大学に進学するような人もほとんどいなかった。

そんな仲間の中で、夫は赤点ギリギリでなんとか卒業し、卒業後もアルバイトを転々として過ごした。家がまあまあ裕福だったので、親のスネをかじりながらフリーターをして暮らしたわけだ。

そんな話を息子にした夫は、「この頃が俺のどん底だな。あのままずっとアルバイトで生活してたら今頃どうなってたかな。給料だってたかが知れてるし、車だって買えないし、今よりもっと狭くてボロいアパートで一生暮らすのが精一杯だろうな」

「でも俺は、このままじゃやべぇな、って気づいたんだ。24歳くらいの頃かな。ちゃんと将来考えないとマジでやべぇなって思って、そっから俺は猛烈に勉強して大学受験をして大学に入って、大学でも誰よりも真面目に勉強したんだ。」

「だって、周りは高校卒業してすぐ大学に入った奴らだから18歳とかだろ?俺は25歳だから、若い奴より勉強ができないとかそんなクソダセえことは絶対に嫌だったからな!ガッハッハ!」

「それで、大学をトップの成績で卒業して、立派な仕事について、、、まぁその仕事は3年でつまんねーってやめたんだけどな!」

「で、自分で考えたビジネスを始めたんだ。一人だし、上手くいくかわからなかったけど、どうやったら上手くいくかめちゃくちゃ一生懸命考えて全部自分で一から作ってお客さんも見つけて、少しずつ規模が大きくなってさ。そうやって今に至るわけだ。」とかなんとか。

息子は静かに聴いていたみたいだったけど、その日の夜から息子の心に少しづつ変化があったようだった。


5.息子の気持ちに変化が現れた

数日たったある夜、
息子は寝る前に電気を消して暗くなった部屋の布団の中で、隣で寝る夫にこう言った。

「僕、勉強したい。」


「え?どうしてそう思ったの?」と聞くと

「僕、いい学校に行けるように勉強したい。中学受験したい。」と言った。


いい学校に行ってその先どうしようとか、なんでいい学校がいいのか、とかそんなことまでは多分わからないんだと思う。きっとただ漠然と、勉強っていうのは自分の将来と関係があるみたいだ、とかそういうことを感じたんだと思うし、それで十分だと思う。

勉強できることばかりが全てじゃないし、いい学校に行くことで成功が約束される訳でもない。でも、息子が今何かできることをやりたいと思ったのなら、もちろん応援しよう。息子がなんとなく自分の将来を考えて「勉強しようかな」と思ったのなら、それを引き止める理由なんかないし、喜んで協力しよう。勉強することで将来の選択肢が増えること、息子の未来が広がることは事実だと思うから。


それからしばらく経ち、学校が夏休みに入った7月の後半。
息子は約3ヶ月間にわたるお手伝いの期間を終了し、毎日午前と午後に2時間ずつ勉強する日々が始まった。


<つづく>


ありがとうございます!創作の力と糧に!