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第二回THE GUILD勉強会「Design in Tech Report 2018 を読み解く」に参加しました

先日、THE GUILDさんが主催する勉強会「Design in Tech Report 2018 を読み解く」に参加させていただきました。はじめ抽選から落ちてしまいましたが、運良く補欠で繰り上げ当選!

■イベント概要
アメリカで毎年開催されるビジネスフェスティバル「サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)」で、日系アメリカ人のデザイナーでデザイン×テクノロジーの領域の第一人者であるジョン・マエダ氏が発表した「Design in Tech Report 2018」を読み解いていく会でした。
■日本語訳
日本のデザイン・イノベーション・ファーム、takramが資料の翻訳をしてくださっています。
https://ja.takram.com/projects/design-in-tech-report-2018-translation/
■登壇者
THE GUILD代表の深津貴之さん、takramからディレクター/ビジネスデザイナーの佐々木康裕さん、ディレクター/デザインエンジニアの松田聖大さん、計3名。司会はTHE GUILDのこばかなさん。

内容についての詳しいレポートはGUILDオフィシャルの投稿
https://note.theguild.jp/n/na5f1baf39d5d
↑こちらにまとまっていますので、この記事では私が気になったポイントやそれに対する所感などを書きたいと思います。(文脈上、会の時系列から少し入れ替えたりしてます)
おそらく、私は参加者の中で今回の議題に関するリテラシー/知識/経験が低めの層だったのではないかと予想しています。あんま詳しくない人が持った感想として読んでいただけると嬉しいです。


デザインには3つの種類がある

<自分なりの前置き>
「デザイナー」とは何をする人なのか。この定義から考え始めると収集がつかなくなってしまうのでサラッと流しますが、「カッコ良いもの(ポスター、椅子、洋服、車、その他色々)を作るために手を動かす職人」というイメージを持っている人は少なくありません。
一方、「デザイン思考」「UXデザイン」などを筆頭にビジネスのシーンでは様々な「●●デザイン」という言葉が生まれており、デザインの範疇は広がり続けています。
</自分なりの前置き>

Design in Tech Report 2018ではデザインを3種類に分類しています。
(理解が及んでいない&自分の解釈も混じってますので、おかしいところがあったらご指摘いただけると嬉しいです)

( https://ja.takram.com/projects/design-in-tech-report-2018-translationより)

1.クラシカルデザイン
前置きで触れた「カッコ良いものを作る(ために手を動かす)」ことが該当します。
キーワード:造形、物質、手作業、精巧

2.デザイン思考
前置きでそのまま出てきた「デザイン思考」。デザイナーによる問題解決の手法はビジネスにも適用可能ということで広がった考え方、という感じでしょうか。
キーワード:共感、体験、サービス、ユーザー、イノベーション

3.コンピュテーショナルデザイン
言葉の通りコンピューターによるデザイン。言い換えると、テクノロジーによってデザインをブーストさせる、ということ?(「Macを使って作る」とかではない。念のため)
キーワード:人工知能/機械学習、ムーアの法則、モバイル、最新のテクノロジーパラダイム


コンピューテショナルデザインとは?

勉強会の予習のために資料を読んで参加しましたが、正直初めて知った言葉でした。

( https://ja.takram.com/projects/design-in-tech-report-2018-translationより)

登壇された皆さんの言葉の中で印象的だったものを箇条書きします。(メモが追いつかない部分もあったので言い方など変わっているかもです)
・日本ではようやく「デザイン思考」が浸透しつつあり取り入れる企業が増えてきたが、海外と比べると5年ほど遅れている。
・クラシカルなコンピューテショナルデザインもあると思うので「クラシカル→デザイン思考→コンピューテショナル」と時間軸的に並ぶのは違和感。
・テクノロジーによりレバレッジがかかって億単位にリーチするのがコンピュテーショナルデザイン。
・完成がなく、常に進化し続けている。進化のために検証やデータを受け入れることができる。


クラシカルデザインは時代遅れ?不要になる?

現在の自分の仕事領域でいうとほとんどが「クラシカルデザイン」に収まっているので、自然と心配になります。
結論としては、時代遅れや不要になっていくというよりは、「クラシカルデザインができることが前提としてありながら、テクノロジーでスケールさせたり、あるいはビジネスと結びつけることが必要になる」ということです。

これからの時代にデザイナーが持つべきスキル、というお話もありました。

( https://ja.takram.com/projects/design-in-tech-report-2018-translationより)

…やることめっちゃ増えますね。
そして、「クラシカルデザイン」に当てはまるものがゼロ。


「自分で作って自分で売ろう」

上の画像のようにコンピューテショナルデザインの範疇となる範囲は非常に広がっています。そうなると、次に出てくる疑問は「クラシカルデザイナーがコンピューテショナルデザイナーの職能を身につけるために何をすればいいのか?」ということになります。

これについては深津さんのお話が参考になりました。

今回に限らず深津さんが前からおっしゃっていることですが、「自分の財布で、何でもいいからものを作って、どこででもいいからそれを売る。ユーザーの視点、どうしたら喜んでもらえるとかどうしたらガッカリされるとか、ひと通り経験できる。ここに載っているこれからのデザイナーに必要なスキルの半分くらいは身につけられる」というお話。

経営者の方、あるいはそれに近い立場にいる人は日々ビジネスの視点を持っているかと思いますが、一介のデザイナー、特に受託系の案件を請け負うデザイナーが経営フェーズに口を出せるチャンスはなかなかありません。だったら小規模で良いから自分でビジネスやっちゃえ、ということですね。


チームの時代

一方、ここに載っている項目を全部できるようになる必要もない、という話もありました。
クラシカルデザインの領域で考えても、ポスター、椅子、洋服、車、建築、全部できる人なんていないし、できなくて構わない。
それと同様に、
「造形はできないけど社会の動きに詳しいよ」
「造形はわからなけど技術わかってるよ」
 など、チームで補完し合うというのが良いのではないか、と深津さん。
また、takramでは複数のプロジェクトを同時進行する中で、
「この案件ではこの役割」
「こっちの案件ではちょっとチャレンジしてこの領域を担当」
など、案件に応じて役割を横断的にスライドさせているそうです。
(とても参考になりました)

さて、「デザイン」の意味合いが拡張されるとともに「デザイナー」の守備範囲も広がるのは必然なのですが、本記事冒頭「デザインには3つの種類がある」の前置きに書いたように、一般の人(という言い方は正しくないかもしれませんが、いわゆる「発注する側の人」)から見たときに「デザイナー」が意味する範囲にはかなりバラツキがあるのが現状です。(自分の周りでは「クラシカルデザイナー」を意味していることが多い印象)

だとしたら、「デザイナー」に変わる名称が生まれてくるのではないか。
そこで次の章に移ります。


「肩書きどうする問題」について

後半で質問コーナーがありましたが、そこでこの質問をしたのは私です。
そのあとのインクルーシブデザインの話が盛り上がった&面白かったので、ちょっとレベルの低い質問で貴重なお時間を使わせてしまったかもとソワソワしてしまいましたが、ご回答いただきありがとうございました。
140文字(←twitterで質問したから)では伝えきれなかった部分があるので、ちょっと蛇足になりますが補足を書かせていただきます。

肩書きを決める=役割をそこに規定/限定する、という閉じた意味合いの意図はなくて、
デザインの概念が拡張され続けている状況下で、世間的に「クラシカルデザイナー」を意味してしまうケースが発生する「デザイナー」という単語ではなく、これからのデザインの守備範囲にフィットした新しい言葉でデザイナーを言い表すことができないか、という意図でした。

自身のマインドとしては「デザイナーとは全てをやる人」で良いのですが、相手がそう思ってくれるとは限りません。「3つの種類のデザインがある」のところでも触れましたが、デザイナーがどこまで自身の役割を広げて解釈しても、「デザイナー」に相手が期待する役割はどうしても限定的になると感じています。(あくまで自分の肌感覚です)
相手の期待とか関係なく自分の行動で示せばよいという気もするのですが、もう少し相手に伝わる、包括的に言い表せる言葉はないのか、と常々思っていたのが質問させていただいた理由でした。

深津さんはnoteを運営するpiece of cakeでCXOを務めていらっしゃるので、
「CDO(Chief Design Officer)だと範疇がプロダクトっぽい。もう少しプロダクトも含めユーザーの体験全体に及ぶからCXO(Chief eXperience Officer)にした」というお話はとてもわかりやすいなと思いました。
ただ、CXOは「オフィサー」なので誰でも名乗れる「職種」ではありません。エクスペリエンスを標榜するならばやはりUXデザイナー、ということになるのでしょうか。もっと短くして「エクスペリエンサー」。。。うーん伝わらないですね。

という流れがあって、現状ではtakramのような「デザインエンジニア」や「ビジネスデザイナー」など、単語を組み合わせることが選ばれている方法である、と認識しています。
(蛇足ですがtakramでは肩書きは自己申告制で自由に付けて良いとのこと)


ところで、「デザイン」の範疇が包括的になっているとすれば前田氏のレポートに記載されていた「TBD=Technology × Business × Design」という3つの分類は、違和感を覚えました。デザインは全てを包括しているはずなのに、3つの中の1つに位置付けられているからです。

一方、takramが提唱している「BTC=Business × Technology × Creative」はその違和感を解消していて、「ビジネス、テクノロジー、クリエイティブの3領域を掛け合わせる、その全体を支えているのがデザインの概念」というのは非常にしっくりきます。

聞いたことないですが無理やりくっつけると「BTCデザイナー」というのが、増え続ける「●●デザイナー」という呼び方の中で、少なくとも影響範囲を説明するものとしては機能しているのかなと思いました。3つの単語を頭文字BTCで省略してしまってるので、結局その説明は必要なのですが…
(深津さんの「『デザインデザイナー』というのが出てくるまで肩書きは増え続けるんじゃないですか」というのも面白かったです)


まとめ

デザインによる経営課題解決、UXデザイン、デザイン経営宣言など、昨今のデザインの潮流に興味があって色々と情報を追っています。
しかしいざ自分の仕事を振り返ってみるとビジネス面に踏み込んだことをなかなかできない状況で、歯痒さと無力さを感じながら過ごしている中での今回の勉強会でした。

そんな自分でも、とめどなく溢れる情報を浴びて非常に刺激になりましたし、最後の締めでも「デザイナーがどうやってビジネスに貢献していくか、どんどん議論が広がっていくと良い」とおっしゃっていて、わからないなりに小さなことから挑戦していこうと思いました。

この記事ではとても勉強会の全貌や「Design in Tech Report 2018」の真髄を伝えきれていませんので、興味がある方は他のレポートやtakramによる翻訳の「Design in Tech Report 2018 Translation」もぜひご覧ください。

■GUILDオフィシャルのレポート
https://note.theguild.jp/n/na5f1baf39d5d
■Design in Tech Report 2018 Translation
https://ja.takram.com/projects/design-in-tech-report-2018-translation/

今回の機会を提供してくれたGUILDさん、takramさん、そして会場提供してくださったDMMさんに感謝の意を表して記事を締めさせていただきます。

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