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カトリック神父「小児性的虐待」を実名告発する(3/3)〜“バチカンの悪夢”は日本でもあった!

2019年4月7日、日本カトリック司教協議会会長の高見三明・長崎大司教が、全国の教会で起きた小児性的虐待の実態調査に乗り出すと表明しました。
 これまで米国、アイルランド、フランス、ドイツなど世界各国で相次いで被害が明るみに出る中、日本では“対岸の火事”と受け止められてきました。
 ところが2月発売の文藝春秋3月号に筆者が発表した実名告発レポートをきっかけに、日本のカトリック教会に行動を求める内外の声に背中を押されて動き出したのです。今回公開するnoteでは、おさらいの意味も込めて、発端となった文藝春秋掲載のレポートを3回に分けて掲出しておきます。


ランニングシャツが憎い

 サレジオ出身の作家花村萬月の芥川賞小説『ゲルマニウムの夜』の続編『王国記Ⅳ 青い翅の夜』(2004年)に、実に「マンハルド」という名前の神父が登場する。そしてこの「マンハルド神父」から虐待を受けた子供の目線から、信じがたい性暴力とその隠蔽を告発している。とりわけ修羅場は、肛門性交を強いられた小学3年の少年が多量に出血して病院に運ばれる場面だ。
〈医師は怪訝そうだった。直腸内に大量の精液が残されていたからだ。マンハルドの精液だ。けれど事件にはならなかった〉

 現実の下敷きがなければ、この不条理は表現できない、と私は思う。竹中も「私もおぼろげな記憶だが挿入を試みられたことはあったと思います。『痛い』と声を上げたら、神父はすぐに諦めた。声が外に漏れるのを恐れていると感じた」と話した。

 同時に、竹中は「犠牲者はほかにもいたのは間違いない」と続けた。

「私は、施設のいた当時ずっとランニングシャツを着る人が嫌いでした。ランニングを愛用する同級生のYを訳もなく憎んで言葉も交わさなかったりした。でもなぜ嫌いなのか、自分でも理由がわからなかった」

 この疑問が氷解したのは、後々になり戻ってくる記憶の断片がつながった時だった。

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