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手を離れた風船

子供の頃、なかなか欲しいものを買ってもらえなかった。
ある夏の日、せがんでようやく買ってもらった「ヘリウムガスの入った銀色の風船」を意気揚々と持ち歩いていたのもつかの間、一瞬手を離した隙に空高くとんで行ってしまった。珍しく場所もはっきり覚えている。小樽の国道沿い、高架下を少し超えたあたり。今でものその場所を通ると手に汗がにじむ。

どんどん空高く昇る風船は、光る点のようになりやがて見えなくなった。呆然とその様子を見ながら取り返しのつかない失敗というものを初めて味わった。自分の力で取り戻すことのできる失敗ではなかった。代わりを手にいれることもできなかった。子供ではなくなった今、いくらでもやり直しができるちっぽけな失敗だ。そう思うことに慣れた。
失敗を積み重ねて大きくなり、警戒心だけは人並みに身に着けたつもりだがどうだろう。3つ子の魂100まで。今でも大事なものをつかみきれずに成功とは遠い空を見上げているのかもしれない。

お祭りの日、誰かが手放した白い風船が青空を横切って行った。
賑やかさも耳に遠く、見えなくなるまで風船を見送った。

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岡田さん

写真を撮るのが好きです。風景、人物、動物、食べ物、気が向けばなんでも撮ります。情景が好きです。PIXTA : https://creator.pixta.jp/@hirookadaphoto で写真も販売しています。アイスコーヒーが大好きです。よろしくおねがいします。

エッセイ

ちょっと長めのお話です。
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