最近同ジャンルの漫画多すぎじゃね？と思ったので第1回ではいわゆる「異世界無双・なろう原作系」を取り上げた。今回は「いじめ復讐もの」について。

■いじめ復讐系
・これこそどれも似たような内容で、前半で陰惨ないじめが描写され、被害者側が一方的な復讐を行うという内容のものばかり。
・いじめる方にもいじめられる方にもキャラ付けに何の必然性も無いものが多い。現実のいじめってそういうものなのだろうけど…。
・要するに漫画的に感情移入が出来ないのだ。読んでいて胸糞が悪くなるような作品も多く「すっきりしない勧善懲悪もの」という印象のものが多い。

・紹介する中では「十字架のろくにん」が抜群にオススメ。


◆イジメの時間

・前述のフォーマット通りのいじめ描写→復讐の内容。超能力のようなファンタジー要素は排されている。
・特筆すべき点としては全13巻中半分くらいは陰湿ないじめ描写で、主人公が追い詰められてゆく様子が執拗に描写される。後半は一転、加害者達を監禁しての凄惨な拷問描写が展開される。
・内容的には目新しい部分はないが、いじめ・復讐双方にたっぷりとページを割いて残虐に振り切った描写を実現しているのがこの作品の特徴か。
・強いて言えば加害者側は誰しも家庭環境に問題を抱えており、現実のいじめ事案にも若干の問題提起をしていると言えるかもしれない。
・元々インディー漫画だったらしく画力等が高いとは言えないが、メジャー出版社所属ではこの作品は世に出なかったであろう。

◆いじめのケジメ

・マガジンポケットにて連載中。こちらはいじめられっ子が主人公ではなく、その担任が主人公。
・あるクラスでいじめによる行方不明者が出る。その数年後、加害者達が謎の不審死を遂げ始める。当時担任だった主人公は事態の究明と人命救助のため、卒業生達を探す。
・主人公はすでに教師を退職しており、C.W.ニコルかハイジのじいちゃんみたいな外見になっている。
・別にリアルでもないし話もそう面白くはない。面白いのは主人公の見た目くらいか。

◆復讐の教科書

・こちらもマガジンポケットで連載中。いじめを苦に飛び降り自殺を図った主人公は地上にいたイケメン担任教師の頭と激突してしまい、人格が入れ替わる。正体を隠し、教師の立場から加害者達に復讐していく話。
・内容としてはピカレスクものというかデスノート等に代表されるアリバイ偽装や心理戦などがメイン。だが、冴えないいじめられっ子だった主人公が急に頭脳派でモテるイケメン教師として日常に適応出来ている物語展開は不自然そのもの。
・加害男子生徒の一人から彼女を寝取る展開があるのだが、いくら見た目がイケメンになろうと童貞のいじめられっ子が急にそんなことを出来るわけがあるまい。
・コメント欄などを見るに半ギャグ漫画として生温かく見守っている読者が多いようだ。

◆十字架のろくにん

・同様にマガジンポケット/別冊少年マガジンにて連載中。個人的に今後に期待している最有力作品。他のいじめものよりもかなりファンタジー・フィクション要素が濃い。

・小学6年生の主人公・俊は凄惨ないじめを受けており、あろうことかそいつらによって事故に偽装されて両親は殺され、弟は大怪我の上に植物状態に陥ってしまう。俊は旧日本軍の秘密部隊出身の祖父に復讐を誓い、殺人術や拷問術を教え込まれる。そして4年後、俊は高校生になった…という導入。

・まず残虐描写が振り切れている。殺人までやる加害者が登場するいじめ漫画はあまり見かけないだろう。詳しくは書かないが主人公側が行う復讐の描写もかなり強烈。
・加害者側のキャラが立っている。最初に述べたようにいじめ漫画は被害者も加害者も必然性が無いキャラ付けの場合が多いのだが、この作品のいじめ主犯格は「(間接的にも直接的にも)殺人をしてみたい」「どこまで追い詰めれば死ぬのか」といった実験を主人公を対象に行っているサイコ野郎である。
・祖父の存在によって闇の力が主人公に与えられ、闇vs闇でどんな復讐劇になるのかこの先目が離せない。

・単純な復讐劇ではなく、「悪意」といったものがテーマとしてうまく消化されれば名作になりうるのでは…と個人的に大きく期待している。
・でもよく考えるとこれ設定がぶっ飛びすぎてて別にいじめ漫画じゃないような気がしてきた。

■後記
・「いじめ復讐系」は前回の題材である「なろう系」と同じく冴えないもしくは不幸なキャラが無双したり復讐を果たすことで読者がカタルシスを得る、という点は似ているが、こちらのジャンルは主人公の不幸さをより克明に描写する必要がある点が違う。
・題材が題材なので読後感が良いものは少ない。復讐を完遂したところで果たして主人公は幸せなのか。まぁどれを読んでもスッキリはしないと思う。いじめなんて無いのが一番だし、復讐も何も生まないとは思う。

・復讐するというようなフィクションではなく、現実にいじめに遭ったらどうすればいいのかという方向性の漫画が過去にあった。「元気やでっ」って言う作品なんですけど。

次回「ジャンル別漫画紹介#03 同級生女子などがモブ主人公に迫る系」につづく。