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ありがとうサンクス・シアター! あなたは何を観た?

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映画館救援のためのクラファンのリターンとしてのオンラインシアター、

いよいよ本日(2021/06/30)視聴期限ですが、私はこの4本を観ました。


部屋/形態

監督 : 石田尚志
キャスト : ー
16mm→HD 7 分
制作年 : 1999
部屋/形態

部屋の片隅、窓から射している琥珀色の陽。壁面に投影された影が侵食しあい、増殖するにつれて、立方体としての部屋の形態は、やがて実際の壁面とドローイングによる仮想の平面が造り出す視覚の揺らめきに変貌する。鑑賞者の知覚作用により形態が変わる驚異の部屋。2.5次元のアニメーション作品。実際の部屋の壁に一年にわたり描き続ける行為を、16mmカメラにより24コマ単位で撮影したアニメーション。撮影は東大駒場寮。

部屋の中という3次元に組み合わされた3つの平面に、ウネウネと抽象的な線が増殖、変化していくのですが、カメラの視点から視たときだけ四角く見える模様がぐるっと回りこむとか、リアルな枠だと思ってたら絵だったとか、パースの概念が揺らいでくる作品です。抽象的で、ひたすら単純に気持ちのいい動きでもあります。

上に塗り重ねていく形なので、前の塗料の盛り上がりが、テクスチャになって残りますね(逆再生の時は凹凸が消えていく)

BGMはバッハのBWV659(いざ来ませ、異邦人の救い主よ)、パイプオルガンのようです。バッハはなぜか(抽象)アニメに合う気がします


コンシューミング・スピリッツ

監督 : クリス・サリバン
キャスト : ー
HD 136 分
制作年 : 2012
アメリカの鬼才クリス・サリバンが15年以上の歳月をかけて完成させた長編アニメーション。切り絵、ドローイング、立体を組み合わせ、アメリカ郊外の神話的なリアリティを浮かび上がらせる。

「部屋/形態」とは対照的に、なんか動きが気持ち悪くて(多分こちらの脳が予測した動きになっていない。普段みているアニメは、タイミングが洗練…悪く言えばパターン化しているのだと思う)、結局通しで観ることができなかったのですが(休憩しながら見た)、part5の後 再見すると、あれはああいうことだったのかと、わりかし分かりやすい話でした。いやむしろ分かりやすすぎる。・・・神話・・・なるほど、神話にはイン○○トとアナグ○○シスは付きものですわな。

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ファンアートを描いてみて分かったんですが、アール・グレイ(上)、ジェシー・バイオレット(右)、ビクトル(ビクター。左)、この主要3人は、冒頭5分間のうちに、横顔と正面顔が共に出ている。メイン人物だというしるしです。分かりやすい(が、アール・グレイとビクトルは、初見では混同する)。下の人物(男)は、ラリー・ブルー。ラリー・ブルーは線画で描かれる非現在で登場するので、ちょっと分かりにくいですが、この人も重要人物です(初見では分かりにくい)こうして灰色、菫色、青と三色そろうわけです。

ビクトルのファミリーネームは? これはpart2で勘のいい人なら分かりますし、part3では自分で名乗ります。大事なのは、鑑賞者には その情報は伏せられているということです(新千歳のあらすじ紹介やIMDBでは思いっきり書かれていますけど)。
実はメモを取りながら2回目、絵を描きながら3回目・・・と、何回も見てるのですが、「鑑賞者は」ではなく、「登場人物は」どの程度の情報を知っているのだろうかというのも気になるところです。特にビクトル・・・これまさか叙述トリックですか?

切り紙、立体模型(いわば3DCGの替わりか)、モノクロ線画、写真コラージュ・・・と、いろいろな方法を使っていますが、このうちモノクロ線画が、なんだかブヨブヨしていて、普通のアニメでは動きの向こうに、キャラと言う確固とした「芯」が見えるのですが、このアニメでは、時に芯が揺らぎ、なんか別人(別種?)にメタモしたようにさえも見えます。これもspirits(酒)のせいなのだろうか・・・
※今やっと分かったのですが、かつて私がゴッホの自画像を全てアニメでつなげた理由、それはゴッホの「芯」をとらえたかったのかも知れません

メインの登場人物は、普通(普通が何か、というのはメンドイのでひとまず置いておく)の倫理観が どこか欠けている人達ばっかりで、そういう意味でも しんどい作品ですが、酒を飲むぐらい(consuming spirits)しか楽しみのない米国郊外の、気を抜いたら自然に逆襲され荒野と化しそうな不安、というか人間存在そのものの不安を感じつつ、上品な真実としての親子関係(神林長平「ラーゼフォン 時間調律師」・・・だっけ? いや「猶予の月」のほうだったか・・・)を描いた作品です。分かりやすいとは、とても言えない(時系列先取りナレーションもありますし)。だがアニメーションを知りたいのなら観ておく価値はある。・・・・う~ん、お勧めはしない(という文言でのおすすめです)

なお、15年の歳月をかけて制作されたそうですが、
怖いですね、自主アニメなんか作ってると、「おお、すごい!」じゃなくって、「ああ・・・それぐらいの時間は・・・かかってしまうわなあ(死んだ目で)」になっちゃうんですよ。おそろしや。ろしや・・・そういやロシアのノルさんの「外套」は本当に完成するのだろうか・・・

この作品については、いろいろ語れそうなのですけど、今夜はこれぐらいで。では次の作品。

8.14, 2330 ー最後の空襲、熊谷ー

監督 : 関根光才
キャスト : 藤間豊子、島野千代
HD 9 分
制作年 : 2016
太平洋戦争終戦間際に空襲をうけた、埼玉県熊谷市。その記憶と不条理を紐解く、短編ドキュメンタリー。

あと一日、終戦が早ければ・・・しかしならば、8月13日に空襲を受けた所は? あと1日、あと1日・・・

B29の乗組員も、この爆撃に戦略的な意味を見いだせず(もう日本の降伏は決まりきったことなので)、敵とは言え殺したくなかったそうだが、それでも命令があれば行くしかない。

脳内に思い浮かんだフレーズは「コンプライアンス 服従の心理」「東京オリンピック(東京インパール)」だった。何故と過去に問うても無益なのかもしれない。だが、心理学的にアプローチしていく手もあるのかもしれない(社会心理学だ)しかし、この期に及んでもオリンピックを止められない我々に、過去を糾弾する資格はあるのだろうか。

タイトルの後ろは、空襲を絵で描いた、当時の人の作品なのだろうか。坂口安吾だったか、考えることをやめれば、空襲は非常に美しいものだったそうだが、それを思い起こした。すずさん(「この世界の片隅に」)が、空襲を見てゴッホの星月夜を重ねてしまったのもむべなるかな、だ。

さらば大戦士トゥギャザーV

監督 : 松本純弥
キャスト : KENTA、職業怪人カメレオール、畠山智行
HD 71 分
制作年 : 2018
悪の組織を壊滅させた「大戦士トゥギャザーV」こと中野正。しかし、彼を待っていたのはマスコミのバッシングであった。自分の正義を信じる正だったが、ある裏切りから彼の世界は壊れ、追い詰められていく。

これもバッハである(BGMに)。 BWV 645、「目覚めよと呼ぶ声有り」。ほかのBGMにも、ときどき1フレーズ程度引用されてますかね?

「目覚めよと呼ぶ声有り」は、自分も山月記のアニメに使用するつもりなのですが、わりかし淡々とした調子で進みつつも、後半転調して悲しい調子になるところがキモだと思ってます。この作品では、知りたくはない真実を明かされるシーンで使われてますが、前半、ステレオに広がるところも良かったですね。

カメレオールさん目当てだったのですが、考えてみると、透明化っていうのは、攻撃じゃなくって、かなり逃げの能力ですよね。ほかの作品では、いろいろ悪いこともやってるみたいですが、とぼけたイイ声の印象もあって、どこか憎めない怪人です・・・どうなんだろう、監督さんは、特撮ヒーローよりも怪人が好きなタイプだろうか・・・あっしはウルトラマンよりも怪獣が好きです(聞かれてない

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ひろさわの好きな、全員集合型ファンアートです。(実は全員ではないですが)右下の二人(人?)は、作中特撮番組のキャラですが、正義のあり方も画面サイズと共に、変わったのかもしれませんね

特撮ヒーローものには、どう「殺し」を正当化するか、という点が有って、その矛盾点が、魅力でもあるのでしょうが、ノリノリで敵を爆殺する映像に心躍らせた後に、なにか後ろ暗いものを見てしまった気がする、そんな良心(?)を具現化すると、作中の強引な記者になっちゃうのでしょうか・・・

この作品も、語りだすといろいろいけそうですが、長くなるのは確実なので、今夜はこの辺で。すきあらば自分語り&自分絵になっちゃったかな。
映画を提供してくださった皆様、サンクスシアターの皆さま、ありがとうございました。


見出しのない余談

前回の記事で「スカイライン 征服」を見ていない、と書きましたが、いやみてたよ! gyaoで! 高層ビルで籠城する話ですがな・・・・
だったらシネマ神戸で続編みてても良かったのではないかと・・・まあその場合はパルシネマでのミニマリズム2本が見れなくなってましたが・・・(敬称略)

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