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日本に帰国して感じること/日本人の特性[根回し]・・・イギリス・フランス5年間の赴任生活<第88話>

日本のビジネスの特徴として「根回し」があります。
重要事項を決定する会議では、問題となりそうな点を事前に関係者に説明して理解しておいてもらい、会議の場ではすんなりと決まるのがよい とされる日本企業の文化です。
本来なら、意思決定会議なので この場で様々な意見を出して喧々諤々と議論を尽くし それを経営者が判断するのが本質なのですが、そんなことは 担当者レベルで済ませておいて 最終会議では議論が紛糾することは良しとはされません。
効率よく仕事を進めていくための工夫ではあります。

実際、欧米の工場の会議では 十分な事前検討や調整がなく会議が行われ、延々と議論が続き 時間の無駄だなと感じる時があります。
ただし、この場の会議で発言して議論したことが全てです。早く終わらせたいためにあまり発言せずに、あとで 本当は●●●と思っていたけど などということは認められません。

根回しには 効率よく進めること以外に、「和」を重んじる という日本人の特質が含まれているように感じます。
「和」の心とは、自分個人のことよりも 全体のことを考えて 秩序や調和を乱すような行為を慎もうとする心構えです。聖徳太子が制定した十七条憲法の第一条にも「和を以て貴しと為す(最も大切なことは「和」である)」と書かれており、千何百年以上も前から日本人の心の礎になっています。
日本の根回しは、異論を交えて議論が紛糾し 全体の調和を乱すような事態を避けたいという心が働く結果なのでしょう。

わが社のアメリカ工場にはインド人のマネージャーも何人かいるのですが、アメリカ人の工場長が会議で苦労するのは、次の2つだそうな。
・いかにしたら日本人に発言させるか(遠慮せずにもっと発言してほしい)
・いかにしたらインド人に黙ってもらえるか(好き放題に発言せずに、もっと周りのことを考えて、少しは発言を控えてほしい)


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