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日本に帰国して感じること/日本人の特性[他人に迷惑をかけてはいけない] ・・・イギリス・フランス5年間の赴任生活<第89話>

どこかの県の高校の卒業式で 巣立っていく生徒たちに対し、校長先生が祝辞で「世の中に迷惑をかけない人になりなさい」との挨拶をしたことが、以前 テレビで話題に取り上げられました。
迷惑をかけないことは、もちろん重要なことです。でも 極端なことを言えば、家の中に閉じこもって何もせずに静かに生活することが 周りに迷惑をかけない究極的な生き方になってしまいます。これから社会に出ていく高校生に贈る言葉としてはちょっと? との意見が寄せられたのです。

確かに、家庭でも 日本の子供たちは小さい頃から 親に「他人に迷惑をかけてはダメ」と言われて育ちますね。時には、日本人の譲り合いの精神や礼儀の正しさが 海外から称賛されます。誇るべきことですが、なぜ日本人は他人に迷惑をかけることを極端に嫌うのでしょうか。

これは 日本人のとても強い宗教観なのだと思います。
相手から迷惑な行為を受けると、あんなことをしやがって と誰しも憎しみの念が生まれます。
日本人にとっては、この怨念(負のエネルギー)はものすごいパワーを持って降りかかってくるのでしょう。日本人はこの感覚をとても敏感に感じるようです。
第87話と88話で書いた「失敗を恐れる心理」や「議論の対立を避ける根回しの風習」も、相手が負のエネルギーを発するのを避けたいと、日本人は第一に考えるためだと思います。

さらには やっかいなことに、迷惑をかけてしまった相手が実際には何とも思っていなくても、相手は憎しみを持っているに違いないと 相手の怨念イメージを自分で勝手に作り出して それを感じてしまいます。

日本人は損な性格ですね。そういう事態に至らないように、自分の好きなことは後回しにして 周りのことばかり気にしがちです。(私の妻は、新幹線に乗った時にも 後ろの人に迷惑がかかると言って リクライニングをしようとしません。)

別の章にも書きましたが、時に他人の迷惑も考えずに自分の好きなことを優先してふるまう彼らの行動にはとてもストレスを感じます。 
また、アメリカに出張に行くことも多いのですが、空港での搭乗ゲートに行く途中の通路の壁際に、搭乗時間待ちの若者達が足を伸ばして寝そべっている姿を見ると、こんな姿は日本では絶対ありえないね と感じてしまいます。

おそらく、中国でも中東でもヨーロッパでも、民族攻防の中で長年生きてきた人々は、遠慮してどうぞどうぞと譲り合っていたら、身ぐるみ剝がされて命までも失いかねない経験を積んできたのでしょう。
日本は建国以来 幸いなことに海外から攻められて征服されたことがないので、一つの島の中で秩序を維持するためには、譲り合いの精神や他人に迷惑をかけない心がけが とても大切なのでしょう。

海外赴任して数年間を過ごしましたが、日本人はなぜこのように考えるのだろうという疑問をいつも抱いていました。改めて日本人の特性を認識したように思います。

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