見出し画像

皿うどんとリポビタンD

今は一人暮らしをしているが家族で暮らしているとき外食したり出前を頼んだりするのにはある一定のパターンや決まり事があった。中学・高校時代は月1回駅前の中華料理屋さんで家族4人で外食するのが決まりだった。父の給料日の関係でだいたい月末の日曜日だったろうか。日曜日の夕方家族皆で外食する。家族それぞれが1品ずつメニューから好きなものを選びそれを皆で食べ回す習わしだった。甘党の自分は甘酢の肉ダンゴを馬鹿のひとつ覚えみたいに必ず頼んでいた。味よりも量だった年代だったからその中華料理が客観的に美味しかったかどうかは覚えていない。最近になってもう別のお店になってしまったその中華料理屋の話になったとき母はあの料理屋さんは大して美味しくなかったと感想を漏らした。それでも当時料理や食器の片付から解放された母は気が楽なのか何となくゆったり構えてくつろいだ雰囲気だった。父や弟も月1回の外食をそれぞれ楽しんでいたと思う。
実家から離れ自立し結婚してからは子供は出来ずずっと2人だったので自由に外食した。大人数で食事をするのは上さんの実家に行ったときだった。義父母と義弟家族と一緒に卓を囲む。そんなときお寿司と皿うどんを出前で頼むパターンがよくあった。原爆で両親を一瞬で亡くし弟と親戚の家を転々としたという義母は苦労人だからだろうか。娘婿の自分が居心地の悪い思いをしたことは一度もない。自分の図々しい性格もあってか義理の立場でも上さんの実家に行くのは楽しみだった。食卓でお酒がすすむと義父は普段とは違い饒舌となった。年齢が進むと同じことを何度も喋るのは共通の癖だろうか。それが酔うとなおさら同じ話を繰り返す。一緒に酔った義弟がそこに茶々を入れるのが常だった。

出前を頼むお寿司と皿うどんはだいたい同じお店だった。何故か皿うどんにはリポビタンDが付いてきた。その出前を頼む中華料理屋さんは皿うどんにつけるソースを何故か必ずリポビタンDに詰めて皿うどんに付けてくる。皿うどんを盛る皿は回収するがソースを入れるリポビタンDは回収しない。使い捨てにするためにその店の人が普段飲むリポビタンDをリユースしていたのだろうか。
家族で食卓を囲む。夕食でその日の出来事を話すその雰囲気は今一人暮らしをしていると無性に懐かしく恋しく感じる。そんなことも手伝ってかコンビニなどで棚に陳列されているリポビタンDを見かけるとあの皿うどんと食卓を囲む上さんの実家を思い出す。長崎の皿うどんにはリポビタンD。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?