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OB・OGと会うと楽しいが,大学教育についても考えさせられる

今日はなかなか寝付けないので,noteを書く。
夕方,現勤務先の大学の1期生で,現在広島市内の企業で働いているOBが研究室に来てくれた。簿記を勉強したいというので,独学向けにどのような教材があるのかについて相談しに来たのだ。

簿記の相談の後,彼はおもむろにカバンからビジネス会計検定2級の参考書を取り出し,株主資本変動計算書について聞きたいことがあると言った。
何が知りたいのかと聞くと,株主資本の部の資本金・資本剰余金・利益剰余金という区分がどのような意味を持っているのかが分からないというのだ。
彼の参考書を見ると,確かに区分自体の存在は示されているものの,それらの意味についてはほとんど説明がない。
我々の業界の人間なら,まず大学の財務会計論か財務諸表論のテキストを見に行くが,どうやら受験勉強の教材というのは,そういう理論的な背景説明が省かれていることもあるらしいのだ。

『会計学大辞典』を片手に彼にその意義を教えたところ,それなりに納得はしてくれたのだが,何より嬉しかったのは,そういう勘定科目の概念や意義,もっと言うとB/S・P/Lの理論的意義を問うてくれたことだ。

彼以外でもそうなのだが,社会人のOB・OGと話すと,多くの場合物事の本質や理論を意識している。きっと会社で仕事をするうちにそういう頭が鍛えられたのだろう。これが多くの現役学生と違うところだ。確かに私も,たった2年のサラリーマン生活で結構そこは鍛えられた気がする。まぁ要するに,社会人と学生とでは,知識の仕込み方が異なることが多い(私の経験則上にすぎないが)。

ただ,これは学生のせいだけにはできない。
やっぱりまだ,今の大学には,ロジックを追求する訓練が十分に提供できていない。
資格取得は奨励するものの(私も今資格取得推進委員とかいうのをやっているが),大人の知識の仕込み方というのが教えられていない。
期末試験の勉強も,いかに教科書やノートを丸暗記してくるか。
少なくとも,高校までとは違う学び方をしましょうというのは十分に伝えられていない。
大人の知識の仕込み方を教えやすそうな場としては,日本の大学にはゼミというのがある。が,それだけでは足りない。ゼミだって多くの学生からしたら数多ある授業のうちの一つだろう。
ロジック追求型の勉強をしなければ,勉強したことが応用できないのだが。
(だって,理屈抜きに財務諸表の構造を丸覚えしたところで,実際の取引先企業の財務諸表が分析できるかというと…ねぇ?)

思えば,私もサラリーマン時代に初めて,ロジックを追求する知識の仕込み方を学んだように思う。
私の場合は大学受験への思い入れが強すぎたせいか,知識の仕込み方を切り替えるのにずいぶんとてこずった。

でもこれって,結構社会システムとしては非効率じゃなかろうか。
どうせ「社会人になってから役に立つ」教育をしようとするのなら,弥生会計の使い方なんか教えるより,そっちをちゃんとやったほうが良い。
(なぜ弥生会計に否定的なのかというと,弥生会計の使い方ばっかり教えても,世の中弥生会計を使う仕事ばかりではないので。つまりは,「役に立つ」ことが最も見えやすい,特定の企業や業務にだけ通用するような技能というのは,その技能が通用しない環境に身を置くリスクに弱い)

そこを意識しながら教育業務に当たり続けたいと思う。
来週の月曜日に新学期一発目の授業があるから,今年度はロジック勉強法を意識して講義をやろうと思う。

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