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私的所有の限界:アンチコモンズの悲劇

アンチコモンズの悲劇:私的所有の限界          福光 寛
 制度派経済学の発展は、僕らが大学を出た1970年代からあとの話なので頭に入っていないところがある。在学中も外部経済の問題などは議論していたが、明確に所有権の問題とリンクさせていない限界があった(写真は左が成城大学8号館。右が同5号館である。)。
 1968年に雑誌サイエンスに生物学者Garrett HardinがThe tragedy of the commonsと題した論文を発表した。共有財commonsは乱獲の対象になるという問題だ(資源の枯渇や公害などが生じる)。なおこの議論は共同体による入会権(local commons)によって、防ぐ道があるいう指摘があり、Hardinはopen accessに問題があると、自身の主張を後に改めたとされる。
 もちろんこのHardinの議論から経済学者は、だから私有財産化によって、乱獲を防ぐことは、社会的厚生を高めることにつながると、議論できた。しかしそれは私有財産の限界を示していない点で所有権の議論としては不十分だった。
    この議論を所有権の議論として大変綺麗に整理してみせたのが、Michael HellerのThe tragedy of the anti-commonsで示した考え方だ。Hellerは私有財産private propertyを個人がその使用の決定権を持つものと定義したうえで、そこには分散化された所有権のコストという問題があると指摘している。その利用には多大な交渉コストなどが生まれ、利用が過少underuseになるジレンマunder-use dilemmaが生まれる。あまりにも所有―使用が分散すると、誰もが資源を利用できない状態も生まれるとしている。
   つまりcommonsがopen accessの場合、乱獲overuseの対象になるという問題が生まれるが、逆にanti-commonsには利用の過少という問題があることを明確にしている。この議論が知的財産権のopen accessの問題につながっていることはあきらかだ。
 入会権の問題は、これをgroup accessという方法で解決しようとしていることになる。では共通財commonsの先にある、国有state propertyとは何か。Hellerはこれを公衆全体の必要に対応したもの(responsive to the need of the public as a whole)と説明している。
 このHellerの整理は大変明快だ。少し前にYoran Barzelという人のEconomic Analysis of Property Rights Sec.1997がいいと聞いて入手して読んだが、正直わかりにくかった。そこでこのHellerの説明を取りたい。

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