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初級段階=原蓄過程説 関志雄『中国経済のジレンマ』2005

正式のタイトルは『中国経済のジレンマー資本主義の道』筑摩書房2005年。(写真はニコライ堂あるいは東京復活大聖堂 2019年11月3日) 手元のこの本を今回読み直して、このようにこの本の内容はこのように言えると思ったのは、社会主義初級段階=資本の原始的蓄積段階という考え方を明確に打ち出したp.31本という位置付けである。なおこの考え方はpp.203-206でより詳しく説明されている(なおこの点で何清漣との関係も気になるところだ。)。また民営化の進行についてもかなり詳しく述べられている。

1992年10月の中国共産党第14回大会で「社会主義市場体制」の確立が、経済改革の目標として決定された。これをきっかけに「国営企業」は「国有企業」とあらためられた。p.13

民営化を加速させるべく。2003年10月に行われた第16期三中全会で採択された「社会主義市場経済体制を改善する若干の問題に関する決定」では、従来の国有企業の代わりに、株式制を公有制の主体的形式とした。p.25

状況の違いに応じて、絶対的な株式制(国有の株が過半数の場合)、相対的な株式制(国有の株が過半数未満だが、国が最大の株主になっている場合)を実行しても構わないという方針も打ち出されている。p.25 (なおこの指摘はp.130あるいはp.201で繰り返されている。)

(1997年9月の第15回党大会で打ち出された「国有経済の戦略的再編」。1999年9月の第15期4中全会で採択された「国有企業の改革・発展の若干の重大問題に関する決定」などを通じ、国有経済が主導する産業を以下の4つの限定し、それ以外の分野では国有企業は民営化の対象となっている。
1)国家の安全にかかわる産業
2)   自然独占および寡占産業
3)   公共財・サービスを提供する産業
4)   基幹産業とハイテク産業  
以上はpp.127-129をまとめたもの。)

(なお出資、買収、所有権の一部購入、破綻した企業財産の購入など様々な形で国有企業の民営化が進んでいるとしている。p.138)

所有制改革に関して、株式制を公有制の主体的な形式とし、国有資本、集団資本、非公有資本などが資本参加する「混合所有制経済」の発展に力を入れる一方、民営企業など非公有制経済の発展を制限する法律法規及び政策を廃止・改正し、体制的な障害を除いていく方針が打ち出された。p.88

2004年の憲法改正では、非公有制経済に対する差別の撤廃、とくに民営企業(家)の社会的地位の向上が図られた。従来の憲法では、非公有制経済は政府によって指導、監督と管理を行われなけれならない対象であったが、この改正では国が非公有制経済の発展を奨励し、サポートし、指導し、法によって監督、管理を行うことにあらためた。さらに民営企業家、個人経営者を新たに「社会主義事業の建設者」として認め、これまでの彼らに対する社会の偏見を根本からあらためている。pp.27-28

(この本の刊行直後であるが2005年から2006年、非流通株の流通株化という株式市場の改革が実施されている。背景の問題はpp.131-137に詳しい。)

指導部が公有制の定義を広げることによって、「社会主義」という「名」を保ちながら。資本主義という「実」をとったのである。p.25

「法による支配」と「法の支配」を区別しなければならない。・・・「法による支配」とは、政府が法律を道具に国民を統治することである。・・・「法の支配」、すなわち本当の「法治」での政府は法律の制約を受けることから、政府の権限は有限である。中国が目指すべきことは「法による支配」よりも「法の支配」であることはいうまでもない。p.41

矢吹晋「鄧小平」1993/2003

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#混合所有経済 #民営化 #東京復活大聖堂


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