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プロジェクトファイナンス入門 CFI, A Primer-Project Finance

CFI, A Primer-Project Finance 2022年10月5日閲覧

プロジェクトファイナンス:特定のプロジェクトと資産のための資金調達。

 プロジェクトファイナンスとは、プロジェクトの全ライフサイクルの資金調達(finance)分析である。プロジェクトの経済便益が、経済コストより大きいかを決定するには、典型的には費用便益分析が用いられる。この分析は、資本支出(growth Capex,  Capex: capital expenditure)の長期計画にとって特に重要である。分析の第一段階は、プロジェクトの資金調達に用いる、債務と株式の組み合わせである資金調達構造を決めることである。それから、プロジェクトの経済便益を確認して価値づけし、便益がコストを上回っているか否かを決定する。

定義の解説
 次に、この定義の要素のそれぞれを解説し、それらを一体化したものについて立ち入った理解を得られるようにしよう。
#1.長期のインフラ、産業プロジェクト、そして公共サービスについての資金調達
 プロジェクトファイナンスは、一般に石油の採掘、電力の生産、そしてインフラ諸部門で使われている。これらは、この仕組み資金調達技術を発展させるのに最も適切な部門である。というのは、彼らの技術リスクは低く、合理的で予測可能な市場を持ち、多年度契約(すなわちテイクオアペイ契約:契約量の一部が余剰となった場合も、余剰分に特定価格で支払いを約束とする契約)に基づき、単一あるいは少数の買い手に売却される可能性を持つからである。
#2.ノンリコースあるいは限定されたリコースの資金調達構造
 プロジェクトファイナンスは、出資者により資本と債務を使って作られた特別経済主体―特別目的ビークルーの仕組み資金調達である。貸し手は、この主体が生み出すキャッシュフロー(cash flow:CF)を貸付返済の主たる源泉とみている。
 それゆえにも借り手が債務不履行すると、債務発行者(貸し手)はいわゆるSPVの資産を差し押さえる(seize)権利がある。しかし彼らは、いかなるそれ以外の資産、即ちそのSPVのものではない資産には権利を持たない。たとえSPVの清算された資産が債務による価値をカバーするには不十分だとしても。
#3.プロジェクトが生み出すキャッシュフローからの支払い
 SPVが生み出すキャッシュフローは、資本の返済と利子の条件での債務サービスと運営費用との支払いをカバーするのに十分でなければならない。というのはキャッシュフローは、運営費用と債務サービスとの資金調達に優先的に使用され、その残余だけが、プロジェクトの出資者(sponsors)への配当支払いに使えるからである。

なぜ出資者はプロジェクトファイナンスを用いるのか?
 出資者(プロジェクトの資金調達の主体)は、新たなプロジェクトの資金調達において二つの代替的手段を使うことができる。
1)オンバランスシート(on balance sheet: on BS)で資金調達できる(corporate financing)
2)新たに経済主体SPVを組織して、オフバランスで資金調達できる(project financing)
#1.コーポレートファイナンスCorporate Finance
    代替手段①は、貸し手がもたらした追加信用の保証として、出資者が、既存企業の資産とキャッシュフローのすべてを用いることを意味する。プロジェクトが成功しない場合、統合された主体(既存企業+新プロジェクト)からなる残る資産とキャッシュフローのすべては、(古いものも新しいものも)債権者すべてのための返済の源泉になりうる。
#2.プロジェクトファイナンスProject Finance
    代替手段②は、逆に新プロジェクトと既存企業とは二つの別個の人生を生きることを意味している。たとえプロジェクトが成功しない場合でも、プロジェクトの債権者たちは、出資企業の資産とキャッシュフローに大変制限された請求権さえ全く持たない。既存の株主はそれゆえに、新プロジェクトの別個の法人化にメリットを感じる。

プロジェクトファイナンスとコーポレートファイナンスとはいかに違うか
 プロジェクトファイナンスが何を意味するかを理解した今、(つぎに)それがコーポレートファイナンスといかに違うかの理解に移ろう。以下の表は、考慮されるべき二つの資金調達方法(ファイナンシング)の間の重要な違いの概略である。

要素   コーポレートファイナンシング プロジェクトファイナンシング
保証   借り手の(全)資産      プロジェクトの資産
調達額  調整可能           調整できない
会計上  オンバランス         オフバランス
債務上限 借り手のBSに依存         プロジェクトのCFに依存
決定要因 顧客関係 BSの安定性、収益性 将来のCF


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