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プラットフォーマー規制

 プラットフォーマーへの規制強化が主張されている。GAFA(Google  Apple Face Book Amazon.com)規制とも。中国のBAT(百度 アリババ テンセント)。日本では楽天などにも批判がある。先端企業とされてきたこれらの企業が批判されるようになった。実はプラットフォーマー側もこれらの批判は認識している。過剰な規制を招かないために対応を進めているのが現状だともいえよう(写真は成城大学3号館ピロティ)。
 まずこれらの企業に共通するのは、無形資産である革新的なアイデアを生かして超過収益を獲得していること。インターネットを通じたデジタル財の取引していること。このような取引では、ネットワーク効果network effectsが働き 利用者が増えるほど利用の恩恵が高まる。その結果、独占が生じやすい(独占的企業が生まれやすい   勝者総取りwinner takes allとなりやすい)。独占的企業となったプラットフォーマーがその優位な立場を利用することで、取引の公正さや競争の自由を阻害している可能性が指摘されている。

 先行するアンケート調査によると、プラットフォーマーとの取引では、取引で個別交渉が困難かできない、交渉の余地がなく最恵待遇を求められた、強制的な手数料・協力金の取り立てがあった、取引規約の一方的変更による不利益を受けた、解約・ペナルティーの条件が不合理・不公正、自社の顧客に関するデータへのアクセスに過度な制限があるなど、クレームが絶えない。有利な立場にあるプラットフォーマーが、公正で平等な経済競争という原則を乱している懸念がある。このため、競争が維持されるように監視・誘導の強化、不当な取引を迫られたという申し立てに対し調停制度などが必要とされる。 
 また、これらの企業は、課税回避をしている疑いもかけられている。プラットフォーマーは、顧客の所在する市場に必ずしも十分な物理的恒久施設をもたない。そのため、従来のルールでは課税対象から外れる問題がある。さらにこれらの企業は国際的に事業を行うものが多いので、タックスプランニングtax planningと称して、低実効税率国を活用。無形資産から生まれる超過収益を低税率国の管轄地に所在するグループの管理法人に集積して、低税陸国やタックスヘイブンなどに無形資産を移転して納税の圧縮を繰り返してきた。こうした行為は、企業の経済行為としては合理性があると思われる。しかし、収税をする国家の観点からあるいはこうした行為は取れない個人の立場からは、国家の税源を浸食する(=価値創造地と納税地の乖離が生じさせている)脱税行為、との批判もある
 いま、世界各国で海外に税源を移す行為やネット取引拡大に伴う税源浸食に国家の側からの反撃が起きている。
 トランプ政権の米国では、2018年1月から連邦法人税率を35%から21%に引き下げたが、同時に、海外無形資産の所得に対する軽課税制度、所得控除制度などがもうけられた。これは、こうした税源浸食問題への対応と考えられる。
 また2018年3月、EUではデジタル課税案をまとめた。売上高の3%の課税するもの。この案に対し、アイルランド、ルクセンブルグなどは低税率の国は反対姿勢。フランスは推進派だが、ドイツはアメリカからの報復を気にして国際的な見直しを強調。対応が分かれている。2018年12月4日妥協案を財務相理事会でフランスが提示した。税率は3% 課税の対象を広告の売り上げに絞り、データの売り上げなどは除外。21年までに国際的な解決策が得られなかった場合に発効。加盟国に2019年3月までの合意をよびかけた(→しかし年内合意断念)。なお英国では、2018年10月に2020年4月から売上高の2%に課税を決定している
   実は、一般のIT企業と、大手プラットフォーマーとの間で、税負担率格差の存在が指摘されており、税務当局としても公平の観点から対応措置が求められている
 最後にデジタルという財の扱いに関する問題がある。そもそもそこで生み出される情報は誰のものでその流通はどうあるべきなのか。明確なのは、一つは個人情報のプライバシー保護の問題がある。またネット上の情報が作為的なものであってはならない、ということでも合意がなされつつある。
 プライバシー保護ではEUの動きが先行するものとして注目されている。EUが制定した2018年5月 GDPR : general data protection regulationにより個人には以下の4つの権利が認められたとされている。
   1)アクセス権
   2)忘れられる権利right to be forgotten(消去権) もはや個人データが不要になった場合、データを保持する側に削除に応じる義務
     3)データポータビリティ権(取り戻す権利)個人が情報を引き出してほかのプラットフォームに移転する権利
   4)マーケティングに関する権利 
 関連して、データ収集そのものについて、個人の同意をどのように得るか。データ収集方法の透明化をいかに高めるか(現在はアプリへひもづけして無断で情報を入手 どのサイトを見たかのログイン情報:クッキーcookieの利用→ターゲティング広告targeting advertisementに利用されている 実際には2次3次にデータは流通 情報の共有先は開示されていないものが多く、個人のプライバシー権の観点から問題とされている)。データが安易にグループ企業や提携企業と共有されたり、転売されていることにも疑問の声がある。
    そして情報が、作為的にゆがめられるリスクもある。こうした行為を行う主体はプラットフォーマーに限られないが、プラットフォーマーには仲介者として大きな責任がある。プラットフォーマーを通じて正しくない情報が提供され、拡散されてしまう可能性があるからだ。
 たとえば検索ランキングについては 評価基準の不透明さがあるとされる。→ 評価基準の情報開示の義務化 苦情処理対応状況の公表が必要とされている。
 フェイクニュースについてはこれを摘発、排除する自主規制の必要性 がある。正しくない情報をネットが広げてしまう、そのような行為を拡散するリスクが指摘されている。→ フェイクニュースを排除する体制づくりがもとめられている。しかしこれはネット上の情報への監視と似ているという悩ましい問題もある。

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