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地域通貨local currency

   ある特定の地域で購買手段としてしか流通しない地域通貨local currencyは、発行することによって消費が促され、その地域の振興策になると期待され、すでに内外で多くの発行例がある。しかし時間が経ってみると、その寿命は短く、消え去っているのが現実である。地域通貨は失敗したようにも見える。にも関わらず、最近地域通貨の議論が盛んである。ベースには経済活性化が依然求められていることがある。
 そして議論の再燃にはいくつかの理由が考えられる。一つはスマホのアプリを使うなど最近の金融技術の応用が、利用者を拡大し低コスト化を進める両面で効果があると期待されている。そしてもう一つは地域通貨とは呼ばれていないものの、実質的に地域通貨ではないか、と思われるものがいつの間にか、私たちの日常生活に入り込んでいることがある。
 では地域通貨とは呼ばれていないが、同じような効果を発揮して私たちの生活に入り込んでいるものとは何か。1)特定の地域、商店街でだけ流通する商品券がある。発行主体が自治体あるいは商店会。その狙いも地域振興であり、地域通貨だといってもよい。プレミアム付き商品券といって、購入金額よりも多額の商品券が人気だ。2)特定の店舗が発行するポイントカードがある。これは、さらにその店舗に限定された地域通貨だともいえる。ポイントカードには時に全国レベルで使用できるものもある。賦与されるポイントによる買い物は、ポイントの流通範囲がそのカードと提携している事業者に限られるが、事業規模が全国展開であれば、使用できる範囲も地域に限定されない。しかし法定通貨と異なり、流通範囲が限定され、特定の事業者の振興策だという性格は変わらない。そうした意味で地域通貨とこのポイントはよく似ている。このように見ると、地域通貨は、知らない間に私たちの日常生活に入り込んでいるのかもしれない。
   川端一摩「地域通貨の現状とこれからー各地域の具体的取組事例を中心にー」『調査と情報』(国立国会図書館調査及び立法考査局)No.1014, 2018年9月、1-12  
    町井克至・矢作大祐「地域通貨は地域金融システムに何をもたらすか」『大和総研調査季報』2018年春季号, 2018年4月, 50-67
 米山秀隆「地域における消費、投資活性化の方策ー地域通貨と新たなファンディング手法の活用」『研究レポート』(富士通総研経済研究所)No.447, 2017年8月, 1-34. (地域通貨のマイナス利子の側面が強調されている)
    小西英行「ポイント経済と電子マネー、地域通貨に関する考察」『富山国際大学地域学部紀要』7巻2007年3月, 103-107    
  


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