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外為法改正案の成立 2019/11/22

 対内直接投資(inward direct investment)規制を強化する外為法改正案が2019年11月22日に参院で可決されて成立した(衆院は14日通過)。原子力、電力など安全保障上の重要とされる企業への出資規制。事前届け出出資比率の強化:現行の(発行済株式数ベース)10%以上から(発行済株式数及び議決権ベース)1%以上へ強化。事前届け出対象行為の拡大:会社の事業目的の変更などに加え、役員就任、重要事業の譲渡などを追加。事前届け出を求めて、国が審査するとのこと(写真は後楽園スカイフラワーと東京ドームホテル。2019年10月30日)
 アメリカが2018年8月に、重要なインフラ、技術を持つ企業への投資について、事前申告を義務付ける法律を制定している(対米外国投資委員会CFIFUSの機能強化がすでに決定されている)、また欧州もそれに呼応しようとしている。この改正案は、このような国際的潮流に沿っている。
 ただし経営に参画する意思のない投資・投資家、外資系証券の自己勘定取引は規制の対象外。ヘッジファンドを含む外国の資産運用会社、外国銀行、外国保険会社も事前届け出不要。
 そこで安全保障を名目にして、アクティビスト投資家の活動を抑制する法案なのではないか、との疑いが出ている。この批判は、どうも正しいようだ。すなわち、届け出対象外の企業も多いとはいえ、本法施行により外国資本による日本企業監視機能が制約を受ける懸念は確かにある。遅ればせながら日本政府は、外国人投資家の監視機能を日本の企業経営者がそもそも嫌いだということに、気が付いたようだ。このような日本の企業経営者に寄り添った政策を、日本政府が取るのは久しぶりだ。日本政府は急に国益に目覚めたようだ。
 今回の外為法改正は、2019年5月27日に告示された、対内直接投資の事前届け出義務の対象業種拡大(原子力、電気、ガスなどに加え、半導体メモリ、集積回路などを追加)に次いで、対内直接投資規制を強化することになった。米中経済摩擦から始まったこの規制強化の流れが今後どうなるのか。今後の展開が気になるところだ。
    ⇒ 東芝の経営再建では2018年5月、東芝メモリが日米韓連合(米ベインキャピタル+米4社+韓SKハイニックス+日本側銀行融資)に総額2兆円で売却された。相場変動の大きな半導体事業は総合電機の一部門として経営することがむつかしいとされる。
 ⇒ ジャパンディスプレイJDIの経営再建をめぐっては、2019年4月に台中連合による金融支援が発表されるも、迷走が続き、まず台湾側3社のうち2社が相次いで離脱。さらに9月に入って中国側の嘉実基金が支援見送りを表明。JDIは再建計画見直しに追い込まれている。
 このほか、シャープは台湾の鴻海精密工業傘下にはいること(2016年8月)で経営再建を進めている。このように日本の大手企業の経営再建に、海外企業の支援が頻繁であることと、対内直接投資規制強化の関係は、一見チグハグであるようにも見えるし、見方によっては対応しているとも言える。

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