見出し画像

阿成「草根飯店」『作家』2013年第5期

 著者は阿成アー・チェン 1948-。『中國當代文學經典必讀 2013短篇小説卷』 百花洲文藝出版社 2014,pp.15-18(『作家』2013年第5期原載)より採録。本当に短い小品である。輕風拂面(軽く風が顔を吹き抜けた)と題したエッセイの中の一つ。
 草根はgrass rootsの訳語だろうか、私とこの店の老主人(老闆)と息子である若主人(小老闆)との関係を語っている。いつの時代のことか。私は老父母の家と通りを挟んで向こう側にある、飯店の老主人に、老父母に毎週日曜に二皿料理を届けてくれと依頼する。ひょっとすると8年は帰れないが、そのお金は前もってあなたの口座に入金しておきますと。しかし3年後、老主人は倒れてしまう。老主人は担ぎ込まれた病院で息子に、通りの向いの王さんの家に毎日曜日、料理を二皿、熱いスープを届けるように遺言する。息子は、伝えるべきもっと大事なことがあるだろうと叱ると、老主人は息子に銀行の通帳のありかを伝えた。老主人の死後、息子は振り込まれていたその口座の金で店を改装し若主人となった。若主人は遺言をまもり、王家に食事を届け続けた。私は海外にいて、老主人の口座が廃止され、新たな送金はできなくなったことはわかったが、電話番号も変わり事情を確かめるすべもなかった。8年後、両親が相次いでなくなり、私は中国に帰ってきた。葬儀を終えた私は、飯店を訪れ若主人と私はお茶を飲んだ。

   若主人はいう。「それじゃ元はあなたが口座に振り込んでいたお金なんですね。私は父はモノ好きで食事を届けていたのだと思ってました。兄弟、でも私は一度も欠かさず届けたんですよ」
  私は言った。「何も問題はありません。過不足があればすべて支払います。」我説,沒問題,差多少錢我都給你。
 若主人は手を振って言った。「やめてください。私があなたに代わってあなたのお父さんに孝行を尽くしたということではどうですか?」小老闆一揮手說,扯是不?就算我替你孝敬你爹啦。不行?
 私は「では私はこのお茶を酒の代わりとしてあなたのお父さんにささげましょう。」と返した。我説,那我以茶代酒你爹一杯。

画像1

コメント:この小説は何回か読んで、最後の「何も問題はありません。不足があればすべて支払います。」我説,沒問題,差多少錢我都給你。の解釈に悩む。実際にはお金は余って店舗改修に使われたのだから、余ったお金はすべて差し上げますでもいいかもしれないと。ただそれでも私は若主人に世話になったのだから、その訳は不足があれば払いますとすべきではないかと考えた。それからもう一つ考えるのは、私が8年も中国を離れた理由と帰国した理由だ。海外で学位を取りその後、海外で地位を固めるのに時間を要したというのが、一つの解釈だが、なぜ帰国したのかは「両親がともに亡くなり」、加えて老同志が、両親のことを評価する話をした(説点批評他們的話)からとある。ということは何か政治的理由で国外にいたのだろうかとも想像される。

#阿成     #草根飯店 #中国短編小説    #中国文学


main page: https://note.mu/hiroshifukumitsu  マガジン数は20。「マガジン」に入り「もっと見る」をクリック。mail : fukumitu アットマークseijo.ac.jp