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過剰債務は企業の低投資を招くのか? Cleveland Fed EC, July 2010

Filippo Occhino, Is Debt Overhang Causing Firms to Underinvestment? Cleveland Fed,  Economic Commentary July 2010   抄訳 2022年11月2日閲覧

過剰債務Debt Overhangと低投資との関係。これはどのような問題なのだろうか。長い間、私の中でくすぶっていた問題である。最近になって私は、金融の緩和の継続、異常な低金利の持続、コロナ下での貸出の急増、日本経済の成長率の低さ、これらの問題が過剰債務問題でつながるのではと考え始めた。もともと日本経済の低成長については、人口高齢化や、生産年齢人口減少などが影響していると考えていた。しかしもしもだが、現在の金融緩和そのものが、過剰債務を生み、生産性の回復を妨げているとしたら、どうなるだろうか。金融緩和ー過剰債務ー低投資 という経路を考えられないだろうか?Occhinoの論稿から、やや粗削りながら、そうした疑問を抱いたのである(福光)。

本文
 多くの経済学者が、企業の貸借対照表の弱さは、事業支出と投資を制約する、そしてそれはその次には成長と回復を妨げる、と示唆してきた。高水準の債務は幾つかの経路を通じて、支出と投資を低めることがある。この注釈(commentary)はその一つ―過剰債務は企業の低投資の原因となりうる―を説明する。
    最近の金融恐慌に先立つ経済が拡張する間、企業はその貸借対照表の成長を主として借入れにより資金調達した。それは彼らの債務水準の相当の増加を導いた。恐慌の間、資産価格と評価価値とは突然低下した。結果として企業のレバレッジ比率(債務比率)は悪化し、企業債務の一つの尺度である、資産に対する信用市場債務の比率は、新たな歴史的高さに最近到達した(Fig.1  Fig.2)。

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     多くの経済学者が企業の貸借対照表の弱さは、事業支出と投資を制約すると示唆してきた。高い債務水準は、幾つかの経路を通じて支出と投資を押し下げうる。高い債務の企業は例えばより多くの現金を利払いに捧げねばならないので、支出にはより少ない現金を持つ。貸借対照表を修復したい願望は、支出を抑制させる。弱い貸借対照表の企業は、新たな投資プロジェクトのため外部資金を得ることがより困難であることを見い出す。そして外部資金を調達できたとき、彼らはより高く支払わねばならず、それは投資のコストを増加させる。
 (以下略)


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