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ヒゲクジラが立体的に餌を嗅ぎつける

2010年ひょんなことからプロジェクトメンバーが集まった。東京丸ビルで面接を受けたメンバー30名は4月になるとひとりづつ前に出て自己紹介を行った。そこから数人のグループに分かれて関心事を話す。いつまでも話題が尽きない。日頃からの問題意識を共有する。

そうだった。これはあの日産がスポンサーになってエンジニアのためになにかしらのイノベーションを起こそうという集まりだった。スポンサーの先には捕まったカルロス・ゴーン氏も名前を連ねていた。指導をしてくれる先生方は3名。なにかと相談に乗ってくれるひとたちだった。

わたしのグループは5名。何度も話を重ねるうちにメンバー間で一番問題になっているものは何か。突き詰めたところアイデアとして採用されたのはストレスをやわらげる製品。その製品をつくることだった。都会で働く人たちはストレスまみれだ。慢性的に刺激をうけており心身が緊張している。そんなときにある種の音を聴いて緊張を和らげる。そんな音を発する製品をつくることだった。

だがはたしてどんな音を聴けば和らぐことができるのだろう。方向性は決まったもののどこからどんな音を探ればいいのか。4人のメンバーは試行錯誤だった。

今週の英紙エコノミストにヒゲクジラに関する記事が載っている。要旨は以下のとおりである。

あるクジラにはひとつの鼻孔しかない。しかし他のクジラには二つあるという。ヒゲクジラには鼻の穴が二つある。ある種のものはその間隔が狭く、別の種では広いという。この差はなんなのか。この記事を書いたもとになっている学術論文がある。

海洋生物学の研究者がクジラの鼻孔に目をつけた。ヒゲクジラが立体的に臭いをかぎ分ける。それにより餌を探し当てるという仮説を立てた。さらにその間隔に差にも目をつけた。間隔が広い方がより探しにくい餌を見つけて食べる。進化の一つとして生存率も上がるという。さてこの説が正しいのだろうか。

動物には目が二つある。それにより立体的に獲物を捕らえることができる。奥行きがわかる。耳は左右に二つある。それにより音が前後左右のどちらの方向から聞こえてくるのか。獲物がどちらの方角で音を立てているのかを聞き分けることができる。鼻孔が二つあることでプランクトンのありかをより的確に探し当てるように進化したという。はたしてほんとうだろうか。

わたしはこの記事を読みながら次のことを考えた。まずどうやってこの科学者が仮説を立てたのだろうか。次にその仮説を証明する方法は正しい方法で行われているのか。最後に証明されたとして人類の進化にとってどういった意義があるのか。それぞれについて考えを述べてみたい。あまり科学的に詳しく書くわけではない。

まず鼻孔はひとつよりもふたつあったほうがいいであろう。なぜかというとその方が一回の呼吸で吸い込める量が多くなるからだ。肺活量があがり運動量が増える。そのためえさを捕らえる距離が長くなる。

また鼻はえさのありかを探すためだけでなくパートナーを見つける時にも使う。メスの犬がオスのおしりを嗅ぐのは性的に近寄っているのではない。オスがどれだけちゃんとした食べ物を食べているか。それを排泄物の臭いでかぎ分けている。いいものを食べているオスにメスは近寄っていく。さらに臭いを嗅ぐことで危険信号を察知する。煙の臭いがすれば火事が近くでおきていることがわかる。

しかしながら二つあることによってえさがどこにあるのか。その方向性がわかるというのはどうか。それはありえることであろう。しかし鼻孔の間隔の広さ狭さがそれほど問題になるのだろうか。

次に餌であるプランクトンを嗅ぎ分ける。探検隊はドローンをつかって探索をした。14種143頭のクジラを観察した。それによると鼻孔の間隔が広い方のクジラはより探しにくいとされるプランクトンを頻繁に食べていた。一方、狭い方のクジラはときどきしか食べることはなかった。このことから鼻孔の間隔が広いほうがより探し当てる機能がよいという結論を出した。はたしてほんとうだろうか。

さてこれらがほんとうだとして人類の進化にどう役立つというのだろうか。人間には鼻孔はすでにふたつある。機能としては呼吸をすることと臭いを嗅ぎ分けることだ。食べ物のいい匂いを嗅ぐ。あるいは危険信号としても煙を察知する。通常は食べ物を見つけるためは使わない。しかも探しにくい食べ物を探すためには使わないであろう。

しかしながらどうだろう。もし盲目で耳が聞こえない人がいたとする。鼻と口は普通通り動いている。そのひとはそれでも生きていけるのだ。どこに安全な食べ物があるかは鼻でかぎ分けることができる。また口があれば食べ物を嚙み砕き胃の中にいれることができる。しかもしゃべることができる。

またこういうのはどうだろう。現代人は目を酷使している。年をとれば白内障や緑内障になる。場合によっては失明してしまうかもしれない。また耳が遠くなるのは年をとればいたしかたない。そうなると残った循環器としては鼻と口がある。鼻を目や耳ほど酷使していない。そのためいつまでも長く使うことができる。であればあとは口があれば食べていける。

そうなると人間でも鼻孔の間隔が広い方が少しだけ生存率が高いということがいえようか。

2010年に始まったプロジェクトが翌年の3月に終わった。発表会では癒しの音を出す製品として珍しい風鈴を開発した。その風鈴にはさはりとよばれる材料が使われている。材質や形は決まったもののどんな周波数で音を出せばいいのか。

そこでザトウクジラの唄声から抽出した周波数を使った。アメリカの研究者Roger Payne博士が日本にくる機会をとらえた。博士に新宿で直接インタビューをした。クジラは人類よりも長く3000万年も生息している。その間、自分たちの存在やその他の生き物を脅かしていない。そういったところからヒントを得た。心身を酷使せず、やわらかい響きで調和をもららす可能性をもったベルだった。

わたしはこの研究を続けるべきだった。音によってストレスを軽減する。

そして14年の歳月を経て、ひょっとしたら臭いによって人間の生存率がほんの少しだけ上がる可能性を見たような気がする。