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英語雑誌の理解にChatGPTを使わない

2022年11月にOpenAIがChatGPTを発表した。一般の人にも一部無料開放。瞬く間に登録者が増えた。今では登録をしなくても使える。あれから1年半近くが過ぎた。この大規模言語を使った人工知能の開発は急ピッチで進んでいる。民間企業においてもブラウザーにその技術を搭載させている。

身近なのがマイクロソフト社のCopilotとグーグルのGeminiがあげられよう。Anthropicというのもある。ここはOpenAIの社員がそこを離れて設立した会社である。いずれも無料で使うことができる。精度を期待するのであれば月間3千円ほど払う有料会員になればよい。

このChatGPTを使って英語雑誌を学習をしようという試みがされている。はたしてこれがいいのだろうか。長文で難解な学術論文に使うのならわかる。論文の要旨をすぐに出力してくれる。また取り残された課題についても指摘してくれよう。学術的には何かと便利になった気がする。

ではこれを一般の新聞記事を理解するときに使っていいものだろうか。その問いに答えようとするのがこの文章です。わたしの考えでは使わない方がよい。使う必要はない。むしろ使ってはいけない。

例えば少しばかり難しい記事で、よく書かれている雑誌として英紙エコノミストというのがあります。それを読んで理解する。その理解を助けるためにChatGPTを使ったらいいのかどうか。それを例にしてみます。さきほどもいいましたけど反対です。

なぜかというとエコノミストの記事というのは難解であることは認めます。しかしChatGPTの助けを必要とするものでもない。まず記事を自分で読む読む。そこが出発です。一回目で何が書かれているかの大筋をつかむ。そういうことをします。

例えば最近掲載された記事をとりあげます。日本におけるコンビニの特徴をあげています。移民の労働者がコンビニ業界に多く採用されるようになった。それで少子化が進む日本の経済を支えていくことができるかという問題提起です。

記事のところに読む時間の目安が書かれています。読むのに7分くらいかかる。単語数はだいたい1500語くらい。この記事は長いのでしょうか。少しばかり難解ではあるものの7分で読める記事であれば長いとはいえないでしょう。むしろ短い。そのような記事の理解に人工知能を使う必要があるのでしょうか。ないでしょう。

またちょっと難解であるとはいうものの、この記事を読む読者層というのはかなり経歴の高い人でしょう。英語力はもともと備わっている人が読む。四谷にある日米会話学院ではエコノミストの記事を使ったクラスが開講されています。そこによるとこのクラスを受講できるひとは英語上級2だそうです。つまりTOEICで950点相当の英語力のある人を対象としている。そうでないと受講対象とはしていません。

そうなると英語力を鍛えようということを目的としていない。英語力は伸ばす必要がない。むしろ理解を深めたい。それには記事に書かれていることを合図にする。そこから関連する書籍をたくさん読むことです。これが英紙エコノミストの読み方でしょう。本の中には学術論文といった長い、難解な文章を読む必要が出てきます。そのときにはChatGPTが登場するかもしれません。

つまり内容面で深くはいっていく。テーマを決めて半年間は同じテーマで深く学ぶ。そういったことをします。それにはChatGPTは必要ないでしょう。むしろ害になる。そんなことがいえましょう。

さてひとによっては二度、三度と読む人がいるでしょう。中には読書会に参加してちょっと議論をしてみよう。論点を出してそれについて参加者と視点を出し合おう。なんらかの気づきがあるかもしれない。そういったことを考える人もいます。そういうひとにとってChatGPTは必要でしょうか。

必要ありません。自分で視点を考えないとだめになります。ChatGPTに考えてもらってはだめでしょう。

1回7分で読める記事を議論する。それに人工知能の助けを求めるようでは議論はできないものです。できなくなる。人工知能の助けを最初から積極的に求めてはいけない。他に理由はあるでしょうか。

それは人工知能の中にある計算式(アルゴリズム)が完全ではないからです。どうでしょう。ChatGPTを使っている読者の皆さんはChatGPTのアルゴリズムを実際に見たことがあるでしょうか。

ほとんどの場合は生成AIが出力する結果を見て評価している。またどこかの評価者が他の生成AIと比較して評価した結果を参考にしている。その程度ではないでしょうか。そうであればむしろ危険です。それは計算式が完全ではないためであり、それによってなんらかの偏り、つまり偏見が生まれてしまう。

もともとエコノミストはどちらかというと左派であり、中心からやや左よりともいわれています。極左ではないものの左寄りです。その記事をOpenAIのように進歩的な人工知能により解釈させたらどうなるでしょう。

左派の都合のいいような解釈をするのではないでしょうか。もともと左なのをさらに左にするだけです。これではよくないでしょう。議論というものは賛否両論をすることであってどっちかに偏ることを是正する助けにもなります。

なので一度読んで大筋をつかむ。二度目には要点をつくる。三度目には論点を記事の中から抽出する。そうすればだいたい読書会にいける準備はできます。そうなると7分、15分、15分としても40分程度で準備できるのではないでしょうか。時間をかけたとしても1時間です。

これをChatGPTを使うとどうなるか。プロンプトのことばかりが気になって時間を使ってしまわないでしょうか。プロンプトをつくるにはプロンプトのことを学習しなければいけない。正しい指示をChatGPTに入力しないといけないでしょう。

そうなるとプロンプト作成に使う時間ばかりがかかる。出力を読むのにも時間がかかる。そればかり試行錯誤をするだけになります。また機械から出た情報が余分な情報になりもとの記事の理解がますます困難になる。それだけでなく、元の記事を読まなくなる。読まないで読書会に出てしまう。そんな結果になりかねません。ひとは楽な方に流れます。

読書会に出ないのであれば、ひとまず自分で理解して、関連本を読んでテーマを理解していく。そうしたほうがいいでしょう。

ChatGPTは必要ありません。一人で学習するには補助的な役割にはなるでしょう。しかしながら争点の設定につかうのは好ましくない。その解決策を人工知能にたずねるのはよくない。決してしないほうがいい。というのは解決策は記事の中に提示されているからです。記事には記者の価値命題、つまり問題提起と主張(解決策)が書かれている。それを勝手に読者が創作してはいけない。

人工知能にやらせてもいけないでしょう。唯一、やるとすれば記事の中に提示された命題をまず自分で考える。その考えを正しいかどうか確かめる。あるいは不足がないか人工知能と対話するくらいであればいいはずです。つまりほぼ解決策として議論したもを最終的な仕上げの補助機能として使うことくらいです。ChatGPTは主役にはならない。してはいけない。

生成AIは使いようです。医者が診断結果や報告書を作成するようなとき、事務作業の助けにはなるでしょう。またコールセンターのオペレーターが対話をするときに補助として使う。また経験の浅いプログラマーが大枠の指示のもと、プログラミングをするときに補助として使う。まだその程度ではないでしょうか。

もともと英語ができる人が読む英紙エコノミスト。それをChatGPTを使うというのは考えられません。英語学習をする雑誌ではない。関連本を読んで知識を蓄えることにつなける。また専門を理解できるようになること。普通でも年2つくらいのテーマです。そんなことのために使います。

国際会議や欧米の大学院で議論するときには読書会も役に立ちましょう。そんなときの準備や振り返りにChatGPTを使うことはまずないといえます。もし使うのであれば相当注意しないといけません。