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サンフランシスコのこと

おいらも正直、アメリカに韓国の慰安婦像を作る意味がよく分からなかったんですよ。今回の騒動までは。それでアメリカ国内の報道を追っているうちに、あ、そうなのかと気づいたことが2つあります。

①まずは歴史的認識。

日本では未だに「朝日新聞が―」という人が多いのですが、BBCニュースにこの慰安婦問題を扱った1996年国連人権委報告のリンクがありました。

日本国内でも慰安婦問題が論じられた90年代に、韓国、フィリピン、台湾、マレ-シア、インドネシア、中国、北朝鮮、オランダの元慰安婦たちの証言をもとに国際的な検証をし、上記の国連人権委報告が出され、これが世界の慰安婦問題の基準となってるのですね。

最初に国連国連世界人権会議の議題となったのは1993年。

そもそも、慰安婦問題が朝日新聞の記事から生まれたと主張する人には在野民平さんのコラムから引用すると
『1970年代に日本人のキ-セン観光に対して、韓国の女性たちが批判を始めました。
「日本男性は、戦争中同胞の女性たちを女子挺身隊員として軍の力で狩り出し、それを反省もせず、今度は金の力でキ-センの性を弄んでいる。」という内容でした。
ところが韓国は当時独裁政権で、日本とうまくやるために国際観光振興政策をとり、あまり問題としませんでした。』
とあるように、急に朝日新聞記事から出てきた話ではないことも知っておくべきですね。

要は一部の日本人が考えているように「朝日新聞記事」が慰安婦問題の根拠になっているわけではないのです。そしてその内容が世界の歴史認識に影響を与えた事実もない。国連の調査は中立的立場の人が多くの国でいろいろな立場の人の話を聞いたうえで報告にまとめてあるので。

つまり朝日新聞が全く違う内容の記事を明日掲載しても世界から見た慰安婦問題には1ミリも影響しないのです。

「証拠もない捏造の話で名誉を傷つけられているじゃないか!」という日本人も多いようだけれど、最初に書いたように既に世界では確定している慰安婦問題の歴史観を日本側からだけの主張で変化させるなんてあり得ないし、仮に一部見直されるとしてもよっぽど説得力ある論理的な事実確認がないと難しいでしょ。この問題では日本は加害者側なのです。

そもそも、日本帝国軍はポツダム宣言受け入れ時に記録資料の大半を燃やして証拠隠滅しているのです。戦犯裁判で裁かれることを恐れた上官の命令で。だから「証拠がない」という言い訳は世界的に全く通用しないことも認めなくっちゃ。あと、実はアメリカのレポートやオランダでの裁判で証拠は揃っているのです。

これは日本でどんな解釈の本が出版されようと、どんな内容のテレビ特番を組もうと、何度大阪市長がサンフランシスコに抗議しようと同じことで、世界には揺るがない歴史認識があるということを日本人はまず理解する必要があります。好む好まざるに関係なくです。

②慰安婦像の意味合い。

これはサンフランシスコの慰安婦設置関連でアメリカを中心に世界発信のマスコミ、ワシントンポスト、NYタイムス、ニューヨーカー、BBCなどが記事にしているのを読んでいて気が付いたのですが、あれは日本人が思うような反日的な意味合いでなく、少なくとも表向きは『普遍的人権保護、特に女性の人権保護啓発のため』に作られているということ。

だからアメリカで、サンフランシスコで市議会が設置を決めることになるのです。別に姉妹都市であった(既に過去形)大阪にケンカ売ってるわけでもないし、現代の日本人を貶める意味合いもないのです。

ただ、そこには史実として旧日本帝国軍の行いを風化させないため、世界で二度とこのような性奴隷被害者が生まれないことを願って像を立てるということ。

実際、アメリカのマスコミの記事を読むと、慰安婦問題の史実を認識はするけれど、それで現在の日本を非難する意図は全くありません。

そこで問題になるのが日本側の歴史認識。

つまり、元々日本を非難する意図がないのに、アメリカの一都市が市議会を通して取り扱うことを決めた議題に、日本の政治や活動家が「日本叩きだー」と介入するからややこしくなるのです。

サンフランシスコ市議会で慰安婦像設置に関する公聴会が開かれた際、「従軍慰安婦は全て捏造だ。あの売春婦は嘘つきだ」と元慰安婦の女性を名指しで攻撃した日本人参加者に対して、カンポス元監理委員は「愛と敬意を込めて言わせていただくが」と前置きし「恥を知れ」と4度繰り返しています。その後、同市議会は全会一致で慰安婦像の設置を決定しています。

繰り返しますが、これは一部の人が「反日がー」という韓国国内での話ではありません。アメリカ国内の、世界的な憧れの街でもあるサンフランシスコ市議会内の話です。

一部の日本国内での嫌韓本では元慰安婦の証言はデマだという説があるようですが、日本でも歴史学会では公式に尊重しているし、日本以外の全世界の国でも尊重されています。そこへ「あれはデマだ」と怒鳴り込めば、「うそ、日本の歴史修正主義ってここまで来てるの?マジヤバくね?」としか受け止められませんし、未だに人権意識のない国なんだと評判を落とすだけなのです。

どうです、日本の立ち位置が見えてきましたか?

これは日本側が世界の歴史認識、慰安婦像をアメリカに作る意図、全て勘違いしてるから起こる結果なんですよね。

例え話をすると、ヒトラーやナチスを題材に作られた映画が放映されると、(たとえどんなに誇張したり揶揄した内容であっても)放映した日本の映画館にドイツ政府が抗議しますか?原爆慰霊者追悼会を開催したらアメリカの市民団体が怒鳴り込んできますか?

今の日本の、大阪の対応はアメリカ側からすればそのくらい的外れな抗議なのです。日本の外から見れば。ね、理解されるわけがないでしょ。

③これからの日本の取るべき態度の提案。

今回のサンフランシスコの件で理解した人も多いと思うんだけれど、慰安婦像は日本側が抗議すればするほど支持者、支持国も増えるし、問題もより可視化され、日本の態度は今回のアメリカ報道のように批判の的になるばかりです。

しかし、表向きは人権保護啓発のための像なんです。現在の日本人、日本という国を貶める意図はないのです。

じゃあ、乗っちゃいましょうよ。

次回から韓国が国外に慰安婦像を設置する際、日本側も設置費の負担を申し出るとか、あるいは思い切って日本国内に誘致するとか。

そして韓国側の運動家にも「現在の日本人は過去の日本人とは違って人権問題を重要視しています」と理解してもらえばいいのです。

共同で設置するのであれば、例えば現在の少女の像でなく、初めて元慰安婦であることを名乗り出て、苦しい記憶を勇気をもって語り、その後韓国、フィリピン、台湾、マレ-シア、インドネシア、中国、北朝鮮、オランダの元慰安婦たちが証言する足掛かりを作った金学順さんの(おばさんの)像も加えるとか。

プレートに「日本帝国軍によって性奴隷にされた女性や少女を忘れない」と書くのでなく「日本帝国軍によって性奴隷にされた過去を勇気をもって話した金学順さんの名誉を称えて。日韓共同制作」とするとか。

このような展開になって、日韓が少し仲直りできるなら素晴らしいと思うけれど、多分無理な話なんだろうなあ。

ただ、一つ確かなことは、もし日本側がこのような動きをすれば、日本という国の名誉回復、尊厳回復には(どこにも誰にも届かない)抗議を続けるよりも1000倍効果があるはず。しかも速攻で。

とりあえず試しに一か所共同設置してごらん、後はどんどん両国の(世界との)溝が埋まって行くから。

1万年かけても勝つ見込みのない歴史戦試みるよりも、現実を、過去の歴史を直視して日本の方から動けば、アメリカも両手をあげて歓迎してくれるよ。

大阪の市長が変わって大阪に慰安婦像作ってごらん、サンフランシスコ側から姉妹縁組復帰の打診が来るから。

③の項は理解してくれる人少ないかもしれませんが、まあ、サンフランシスコの友人を思い浮かべながら考えました。

Peace & Love





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