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マトモな大きさのものを食べましょうよ

#くいもんみんな小さくなっていませんか日本

これツイッターで流行ってるハッシュタグで日本の食いもんがみんな小さく、パック入りなら数が少なくなってなんか悲しい、いっそ量そのままで値上げして欲しいなんて声もあるんですよね。

なぜ小さくならざるを得ないのか、ある記事では「一次産品の国際価格が中国の経済成長の影響で上昇傾向にあり、それが日本の食品メーカーの原材料調達コストにも響いている」ってここでも中国のせいにしているのね。

これはね、アベノミクスで円安政策を延々と続けてるツケなのです。

専門の話は置いといて、誰でも理解できるよう極端に単純化した話をすると、例えば日本で100円の商品Aがあるとします。アメリカで1ドルです。最初のレートは1ドルが100円と仮定しましょう。

これを沢山輸出したいから日銀介入で円安にします。1ドルが200円になりました。このレートではアメリカの1ドルで商品Aは2個買えます。安いので以前は1年で10個売れていたのが1年で15個売れました。日本国内での売り上げを日本円で計算すると1年で1000円だったのが1500円になりました。円安効果!でも、アメリカ側からすれば、以前は10ドル払っていたのに、今年は7ドル50セントしか払っていないのですね。

しかし、1ドルが200円になったので最初の仮定レート時に100円の商品を作るため30円だけかかっていた輸入材料が円安レートでは60円かかることになりました。輸入コスト高です。以前は商品Aが一つ売れると70円儲かっていたのが、40円しか儲かりません。1年で1000円売れた時は700円だった利益が、1年で1500円売れたのに600円の利益しかありません。

総売り上げでは1.5倍も伸びているのに、輸入する原材料費が円安で割高になったので、逆に利益が減ってしまいました。

(最初に書いたようにこれは極端な例で、輸入材料が20円からスタートすれば円安になっても利益は少しだけ増えます)

アメリカ側からすれば安くなっているからたくさん買ってくれるのですが、日本側は同じ利益かそれ以上の利益をあげるためには以前よりかなり沢山商品を売らなければならず、利益を上げるための効率は悪くなりますよね。

大雑把なからくりとしては、これが日本国内で総売り上げを計算すれば景気は悪くないはずなのに、実際はどんどん食いもんが小さくならなければ(コスト高で)生産者が利益をあげれなくなっている原因のひとつなんですよ。

もちろん例は極端な話なので、現実にはこんなに簡単な計算は成り立ちませんが、円安で輸出が伸びる背景にはこういう「傾向」があるのは確かです。

実際のところ、ホントに高い競争力を持った商品はレートとか関係なく、順当な為替レートで順当な利益をあげられるはずなのです。

2、30年前の日本製品は海外でも「とりあえず機能面では言うことないし、きちんと作ってあるので壊れにくいので安心」という絶大な信用を持っていました。「まあ、日本製を買っとけば間違いがない」みたいな。

この信用が、ここ1年ほど(たった1年!)でなし崩し的に崩壊しています。神戸製鋼のデータ改ざんは世界でも大々的に報道され、日本企業の信用低下、凋落の象徴のように扱われています。タカタ、日産、スバル、三菱、東芝、世界で報道される日本の大企業ニュースはこのテのものばかり。

日本では円安で輸出が伸びる面ばかりが報道され、まるで自国通貨が安ければ安いほど競争力が増すような錯覚を持つ人がいるけれど、上の極端な例で示したように、メリットと隣り合わせでデメリットも用意されていることを忘れてはなりませんね。

逆にいうと、輸出に関係ない国内産業ならばデメリットしかない。

ここ4、5年は企業のブラック化も話題ですが、これも上記の例で示した円安による(利益をあげるための)生産性低下で、効率が悪くなった分労働力の量でカバーしようとすれば仕方ない傾向だと分かりますね。

話を元に戻すと、どうして円安で輸出を伸ばそうとするのですか?という問いが出来ると思います。

「そりゃ国際的により高い競争力を持つために決まってるだろ」と答える人もいるでしょう。でもね、そういうビジネスモデルは既に過去の物なんですよ。既に高度成長でなく、成熟した社会を目指すべき日本にとっては。

現在の日本が目指すべきビジネスモデルは、安く大量に輸出するのではなく、他の国の製品とは違った日本製しか持たない魅力を持った製品を順当なレートで順当な価格で売ること。このブランディングという概念が日本では希薄過ぎます。多分本来の意味でのブランドの重要性を理解してない人が多いんだろうなあ、経団連とか大企業のお偉いさん達には。

ヨーロッパ諸国はそういう独自のブランドを育てることにより、量で勝負するのでなく、質というか替えのきかない個性で存在感を保ち続けています。

安く大量に売るビジネスモデルは過当競争を強いられるため、勝者になるか別次元(少なくても安定した層に適正価格で売れるブランドを育てる)に移行できない場合はどんどんビンボになる悪循環に陥ります。

日本人が大好きなアップルの商品。他のメーカーに比べスゴイ割安ですか?逆に一番高いよね。でもみんな買うんですよ。行列までして。

ダイソンの掃除機や扇風機、他のメーカーに比べお買い得ですか?むしろ高いですよね、二倍も三倍も。それがまるでジャガイモのように売れてるんですよ、世界中で。

日本が向かうべきは、そういう唯一無比な「信頼のある」製品を作る国になることで、安く沢山売る国はもう目指すべきでもないし、卒業する段階に来ているのです。そういう方向では今の中国に勝てるわけがない。

だから、時代遅れな量を求め、無理やり円安に誘導する政策。株式市場の日銀介入、この一連のアベノミクス政策よりも、適正なレートで適正価格のものが売れるフツーの国にした方が一般の日本人にはいいこと多いはず。

そして、マトモなくいもん食べるためには、まずマトモなものをきちんと作っている信用を回復しなきゃね。(何十年もかかって築いた信用は1年でぶっ飛んでるけれど、またコツコツやればいい)そこに新しい価値、ブランド力を持てるようになれば、日本の未来も捨てたもんじゃないはずなんだけれど。

Peace & Love 



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