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第九話:祖先と共に癒える

ここでもう一度、この物語の最初にお伝えした宗像の言葉を引用する。

人生には必ず病気、人間関係問題、争い、事故、失敗など、私たち自身ではどうにもならない、いろいろな問題が起こるが、避けることができない。

しかし、それは「自分のあるがまま」を生きるためなのだ、ということを第一話でお話しした。

霊性サイン

ここで、次のリストをチェックしてみてほしい。

▢ 自分は幸せでない方が安心だ。
 哀れな人をみると、無性に助けたくなる。
 同じような問題がよく起こる。
 幼い時から孤独感が強く、自分が本当に汚く、醜く感じる。
 死にたいと思うことがある。
▢ 災害、火事、事故、暴力などの場面や映像を見て急に強い感情が生じる。
 酒・薬・タバコ依存、セックス依存、過食・拒食を止められない。
 ⅮⅤを止められない、ⅮⅤ被害を避けられない。
 反社会的行為とわかっていても止められない。
 よく事故の加害者、あるいは被害者になる。

あなたは、これらの質問にいくつかチェックがついただろうか。


この質問について、宗像は以下のように説明している。

(これらは)霊性サインと呼べるものです。まるで自分の行動が何かにとりつかれたように、自分で自分の行動をコントロールできないような問題が起こるもので、不死細胞である祖先細胞が情動発現していることで生じる場合があります。

不死細胞の情動発現によって、霊性サインとしてあげた問題が起こってくる場合も考えられるという宗像の発言、ある人は「悪霊に取り憑かれる」などと表現するかもしれない。ここまでいくと、にわかに信じがたくなってくるかもしれない。しかし、これも「進化療法」「祖先療法」などのSATセラピーによって「細胞記憶」を呼び覚ますことで、まざまざとその問題を作った時の光景が想起される。自分あるいは自分の中にあるキメラの遺伝子に描かれている進化の記録、それが元で、先のような思いを自分が抱いていたのだと気づけたら、もうそれに翻弄されることもなくなってくるだろう。


今年の4月末(2019/4/20-21)に受けた、SATカウンセラー・セラピスト研修の話をしよう。

ヒトの個体発生には系統発生が繰り返されると言われる。「進化療法」は、ヒト以前の進化の系統発生過程に遡り、進化の途中で危機状態(孤立、共食い、闘争、固まる、自傷、逃走など)をつくったそのイメージや行動パターンを再解決することで、本来のあるがままの自己を取り戻すことを目的とする技法だ。現在の問題を思い浮かべると感じる「身体違和感」をフックに問題場面に遡る。

宇宙の粒子時代→有機物時代→バクテリア時代→アメーバなど単細胞時代→無脊椎動物時代→魚時代→両生類時代→爬虫類や鳥類時代→哺乳類時代→猿時代。SATセラピストに誘導されて、私の脳裏に想起されたシーンは、池にいる魚の自分。太陽の光は届かず、水は黒く濁り、まわりの仲間たちは死滅して、自分だけが生き残っているのだが、いまにも死にそうになっている自分の姿。
また、祖先療法で想起されたシーンは、お城にいて切られて死んでいる私。その亡骸には母親が縋って泣いており、まわりはたくさんのお付の人たちの亡骸で埋め尽くされている。
これらのシーンで惹起された感情の1つが「罪意識」だった。なんで罪意識…、その時、私がつぶやいたのを、セラピストも研修に参加した仲間たちも目撃している。

魚であった自分、城で一人だけ取り残された母親。
まわりの命を助けることができず、自分だけが生き残ってしまったという罪悪感。

魚の私がなぜ一匹生き残ったのか。それは、私がわずかに差し込む光の元で、餌のある場所を知っていたから。でもそれを仲間に教えることはなく、一匹狼で生きていた。
殿様の私は、城落の危機に瀕する前でも、すべて自分の責任と思い込み、誰にも相談することなく、結局は多くの仲間も、共に命を落とすことになってしまった。

この潜在記憶、裏の意思に長いこと私は気づかずいた。
※「裏の意思」については、「第八話:愛を得るために採る間違った行動」でお伝えしているので、まだ読んでいない方は、先にそちらに目を通してほしい。

救世主症候群

これまでの人生のだいたいにおいて、私はチームのリーダーとなり、仲間を救わないといけないという感覚が強かった。若気の至りで体制批判をしたり、上の者に食ってかかることも多かった。そんな生き方をしていたから、仲間たちからは好かれるんだけれども、外に敵を作ることも少なくなかった。直属上長からは煙たがられ、幾度も異動に遭っている。宗像からは「救世主症候群」だよねと言われた。

wikipediaを見てみる。

メサイアコンプレックス(英: Messiah complex)とは、キリストコンプレックスまたはメシアコンプレックス、救世主妄想とも呼ばれる、個人が救済者になることを運命づけられているという信念を抱く心の状態を示す言葉である。狭義には誇大妄想的な願望を持つ宗教家などに見られる心理状態を指すが、広義には基底にある自尊心の低さを他者を助けることからくる自己有用感で補償する人々をも含める。

メサイアというのは、一般的な日本語ではメシア(救世主)と言われるもののことである。この心理が形成されるのは、自分は不幸であるという感情を抑圧していたため、その反動として自分は幸せであるという強迫的な思いこみが発生するとされる。さらにこの状況が深まると、自分自身が人を助ける事で自分は幸せだ(自分には価値がある)と思い込もうとする。

このような論理になるのは、幸せな人は不幸な人を助けて当然という考えを自らに課す事で「自分は幸せである、なぜなら人を助けるような立場にいるから」と考えられるからである。本来は人を援助するその源として、まず自らが充足した状況になることが必要であるが、この考えは原因と結果を逆転させている。

そうした動機による行動は自己満足であり、相手に対して必ずしも良い印象を与えない。また相手がその援助に対し色々と言うと不機嫌になる事もある。しかもその結果が必ずしも思い通りにならなかった場合、異常にそれにこだわったり逆に簡単に諦めてしまう事も特徴的である。

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私は2001年に自分のウェブサイト「心と身体の談話室」を創り、そこに個人の電子掲示板を置いた。自律神経失調症について知ってもらおうと創ったページだったが、多くの人たちが訪れてくれ、いろいろなことを書き込んでくれた。時に「いま手首を切りました」「いま大量にクスリを飲みました」そんなメッセージを送ってくる人たちもいて、私は昼間、仕事を持ちながらも、夜中、眠る時間を削って対応することも多かった。掲示板からチャットやメッセンジャーに移り、お金をいただくこともなく、延々と彼ら彼女らと対話する。その時、私はこの人たちを助けないといけない、それが自分の使命なのだと思い込んでいた。それが家庭環境の悪化にも繋がった。それでも私は、それが自分の役割だとして、妻の「もっと家庭を顧みてほしい」という訴えに耳を貸すことがなかった。
この行動は、まさに、この記述通りの心理背景であることが、あなたにもお解りいただけるだろう。私の両親が、共に教員という対人援助職に就いていたことからすると、この生き方は間違いなく世代間伝達されたものであり、両親もこれに苦しんだ可能性は高い。

人に頼れず、なんでも自分でやることが多かった。だから、どんなことでも独りでできる自分になるんだけれども、自分にかかる負荷はとても大きく、また、いつもどこかに孤独だという気持ちを抱いていたものだ。

生きづらさの原因は親なのか

私は若い頃、「母原病」という本を読んだことがある。

育てられ方が、こんなにも人格形成に影響するんだ、ということを当時思ったことを記憶している。
それで、親から離れないといけないと思い、心の距離を自分から取ったのだが、それが第三話でお話しした、母の死に際しても、指一本触れることができなかったという心理状態に繋がってしまった。しかし、後にも述べるが、宗像の言うように、育てられ方にも、親が乗り越えられていない、この世代間伝達された心理パターンが故だったと解ると、親の呪縛から解き放たれていくのではないだろうか。


こんな本も読んだ。
苫米地英人「まずは親を超えなさい!~最新の脳科学と認知心理学を基にした自己実現プログラムTPIE公式ブック~」

発達心理学のデータで成人が大人になってから、無意識に下す判断のうちの八割九割が親の物真似だといわれている。
無意識での判断は親の刷り込みによる判断になっているということです。これは洗脳以外の何者でもありません。あなたの「親」があなたの最大の洗脳者なのです!

この本には、こんなことが書かれていた。

「親の洗脳」からの逃れ方を間違うと、先の私のようになってしまうということだ。

祖先から引き継がれた生きづらさを絶つ

宗像は言う。

祖先療法の効果は、自分の身体違和感が、母系と父系の祖先期トラウマから生じていることを体験的に理解し、母や父が自分のストレスの原因ではなく、親は世代間伝達の媒体に過ぎないことがわかる。その結果、親を責める気持ちがなくなり、親と自分を同じ仲間と捉えられ、自分と同じ苦しさをもつ中で命をつないでくれたことに感謝できるようになる。

パーソナリティは10歳までに決まり、両親に対するアンビバレンス感情が、その置き換えである10歳以降に出会った配偶者、子供、職場の人、親族、治療者などとの関係性に影響する。

母系由来と父系由来の身体違和感には、動物期の反射的行動パターン、たとえば捕食者だったのか被食者だったのかに基づき、ヒトの祖先期に「生き残りのための特有の行動脚本」としての行動パターンがつくられる。

祖先療法のもう一つの効果は、母系由来と父系由来の世代間伝達された行動パターンを理解し、あるがままに生きる良循環的な行動パターンに気づけ、それを実現できる自己成長への行動目標に気づけ、その習慣化を促すものである。

なかなか難しい表現ではあるが、要は、親はその親を見て育ち、生き残りのために採る生き方は、先祖代々伝達されてきているものだということ。それは、時に、キメラ細胞となって、自分の身体に入っていることもある。その細胞の情動記憶も含めて祖先からの「生き様」が、良くも悪くも自分にしっかりと刻まれているということ。その「生き様」には、ヒトになる前の進化の過程での動物の記憶、強いものに出会った時に戦うのか逃げるのか、喰うか喰われるかのサバイバル脚本も影響しているから、なかなか自分では変え難い。
宗像は、この母系・父系それぞれ由来のサバイバル行動パターンも示してくれているが、それはSATセラピーを受けられてのお楽しみとしよう。自分がどんな状況でどんな行動を採るのか、その習慣化された行動パターン(生き残りのために選択する脚本)については、第八話でお話しした愛着心理パターンを思い出してほしい。

両親がその情報伝達の媒体にしかすぎないんだと解れば、自分と同じことできっと悩んだんだろう、それがうまく解決できなくて、自分に伝わってしまったんだろう、いわば自分の同士だったんだと解り、自分に、あれしちゃダメ、これしちゃダメと言った両親の、その時の気持ちも理解できてきて、親を許せるようになる。そうすれば、親との関係性が良くなる。その置き換えだった10歳以降に出会った人たちとの関係性も、必然的に良くなる、ということなのだ。


いま、親をはじめ、自分のまわりに苦手な人がいる人は多いと思う。親に限定して話をするが、結婚して居を構えて生活し、たまに実家に帰った時、そんなに長く居ることができないという人も少なくない。それは、親のお節介のうっとうしさだけでなく、親が自分の嫌なところを思い出させるからかもしれない。でも、親は、自分と同じ生きづらさを感じている同士なんだということ。
私は、両親を失くし、すでに14年近くになるため、いまさらなんともできないが、孝行するなら生きているうちだ。あなたの愛で、世代間伝達を絶ち、あなた自身がしあわせになることで、あなたの両親も、あなたの子どももしあわせになられることを願っている。

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