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「本がすき。」書評集

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光文社のサイト「本がすき。」に寄稿した書評を転載しています。ちょっと真面目な文体です(笑)
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記事一覧

すべての原作ファンが観るべき 映画『ザリガニの鳴くところ』

18日公開の映画『ザリガニの鳴くところ』を観ました。 とても、とても良かった。 エンドロール…

高井宏章
1年前
53

死地は地上にあった『デス・ゾーン』

複雑な思いでこの文章を書いている。 本書は、多くの人に読んでもらいたい興味深い1冊だ。 一…

高井宏章
2年前
53

ロシアと中国の仕掛ける新たな戦争の形 『破壊戦』

最初に、著者の古川英治氏が私の親しい友人であることを明記しておく。 この文章には身びいき…

高井宏章
3年前
37

旅行記というバトン 『0メートルの旅』

旅行記は、良い書き手を得れば、ほぼ確実に良い読み物になる。 見知らぬ風景や人との出会いに…

高井宏章
3年前
42

ナメクジに考えさせられる 『考えるナメクジ』

ナメクジほど、「考える」という動詞と縁遠いイメージの生物はなかなかいないだろう。 これし…

高井宏章
3年前
18

「情報のたこつぼ」は作られている 大統領選の混乱と『マインドハッキング』

本稿は光文社のサイト「本が好き。」に寄稿したレビューを改稿したものです。元記事「大統領選…

高井宏章
3年前
25

これで書けなきゃ、お手上げ 『書くのがしんどい』

書名だけみると、ベストセラー『読みたいことを、書けばいい。』の著者、田中泰延さんがこぼす愚痴のようだ。田中さんはあちこちで「書くのは苦しい」と発言している。 本書はそうした泣き言ではなく、「そんなあなたが書けちゃうんです!」という帯の文句を含めてメッセージが完結する、「これから書く人」に向けたガイドブックだ。 『書くのがしんどい』PHP研究所 竹村俊助/著 文章術を説く本は何冊か目を通しているが、本書はなかでも最も親切な作りだと感じた。 同時に最も「詰め寄り」がキツい本

「勉強のやり方」を知らない子どもたちに 『東大式節約勉強法』

私事で恐縮だが、著者の布施川天馬さんと私は、年は二回り以上離れているものの、境遇が少し似…

高井宏章
3年前
45

タペストリーのような大風呂敷 『三体2 黒暗森林』

翻訳モノには、独特のマゾヒズム的な楽しみ方がある。 もう「新刊」は出ている。 でも、読め…

高井宏章
3年前
17

「すべての男」が読むべき傑作 『ザリガニの鳴くところ』

「2019年アメリカで一番売れた本」 「全米500万部突破」 そんなパワーワードが踊る帯には強力…

高井宏章
3年前
50

教育の「悪平等」への偏見をほぐす 『日本の15歳はなぜ学力が高いのか?』

PISAをご存知だろうか。 OECD(経済協力開発機構)が3年ごとに行う国際的な学力調査で、Progra…

高井宏章
3年前
43

鳥肌モノのエピソードの宝庫 『エリザベス女王』

秀作ぞろいの中公新書の歴史シリーズのなかでも、指折りの傑作だ。 今年で94歳、在位68年を迎…

高井宏章
3年前
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10億年後を心配する、最も“ぶっ飛んだ“AI論 『LIFE 3.0』

まず自分の誤算を白状しておこう。 まさか邦訳が出るとは。しかも、こんなに売れるとは。 『L…

高井宏章
3年前
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研ぎすました短刀のような12編 『刑罰』

各国で絶賛され、日本でも2012年の本屋大賞・翻訳小説部門トップに輝いた『犯罪』の筆者の最新作は、期待を裏切らない珠玉の短編集だ。 『犯罪』と『罪悪』の2作を何度も再読してきたシーラッハファンの私にとっては、文字通り、待望の1冊。6月に入手して以来、お気に入りの収録作はすでに3~4回読み返している。 『刑罰』東京創元社 フェルディナント・フォン・シーラッハ ドイツで刑事事件専門の弁護士として活躍してきたフェルディナント・フォン・シーラッハは、自身が体験した事件を下敷きに創