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子どもを読書家にする「待ち伏せ型」本棚のつくり方

冒頭からタイトルを真っ向から否定するようで恐縮ですが、「子どもを読書家にする確実な方法」なんて、ありません。ハナから無理だと思った方が良い。

スルーがデフォルト

私は、本を人に薦めるのがうまい。書評を書いたり、飲み会などで本をオススメしたりすると、かなり食いつきが良い。
そして私は相当の本好きでもある。
先日、引っ越した際、某アート引越センターのベテランさんに、「数千件の経験のなかで本の量だけならトップ10に入る」と呆れられた。読書好きという属性がどれほど遺伝するかは分からないが、多少は影響があるだろう。

そんな我が家でも、私が「これ面白いよ」「読まないと人生損」とプッシュしても、娘たちはほぼ全スルーである。
ま、親に薦められても、気が向かないですよね、本なんて。

できるのは「待ち伏せ」だけ

たとえ無理でも我が子に本を読む人間になってほしいと思う親は多いだろう。私もそうだ。
それは、勉強にプラスとか役に立つとか、そんな実利的な話ではなくて、自分自身が読書で人生が豊かになったからだ。
読書の楽しさを知ってほしい。
親子で同じ本の話題で盛り上がりたい。
そんなスタンスで「子どもと本」の関係を考え、私は一つの結論に達した。

親にできるのは「待ち伏せ」だけである

面白い本を本棚に並べて、手に取れるようにしておく。
これだけ。
無駄とは知りつつ、「これ、読んだら?」と薦めることはある。娘たちから「このジャンルで面白いの、ない?」と聞かれることもある。
でも、そんな正規ルートよりも、「待ち伏せ」で出会った本の方が子どもはのめり込んで読む。

本との出会いは、たとえ自宅の本棚であろうが、一期一会でパーソナルなものであり、「主体性」が大事なのだ。

3姉妹なので誰か一人が「面白い!」となると芋づる式で読者層が広がることもある。父親より姉妹間の推薦の方が断然、訴求力は高い。
親の影響力なんて、そんなもんだ。
でも、その本を本棚に並べて「待ち伏せ」したのは私だから、マンマと罠にかかっているのである。

「じゃあ、どんな本が良いのよ?」と疑問がわくところでありましょう。
今回は高井家で「待ち伏せ」が成功した本を紹介する。
三姉妹のうち2~3匹、最低1匹は釣れたものばかりです。

お断りしておくが、ハッキリ言ってメチャクチャなラインナップである。
時代もジャンルも闇鍋状態で、教育効果などまるで考慮していない。
狙って「待ち伏せ」したものもあるが、ただ単に私が読みたくて並べておいたものを勝手に読んだケースもある。
それで良いと思っている。
読書の魅力を知ってしまえば、あとは好きな本を自分で探すようになる。そして、今までのところ、娘たちは実際にそうなっている。

本編に入る前に、過去の投稿を2つほどご紹介しておく。「絵本→マンガ→字の本」という階段の上り方は、ごく一般的であろう。

では、高井家の本棚の一端をご笑覧ください。

I 「物語の力」で罠にハメる

本というのは、人それぞれツボがある。
選書に正解はない。「数打ちゃ当たる」しかない。
なので、変な「傾向と対策」は加えず、羅列でいきます。
まず小説系から。「物語の力」で読書の世界に引き込む作戦である。

『氷点』 三浦綾子

我が家の「待ち伏せ」本棚の最高の成功例は、名作「氷点」である。

私自身、小学生のときに母に薦められて読み、それ以来、何回再読したか分からない。2年に一度は読み返す屈指の愛読書。ロンドンにも持って行ってかの地で再読した。
この初出が1960年代という半世紀以上前の作品が、平成生まれのティーンエイジャーにもウケるのだ。内容は今更なので割愛するが、要は「ガラスの仮面」同様、「読みかけたら最後まで持っていかれる」コンテンツである。

「待ち伏せ型」の選書のキモは、この『氷点』に集約される。
時代と世代を超える破壊力のある面白い本を、親自身(私です)が楽しむ姿を見せる。これだ。
別に、見せるために読んでるわけじゃないのだが、私は面白い本を読んでいる最中、ニヤニヤしたり、「ヤバい!ヤバい!」と叫ぶ癖がある。ヤバいのは、アンタや…。
でも、この「ヤバい!」とか「ムッチャ、おもろいな!」みたいな一読者としての素直な声の方が、「この本、読むといいよ」という上から目線な言葉より、誘導する力は強い。
演技はダメですよ。本音の、魂の叫びじゃないと。
そしてそれは伝染する。娘たちも「夏枝(主人公陽子の母ね)、ヤバい!」と盛り上がる。

『夏への扉』ロバート・A・ハインライン

言わずとしれた、ハインラインの傑作タイムトラベルもの。文句なしで面白い。最高。
姉が妹に「読まないと人生損」と薦めるレベルで、前述の通り、そんな「連鎖」が起きれば、しめたものである。
1950年代の作品だろうが、面白ければ、読みます。小学生からイケる。

『夜のピクニック』恩田陸

「夜ピク」の愛称で高井家でも愛されてます。私も何度か再読している。すでに青春小説の古典ですね。これも小学生から大丈夫。

『リテイク・シックスティーン』豊島ミホ

これは知人に薦められて最初に私がハマり、単行本があるのに文庫まで買った逸品。どう考えても面白い。何度読んでも面白い。
これもビミョーにタイムトラベラーだな、と今気づいた。
中学生なら楽勝、高学年からでもイケます。オジサンもキュンキュンします。

『穴 HOLES』ルイス・サッカー

これも名作なのだが、若干マイナーかもしれないので、Amazonの作品紹介を引用しておく。

全米図書賞、ニューベリー賞他受賞の傑作。無実の罪で砂漠の矯正施設に入れられた少年スタンリー。大地に穴を掘るだけの苦行の日々から脱出し、不運を幸運に逆転する冒険へと踏み出す。友情と感動の物語!

読みだしたら止まらない面白さ。私も3回ぐらい読んでいます。中~高学年からなら余裕でイケます。ちょっと男子成分多め。

『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス

説明不要の世界的ベストセラー。読みだせば止まらない。我が家にあるのはこのバージョンです。新版が出ているようだが、ノぺっとした表紙で、どうかな、と思う。
「待ち伏せ」で獲物を捕らえるには表紙は大事なファクターだ。

『ぼくと1ルピーの神様』ヴィカス・スワラップ

映画『スラムドッグ$ミリオネア』の原作。非常によく練られたプロットで、最後まで息が抜けない傑作。なのに、文庫版、絶版っぽい。単行本は高騰している。どうなってんだ。文庫は中古が安く出回ってるから良いけど……。
映画は未見です。本が面白すぎて視る気が起きない。けど、一応、こちら。

『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦

100万部軽く超えてるし、映画化されてるし、説明不要ですね。
「おともだちパンチ!」、我が家でも流行しました。
ストーリー、文章とも、可愛らしくて、素晴らしい。
これも、表紙が良い。「待ち伏せ」適正、高し。
高学年からOKで、中高生なら文句無し。

『マーチ博士と四人の息子』ブリジット・オベール

これも傑作ですけど、ややマイナーかもなので、例によって。

医者のマーチ博士の広壮な館に住み込むメイドのジニーは、ある日大変な日記を発見した。書き手は生まれながらの殺人狂で、幼い頃から快楽のための殺人を繰り返してきたと告白していた。そして自分はマーチ博士の4人の息子―クラーク、ジャック、マーク、スターク―の中の一人であり、殺人の衝動は強まるばかりであると。『悪童日記』のアゴタ・クリストフが絶賛したフランスの新星オベールのトリッキーなデビュー作。

版元が早川で、訳者が堀茂樹で、アゴタ・クリストフが推してる。
はい、ポチっと行きましょう。鉄板にもほどがある。
これはさすがに中高生から、ですね。

『文鳥・夢十夜』夏目漱石

正確に言うと「夢十夜」だけ、3匹とも釣れた。どうも学校の先生に薦められたらウチにもあった、という流れらしい。
ちなみに漱石は一通りそろっているが、「夢十夜」しか食いつかない。短編オムニバスでとっつきやすいのでしょうね。

『パノラマ島奇談』『屋根裏の散歩者』江戸川乱歩

少年の日の愛読書を再読用に買い揃えたら、まさかのヒット。意外感はあったが、乱歩なら読めば鉄板で面白いし、文体もまだ賞味期限は切れていない。このシリーズ、ほかにも何冊かウケてました。

『獣の奏者』『守り人シリーズ』『鼓笛のかなた』上橋菜穂子

『獣の奏者』は、まさか日本語話者で未読の方はいないと思うが、万が一、そうなら、今すぐ全巻そろえましょう。
とにかく、この一連の上橋作品は、ハズレ無しです。私も娘も再読の嵐。
そして、この流れでくれば、コレですね。

ハリポタは「待ち伏せした」というより、待ち伏せされて沼に追い込まれたという方が実感に近い。上のnoteを読んでもらえば分かります。
世界的、歴史的な鉄板コンテンツ。訳文は酷いけどな。

II なぜかウケた読み物系

お次はエッセイや読み物の中からヒットを。「これなら」と待ち伏せを狙ったものもあれば、私が読んだ本を並べて置いたら、意外な本にひっかかってくれたケースもある。

『宇宙への秘密の鍵』ルーシー&スティーヴン・ホーキング

これは長女が小学生のときに突然ハマり、夜中までかかってぶっ通しで一気読みした思い出深い1冊だ。何年かかけて刊行されたシリーズ全巻そろえた。分かりやすく、大人が読んでも面白い。

『世界一素朴な質問、宇宙一美しい答え』

Amazonから引用します。

科学、哲学、社会、スポーツなど、子どもたちが投げかけた身近な疑問に、ドーキンス、チョムスキーなどの世界的な第一人者はどう答えたのか? 世界18カ国で刊行の珠玉の回答集!

「素朴な質問100個に世界の第一人者100人が答える」という企画の時点で勝ったようなものだ。どこから開いても、大人でも面白い。

『ホワット・イフ?:野球のボールを光速で投げたらどうなるか』ローランド・マンロー

テイストは「世界一素朴な」に似ているが、こちらの方が馬鹿馬鹿しく、なのに高度な内容。中高生以上じゃないとキツいかもしれない。
面白そうだから私が読むつもりで買ったのだが、娘に先に読まれてしまった。

『オーケストラの職人』岩城宏之

私は滅多なことでは怒らない人間だが、こういう名著が絶版(っぽい)になっていると、本当に腹が立つ。中古でお求めください。
岩城宏之のエッセイは、どれも素晴らしい。指揮者としてのキャリアを考えればネタが最高なのは当たり前で、文章もお人柄がにじむ暖かい文体。めちゃくちゃ、うまいです。文庫化されたものはすべて集め、何度も読み返している。『指揮のおけいこ』も傑作です。
岩城エッセイの中で、裏方にスポットを当てた『職人』は、とっつきやすく、ユーモラスで、娘にも評判。もちろん、大人が読んでも最高。

『人生がときめく片づけの魔法』近藤麻理恵

「世界のこんまり」の出世作。最初に話題になったころ、自分で読むために買ってきて、ちょっとだけ実践した。そのまま本棚に放置していたら、なぜか三女がドハマりし、続編やらイラスト編やら、シリーズを総なめする状態に。こんまり、恐るべし。
Amazonのリンクを開いていただくと、レビューが1000件を超えている。しかも星は平均4.3。バケモノである。星の平均だけなら拙著も同じだが…。

III 子どもの読み物 定番モノ

以下は定番というか、小学校低学年から中学年ぐらいなら楽しめるだろう、という読み物を並べます。我が家ではシリーズをかなりの数そろえるところまで行った人気作。
私は読んだことがないので、何とも言えません。面白いらしい。
ちなみに高井家は「字の本」はお父さんに買ってもらえるというルールになっています。

唯一、私が長女を誘導して読ませたのがこのシリーズ。私も3巻までは読んだ。よくできている。

あとはダーッと並べます。

そして……外せない名著

ま、お約束ですが、こちらも悪くない本です。

今回こそ、おあとがよろしいようで…。

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高井浩章

5万部超の経済青春小説「おカネの教室」を書いた人。記者歴20年超の三姉妹のお父さん。新潮社フォーサイトで「独選『大人の必読マンガ』案内」連載中。ツイッターもやってます→ https://twitter.com/hiro_takai取材等の問い合わせはツイッターでお気軽に。

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