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【親馬鹿御免】娘の感想文で「言葉屋」を読みたくなったお父さん

ツイッターでリクエストが多かった「再読必至の文系向け理系本10選(仮題)」を書こうと張り切って帰宅したら、三女から「今日のお昼、校内放送で読書感想文を朗読した」と報告があり、どれどれ、と読んでみたら、これが実によく書けている(←はい、親馬鹿です。わかってます)。見出しというか、タイトルも良い。
取り上げているのは「言葉屋」シリーズ(作・久米絵美里 絵・もとやままさこ)。「お父さんのnoteに載せていい?」と打診したところ、ご快諾いただいたいので、今日はそちらをご紹介します。

言葉を売らない言葉屋の売るもの 6年〇組 高井〇〇

 この本にでてくる「言葉屋」というものは、「言葉を口にする勇気」と「言葉を口にしない勇気」をお客さんに提供するお店だ。そして、ある夏、この本の主人公、小学五年生の女の子、詠子は、小さな雑貨店を営む、おばあちゃんが「言葉屋」だったことを知り、見習いとして入門する。
 私がこの本で一番心に残ったのはおばあちゃんが言葉屋のことを詠子に説明する場面だ。
「いいかい、私たち言葉屋は、言葉屋とはいえども、言葉そのものを売っているわけじゃない。言葉はいつも、それを口にする人の中にしかないからだ。言葉屋があつかっているのはね、言葉を口にする勇気と、口にしない勇気だよ。」というおばあちゃんのセリフに、私は数秒、意味がわからなくなり、混乱した。その後、もう一度読み返してみてやっとおばあちゃんの言葉が頭にしみこんできた。ここまで読むまでは、あまり言葉屋のことが説明されてないため、言葉屋とは何だろうとわくわくしながら読んでいたのだが、あまりにも言葉屋が負っている責任が重く、驚いてしまったのだ。

(原稿用紙3枚。お父さんより字がうまい…)

 確かに世の中には言いたくてもなかなか言えない言葉やどんなに言いたくても言えない言葉がある。そして、その言葉を出したり、押し込めたりするにはかなりの勇気がいるだろう。しかし、その勇気は一歩間違えると、言葉を武器として使うことになってしまう。言葉を武器として使えば、言われた人だけでなく、聞いた人、言った人、そして言葉を武器として使うために勇気を売った言葉屋まで、傷つくのだ。そんなことを何回もしていたら、言葉屋自身が言葉の力に押しつぶされてしまうのではないか、と。
 それに、このことを教えてもらった詠子は、想像力があり、おとなしめの子だ。だから、当然、私が考えた不安は詠子の中にもあったはずなのに、詠子は、何も質問せずにおばあちゃんが話す言葉屋のことをじっと聞いていたのだ。ここまでの私の詠子に対するイメージは普通の子、というような感じだったのだが、ここで、詠子の勇気が見えてからは、普段は普通そうだけど、心の中に何か強い芯のようなものがある子、というように一変した。その後の話でも、詠子はその勇気を見せてくれるのだが、そのたびに、私は頭の中で詠子を尊敬しているのだった。

(読売新聞の作文コンクールで佳作を頂戴したそうです。学校放送での朗読はそのご褒美みたいな感じ)

 私はこの本から言葉は使いようによって、武器にも薬にもなる、強い力を持ったものだということを学んだ。このことから、詠子がおばあちゃんの話を聞いてから言葉に興味を持ったように、私も、言葉の使い方に気を付けて、言葉を薬として使っていきたいな、と思った。それから、私の読書感想文を読んでくれた「あなた」も、言葉を薬として使っていってほしい、と願う。

以上、親馬鹿なお披露目でした。お楽しみいただけましたでしょうか。
職業病であちこち手を入れたくなるわけで、一瞬、「鬼の全面添削編」みたいなものをここに載せようかと思ったが、自重します(笑)

そのかわりに、以下、蛇足ながらお父さん=私の読書感想文遍歴を少々。
子どもの頃の私は作文が得意で、毎年、読書感想文コンクールで賞をもらっていた。どんなグレードの賞だったかは覚えていないが、朝礼で前に呼ばれて賞状を受け取る常連だった。
それが小6でぷっつり途絶えた。正直に感想を書くようになったからだ
それまでは課題図書を読んで、「ああ、大人はこういう感想を書いてほしいんだろうな」とプロ意識をもって書いていたのだが、自我が芽生えて大人の期待を忖度するのが嫌になったのだった。
小6のときの課題図書が何だったか覚えていないが、「子供だましだ」みたいな、いかにも反抗期のガキが吐きそうな感想を書いた記憶がある。
再び賞をもらったのは、中3のときだった。書いたのは、司馬遼太郎の「項羽と劉邦」の感想文。あまりに面白かったので「お前ら!とにかく、これを読め!」という熱のある文章が書けたのだと思う。その後、司馬遼太郎の代表作を片っ端から読むというお約束の展開になったのは言うまでもない。

残念ながら、このときの感想文を含め、子どものころの作文はほとんど手元に残っていない。
この投稿を、大人になった三女が読み返す日が、ちょっと楽しみだ。

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