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「同じこと2度聞かないノート」のススメ

ここ3日ほど、タイムラインにこの新入社員教育ネタのマンガについてのツイートが次々と流れてくる。

まとめると、

・新入社員だからミスが多いし、怒られることも多い
・それはしょうがいないけど「もう済んだこと」を怒るのはやめてほしい
・一例は上司に頼まれた写真の撮影をすっかり忘れたときのこと
・翌日「なんで忘れるんだよ!」と怒り狂って連呼された
・怒られながら、申し訳ないと思いつつ、「そんなこと言ったって忘れたもんはしょうがないじゃん」「あんたは今まで忘れ物したこと一度もないんか?凄いな、と心のなかでずっとバカにしていた」
・起きてしまったミスを怒るのではなく、「次にミスしないための指導」をしてほしい

という新入社員視線の「怒られ方」への不満と提言(?)といった内容だ。
賛否は割れていて、

「パワハラ上司はやだね」
「終わったことをグチグチ言うヤツいるよね」
「指導が上司の仕事」
「怒ると叱るは違う」

と言った擁護派もいれば、

「仕事なめすぎ」
「『バカにしてた』ってのがアウト。顔に出るんだよ、そういうのは」
「これは単発の失敗じゃなくて積もり積もったミスへの怒りでは?」
「こういう新入社員、増えてるわ…」

と辛口コメントやある種の嘆きが入り混じっている。
恐らく、前者は社会人歴の短い若者が多く、後者は入社数年経っているか、部下がそこそこいるオジサンが多いのだろう。
私もオジサンなので、若干、後者寄りの感想を持ったのだが、「新入社員の教育のあり方」という面では、擁護派に共感する部分もある。

グチグチと感想だけ書いても屋上屋を架すだけなので、この問題について、私自身のノウハウをシェアしたい。

「何でも聞けよ。でも、同じこと聞くなよ」

四半世紀前、新米記者だった私は金融関係の取材チームに配属された。
10人ほどのチームの中から、私に次ぐ2番目の若手記者のNさんが教育係になってくれた。歳は2~3つほどしか違わなかったが、とても有能でキッチリとミスなく仕事をこなすタイプの人だった。
そのNさんは会ってすぐ私にこう言った。

「分からないことがあったら何でも聞いてくれ。君がバタバタするより、分かってる人に聞くのが一番早い。他の先輩にも遠慮なく質問しろよ。その代わり、みんな忙しいから、同じ質問は2度とするなよ

実際、そのチームの人たちは、毎日、冗談みたいにクソ忙しそうだった。私自身もすぐ分単位で作業時間を読まないと仕事がこなせないぐらいクソ忙しくなった。
Nさんに言われてすぐ、私は大学ノートを1冊用意して、表紙に大きくこう書いた。

同じことを2度聞くな!ノート

片っ端から「雑用ノウハウ」をメモる日々

私は「絶対、同じことは2度聞かないぞ」と不退転の決意をもって「忘れちゃうかも」と思ったことを片っ端からノートにメモした。
それは例えば、

・コピー機のソート機能の使い方
・ファックスの短縮番号ボタンの送り先
・内線電話の転送の仕方
・〇〇というデータの問い合わせ先は▲▲
・経費精算の伝票の場所
・グラフを作るときの注意点

といった極めて些細なことが中心だった。

些細なことだが、こんなことこそ、新入社員には何をどうしたらいいかさっぱりわからないものだ。
しかも、一つ一つは大したことなくても、「さっぱりわからん!」という細かいお約束をいっぺんに短期間で覚えなきゃいけない。
メモっておかないと、すぐに「あれ?これって、どうやるんだっけ?」となってしまう。
経験的には、こういう細かい作業手順とか社内のお約束は、1日2つ以上は覚えていられないし、1回覚えても1週間も間が空いたらアウトだ。
記憶力が良い若いころでも、である。

ちなみに実務的には、
・何か質問したら手元のメモ帳に書き残すか、頭に刻みこむ
・仕事が一段落する夜9時か10時に「ノート」に書き写す

という手順を踏んでいた。
もう1つ、大事なノウハウがあった。

・その「技」を誰に習ったかメモしておく

これである。
「同じことは2度聞かないぞ!」と決意していても、ノートが不十分だったり、理解が足りなかったりで、「あ、もう一度聞かなきゃ……」となることは、ままある。
そういうときは「前とは別の誰か」に聞くのだ。
ちょっとズルですね(笑)

そんなズルも活用しつつ、私の「2度と聞かないノート」の内容はどんどん充実していった。先輩に質問したことだけじゃなく、自分で見つけたノウハウも書き足していったので、大学ノートの4分の3くらいは入社数か月、夏ごろには埋まっていたと記憶する。
残念ながら、このノートは手元に残っていない。

ノートを取るのは二重、三重の効果がある。
まず「これはノートに付けておこう」と思って聞くので指示や指導の吸収効率が上がる。
そして、実際にノートに付けると記憶が定着する。
もちろん、ノートを見返せば、ちゃんと雑用がこなせる。

この辺りは、「まあ、そりゃそうだろう」という効果だ。
だが、私が思うに、最大の効果は「2度聞かないつもりなんだから、何でもかんでも最初は質問しちゃえ」と開き直れるのが、とても大きいのだ。
今どき、何でもググってしまう時代だろうが、今も昔も、職場の中の決まり事や特殊な作法は社内の人に聞くのが一番なのだ。

「雑用大魔王」な新入社員

入社して半年も経つと、私は雑用を片付ける効率と記事やグラフに必要なデータを見つけるのが異常に速い男になっていた。先輩に雑事やデータ探しなどで頼られる場面が増えた。「同じことは2度と聞くなよ」というNさんのアドバイスは、私を「雑用大魔王」に化けさせたのだった。
まだ長い原稿はちゃんと書けない、半人前どころか四分の一人前ぐらいのヒヨッコだったが、チームの中で「コイツは雑用では使える」というポジションを得た。
それに、記者稼業に限らず、雑用を頼まれても自分の仕事に支障が出ない時間内でミスなく片付けられるのは、新入社員として大事なスキルだろう。

さて、少々、冒頭のマンガに戻ろう。
これは想像でしかないが、この新人さんは、あれこれ発生する新しいタスクに手一杯でメモリ不足みたいな状態になっているのではなかろうか。
私の新入社員時代はインターネットすら「お好きな方の趣味」という今では想像もつかない世界で、手帳にToDoリストを作るぐらいしかタスク管理の方法はなかったが、いまはスマホもネットもある。
Google カレンダーでも何でもいいけど、リマインダーを使えば「やるべきことを忘れる」なんて事態はそうそう起きないはずだ。
それが頻発するようなら、本当に仕事をなめているか、仕事のやり方が根本的におかしいか、余裕が全くないか、いずれかだろう。前2者は論外なので、ここでは無視する。
余裕を生むためにも、スキルアップのためにも、「同じことは2度聞くな!ノート」は有効だと思う。
なお、直観的に、スマホのメモ機能なんかよりはフィジカルなノートに書いたほうが効果がありそうな気がする。
是非、お試しあれ。

部下を持った皆さんに「反省会」のススメ

さて、お次は部下がいるオジサンのみなさんへ。
あの漫画見て、思いますよねぇ。

「仕事なめてんのか!?」
「給料分働けや!」
「甘えてんじゃねぇ!」

いや、もう、ごもっとも!私も正直、ちょっとそう思います。
でも、やっぱり、いまどきの新入社員相手にそれは、ちょっと厳しすぎるだろうと思います。イラっと来たら、深呼吸しましょう。
腹が立つのはこっちに原因があると思った方がいい。忙しすぎ、とか。

問題は入社2~3年目かそれ以上の中堅どころの社員ではなかろうかと。
このあたりだと「上司側の怒り」が正当化されるように思います。なのですが、再びしかし、まさに例の漫画に描いてある通り、その想いをぶつけても事態はあまり改善しないのですよ。
体感的には、これ、ここ10年くらいで徐々に進んできた変化ですよね。
変化というか、我々がまぎれもなくオジサン(もしくはオネエサマ)になったんです。若い人とは感覚が違う。

「長いモノには巻かれ、時流には流される」がモットーのワタクシは、時代の変化にあわせて「その場では叱って、事後に反省会」というやり方をしています。
まず「叱る」の方。ポイントは2つあります。
1つは仕事の質。これは「絶対基準の質」ではなく、「キャリアを考慮した場合、求められる水準に達していない」と判断したら、そう指摘するようにしています。「入社5年目でコレでは水準以下」「10年選手としては残念な仕事」といった具合です。叱るというより冷徹に採点する、という感じです。その方が感情的に怒られるより怖いはずで、響きます。響かない相手なら、処置無し。お付き合いを減らします。
2つ目は基本動作。やるべきこと、押さえるべきポイント、踏むべき手順を踏んでいない場合、これはかなり厳しく叱ります。いい歳してそんなこともできないようでは、コアの業務の品質も信頼できないからです。
この「叱る」は、仕事のフローでいうと、前工程か当日のドタバタの中でやります。「あなたはプロの仕事ができていない」と伝えるのが主眼です。

嵐が過ぎ去ってから助言する

そのうえで、バタバタが終わり、仕事が一段落した時間帯、嵐が過ぎ去ってから、反省会を開きます。その方がこちらも冷静に話ができます。
具体的には「今日、仕事がうまくいかなかったのはなぜか」「それをどうリカバリーしたか」「同じ失敗を繰り返さないためにどんな準備や心構えが必要か」を簡潔に伝える。補足するべきだった点や別の視点から「広げる」ようなアドバイスもします。
この時、大事なのは「こうすれば失敗は避けられるし、もっと良い仕事ができる」というポジティブな面にフォーカスして、「だからお前はダメなんだ」みたいなネガティブなメッセージは避けること。
大抵最後は「ま、そんな感じ。次回は健闘を祈る!」と笑って電話を切ります。
それでも相手はズーンと落ち込むか、「うるせーよ!」とか思ってるでしょうけどね(笑)
後者なら処置無しなので、以下略。

言うは易し……

と、何やら綺麗ごとだけ並べ立てたような気もしますが、新入社員の方にも、指導する側に回っている方にも、それなりに有効なんじゃないかなー、と思うので、共有してみました。

ま、「実際はどうなのよ」と言われれば、「こんなノート作った方が良いよ!」というアドバイスを聞き入れてくれた後輩はほぼ皆無で「新人の墓場」と言われるほど私は育成能力がないし、どんなに反省会をやっても手ごたえはあまりないんですけどね……。

悲しいけど、これ、現実なのよね……。

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