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医者に「あしらわれる」リスクと、娘を救ってくれたお医者さんの話

昨夜、寝る前にツイッターのタイムラインに流れてきたある投稿を見てから、ある記憶が鮮明によみがえって、心がざわついている。
投稿はこちら。個人批判する気はないのでアカウントは塗りつぶした。

投稿者は医師なのだろう。5000リツイートを超え、コメントの反応は「美談」ととらえるものと、医師の怠慢を批判するものが入り混じる。

私の心をざわつかせているのは、「あしらう」という動詞だ。
「あしらって帰そうとした」
短文しか投稿できないからこそ、これが「平常運転」なのだという事実がにじむ。それは、この投稿者個人に限ったことではないだろう。

だが、この投稿で取り上げられている赤ちゃんのように、「あしらう」ことで失われる命がある。危険にさらされる命がある。

私の娘も、そうだった。
以下は2010年3月に、内輪の掲示板に投稿した文章だ。今、6年生の三女は未就学児だった。

誰かに話さないと寝られそうもなくて。
ちょっとこの場をお借りします。

日曜深夜から、3歳の三女が緊急入院しました。
診断は敗血症。
血液が肺炎球菌に侵され、一時は41度まで熱が上がって意識も混濁する危険な状態に。
早めに抗生剤を入れられたのが奏効し、今はもう平熱まで戻って快方に向かっています。

もう少し対応が遅れていたら、最悪の事態も十分ありえたかと思うと、背筋が凍ります。
昼間に痙攣と意識障害で救急車を呼んだ際は「風邪。熱譫妄」という見立てで帰され。
夜になって再び症状が悪化して、夜間診療所に駆け込み、そこから墨東病院にまわされ。
ここでも「たぶん風邪」。担当医が「でも、念のため」と血液検査をしてくれて。
白血球の急増などが判明して、即入院、抗生剤投与という流れになり。
その後の詳しい検査で敗血症と判明。

もし、「連休明けまで」と様子見していたら(そのつもりだった)。
もし、自宅でショックになっていたら(ショックになると五分五分で失命、らしい)。
もし、夜間診療所の担当医が異常に気づいてくれなかったら。
もし、転送先の墨東病院で「念のため」の検査を見送っていたら。
もし、髄膜炎や心臓などの臓器不全になっていたら。
もし、解熱剤で高熱を押さえ込んで、異常に気づかなかったら。
もし、痙攣止めの薬の分量を間違えていなかったら
(投与量を1歳児向けと勘違いしていたため、痙攣が押さえ込めなかったらしい。
結果的に、痙攣があったからこそ、親があわてて対応したから助かった)

いくつもの「もし」が頭をよぎって、胃が痛い。
人生なんて、闇夜に、足元にぽっかりと穴がたくさんあいた道を歩くようなもんですね。
今回も、特大の穴に落っこちそうなところを、ギリギリで救われました。

MVPは、江戸川区の夜間診療所の、ねずみ男みたいな先生。
「痙攣の様子は?手の向きは?目は?足は?何分で、何回あったの?」
「奥さんとだんなさん、言ってること違うよ。はっきりして」
とパニック気味の父母を粘着質に問い詰め。
40度オーバーでふらふらの三女を「はい、立って」と強引にたたせ。
見かねて手を貸そうとする父を「ちょっと待って」と制止し。
熱でつらそうなのに、寝かせた三女の延髄にチョップを連発し。
そのうえ、「で、幼稚園では何組さん?」と聞きまくり(未就園児だっつの)
診察中は、正直、「こいつ、絶対、変!」とむかついてました。
でも、終わったとたん、
「髄膜炎の疑いがあります。紹介状を書きますから、すぐに検査を」
と速攻で墨東病院に電話をかけてくれて。
「念のため」の検査は、この先生の強い意見だったから、やってくれた感が強い。

本当に、本当に、ありがとうございます。

カッパ禿げで無精ひげのきたない兄ちゃんだったけど。
百万回キスして抱きしめてやりたいぜ。

向こう2週間は入院確定。奥さんと交代で泊まりこみ。
長女と次女は、春休みなのを幸い、名古屋に輸出します(笑)
子供ベッドで添い寝は、腰は痛いし、異動のバタバタと重なってなかなか厳しい。

でも、DVDでラピュタをみて、三女が笑っているのを見ると。
(ポータブルプレーヤーとジブリのDVD、買い揃えましたよ…)
もう、健康なだけで、奇跡みたいにありがたいもんだなと。
今のところ経過は順調。
このまま無事、快復するのを強く信じ、祈ります。

また、ご報告します。長文失礼。

三女は、2人の医師には「あしらわれて」、でも、たった1人の医師に「あしらわれなかった」おかげで、助かった。今は、後遺症も全くなく、超元気。

医師にとって、子供の発熱などそれこそ日常茶飯事だし、ツイッターの投稿者や三女がかかった医師たちが、特に怠慢なわけでもないだろう。
それに、日本の救急医療はオペレーション的に破綻状態にある。
昔、製薬会社の知り合いに「夜間に、本当に危ないな、というときは救急車を呼ぶな。ちゃんとした医者を紹介するから自分に電話しろ」と真顔で忠告されたことがあった。

私たちはいつも、医師に「あしらわれる」リスクにさらされている。
そして、そうではない医師に救われることもある。
三女が「ねずみ男」先生に診てもらえて、助かったのは、たまたま運が良かっただけだったと思う。
ほんと「奇跡みたいにありがたいもんだ」と、夜中にツイッターの投稿を読んだあと、隣で爆睡している三女を見て、改めて思った。
ちなみに昨日、キャンプみたいなのから帰ってきてクタクタになったようで、就寝して12時間ぐらいたった今も、まだ寝ている(笑)

と思ったら、このあと、お父さんの出社の気配に気付いて、お見送りしてくれました(笑)

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