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#42 日常を奪う人質司法

勾留理由開示公判で、裁判官がいかに頼りないものなのかを実感しました。
そして、勾留取消請求は却下され、さらに10日間の勾留延長が決定しました。

弁護団は、私を一日でも早く不当な勾留から解放するために、できる手段全てに着手。
それぞれの手続きごとに新たな書類が作成され、提出前には必ずアクリル板越しに確認してサインをしました。

しかし、その努力も空しく、すべての手続きが却下されました。いわゆる"日本の人質司法"の大きな問題を身をもって経験することになりました。

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毎日の取調べと、美濃加茂市での徹底的な捜査が行われている中、弁護団は私を解放するために可能な限りの手を打ち続けていました。

一般的には、逮捕、勾留、起訴、裁判と手続きは進んでいきますが、不当逮捕に従うつもりはありません。ただ指をくわえて、いつまでも市長不在の状況を待っているわけにはいきませんでした。

裁判で有罪判決を受けるまでは、何人たりとも罪を犯していない人として扱う"推定無罪の原則"は基本原則です。しかし現実はそれとは程遠い。その一因に"人質司法"と呼ばれる問題があります。

【人質司法】
警察に一度逮捕されたら、軽い罪であっても、犯行を否認する限りは、釈放もされず、保釈もされないという司法制度の問題を指しています。

勾留中は、取調べ、留置場の生活環境など辛いことばかりです。その中でも特に辛いことは、日常生活に戻れない状況になることです。
一般的な社会生活を送っている場合、仕事や家庭などの様々なことから数日から数十日切り離されます。社会的立場や、経済的な損失もあるでしょう。

しかし、逮捕勾留後に起訴されなかったとしても、失われたものが補償されることは滅多にありません。罪を犯したならまだしも、疑われただけで働けたはずの時間も、大切な人とのかけがえのない時間も、奪われたまま返ってきません。

市長職の私が勾留されることで、どれほどの影響が出るのか刑事はよくわかっていたようで、

「とりあえず認めれば、すぐに帰れる。そうすれば、市民に説明することができる。後から裁判で、もう一回争えば良いじゃないですか」
取調べ中何度も同じことを言われました。
勾留から早く逃れるために無実の罪を認めてしまう人が多くいると聞きます。ただ、勾留中に一度認めたことは大きな証拠になってしまい、覆すことは非常に難しい。

日常生活を奪うことで無実の罪を認めさせてしまう人質司法の在り方が変わらない限り、冤罪事件は増え続けるでしょう。

事件前は特に意識したこともなかったことでしたが、有名な事件の勾留日数を接見時に弁護士から聞かされることがありました。
厚労省の元局長・村木厚子さんは、不当逮捕をされながら無罪の主張を続けたことで164日間も勾留されました。
他人事とは思えない、ぞっとする内容でした。

そんな不当な勾留を止めるためにも、弁護団はできる法的手続きを徹底して行いました。
<以下、時系列で表記>

6/24 逮捕
6/26 検察官が勾留請求、裁判所が勾留決定
6/27 勾留決定に対する準抗告、同抗告棄却
7/3 勾留取消請求
7/4 勾留理由開示公判、勾留取消請求却下決定、同決定に対する準抗告、勾留期間延長決定
7/5 勾留期間延長に対する準抗告、勾留取消請求却下決定に対する準抗告棄却
7/8 勾留取消請求却下決定に対する特別抗告(15038名の署名添付)
7/11 勾留取消請求却下決定に対する特別抗告棄却
【特別抗告】
刑事訴訟法によって不服を申し立てることが出来ない決定・命令に対して、憲法解釈の誤りや憲法違反を理由に、最高裁判所に判断を求める抗告のことをいいます。

このような無茶な逮捕や勾留を行う捜査機関は大きな問題ですが、本来、中立機関であるはずの裁判所が公正な判断をできないことが問題です。

立法の国会議員、行政の総理大臣が批判されるように、司法を担う裁判官も批判されるべきです。批判がすべて正しいというわけではないですが、少なくともその決定について検証される場はあってしかるべきでしょう。

情報発信が様々な方法で容易に可能な時代において、いつまでも閉ざされた部屋で"人を裁く"という非常に重要な判断が行われていることは、あまりにも時代遅れで、常識とかけ離れているのではないでしょうか。

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