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『少年の詩』

記憶のある中で僕が初めて聴いたブルーハーツの曲は『少年の詩』だ。あれは大体5歳くらいだったと思う。母ちゃんっ子の僕は、当時はあまり好きでなかった父の車内でその詩を聴いたのだ。「そしてナイフを持って立ってた」のフレーズが、幼い僕の脳内を支配した。父はその強烈なフレーズを連呼する僕を止めなかった。今思えば、息子に自分の血と魂が流れている事を実感し、嬉しかったのだろうと思う。だが無理矢理、ブルーハーツの他の曲を聞かせるような事はしなかった。そのため、当時の僕にとっては、他アーティストとのミックスプレイリストで流れる【男の人が歌う曲】の1つに過ぎなかった。それから数年経つと、自然と父の車内でブルーハーツが流れることは無くなった。それからはGReeeeNやゆずなどの同年代に人気のアーティストの曲を聴くようになり、僕の中のブルーハーツの存在は薄まった。

☆余談だが、父はバンドブームど真ん中世代でロック(特にモッズ)をこよなく愛し、自室には3千枚は超えるであろうレコードやCDのコレクションがある。

時は流れ、平凡な高1の夏。テレビ番組から流れる『リンダ リンダ』。リンダリンダはテレビ番組でよく取り上げられる。普段通りのことの筈だったが、その日の僕には電撃が走った。「ナイフを持って立ってたの人だ!」と。何故それまで気付かなかったのかは分からないが、そんなことはどうでもいい。幸運な事に、僕の右手には“文明の利器”スマートフォンがある。急いでYouTubeで「ナイフをた持って立ってた」と検索。即ヒット。視聴。感涙。その勢いのまま、父にブルーハーツのCDを引っ張り出すよう頼み、1stアルバム『THE BLUE HEARTS』の6曲目を再生。実家に居たのに実家にか帰ってきたような安心感。これだ。これを聞くために生きていたんだとか感じた。それから僕は1曲目『未来は僕等の手の中』を再生する。