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第20話. 「デザインのむきだし展」最終日。悟る。(青春電波小説「デザインのむきだし」)

 アテンション! こんばんは、永井弘人(アトオシ)です。さて、今回は“15〜18キン”ですぞ! でも、フーターズ並みに健康的、かつ、前向きなエロさだから、ちょっとのぞいてみるのもアリだろうに。

 さて、みなさんは後悔ないように日々を過ごしてますか?

 再度、自分に生まれた場合、同じレベルの踏ん張りをかますだろうか?

 もうちょっと、やっとけば……なんて、思わないだろうか?

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 反復。繰り返す。重ねるごとに、徐々に能力は高まる。直実に。

 たまぁに休みつつ、時にはダメになりつつ、そのバネ生かして、イキイキと。ビヨンビヨンと気持ちの反動で、飛び跳ねていこうじゃあないか。

 なにいってんだ、ぼかぁ。深夜でねむい中での発言、たまぁにはいいじゃない。そんでもって、「なにいってんだ」の続きは、本編で!

 ……ん〜、ウェルカム!!

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「あらすじ・コンセプト・目次」はコチラ
「第19話. 『デザインのむきだし展』中日。複雑な来訪者。」はコチラ

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 「デザインのむきだし展」、最終日。まだオープン間もないけど、初日、2日目と比較にならないほど、すんごい来場者だ。僕は、対応に追われつつ、嬉しい悲鳴をあげる。

 おなじみ、佐川・高橋コンビがはいってきた。

「おっひょ〜、すごい人だね! ここは、渋矢のスクランブル交差点かってーの!」
「そうだな、秋歯原の歩行者天国を思い出す」
「わかるわかる! 共感の嵐!」
「行き交う人とすれ違うタイミングで、ハイタッチすべきだNA!」
「どさくさにまぎれてのパイタッチはNG!」
「当然だ。よし、痴漢撲滅を呼びかけよう」
「りょ。痴漢、はんたーい!」
「AVの痴漢もの、さんせーい!」
「息抜き、ひつよーう!」
「心の、おあしーす!」
「身体の、ぽーしょん!」
「魔法の、あいらーんど!」
「出会いの、すくーつ!」
「語呂が、よろしくなーい!」
「ツッコミが、おそーい!」

 面白いので、敢えて放置。しばらく眺めていたけど、会場内が別の意味でザワザワしてきた。とめるか。

「……おうおう、二人とも来てくれて、ありがとうな。クライアントとしても協力してくれて、本当にありがとう。ただ、あんまおっきい声だすと、みんなビックリしちゃうから……」
「すまん、すまん。ビックリマンコーヒーライター。着火!」
「おいおい、ここは火気厳禁だぜ」
「だ・い・じょ・う・ぶ! 燃やすのは、心の火!」
「垂らすのは、蝋燭の火!」
「いや、垂らすのは蝋燭の蝋でしょ」
「そうだった、女王さまぁ〜!」

 いつものノリ、いつものテンション。異常なのに、ほっとする。僕も異常か。佐川が切り出す。

「ところで、Twitter、スゴイことになってるね。『デザインのむきだし展』、めちゃくちゃ話題になってるよん。バズりまくり! “思いっきり振った直後の強炭酸飲料”を思い出すレベルやん!」
「それ、“水分たくさん取った後の潮吹き”も追加しといてくれ。あ、クジラの方な。ギリギリ、セーフ!」
「……えっ?」
「……なに? お前、自分のことなのに。この展示がバズってるの、知らないのか?」

 佐川がTwitter画面を見せてくれた。昨晩見た、樺島の感想ツイート。リツイート数がすごいことになっている。万越えだ。ネット上の著名人がコメント付きリツイートしてくれたおかげもあって、とんでもない速さで拡散されたようだ。

「バズりの種は、この樺島くん? インフルエンサー的なイケメン? チミの知り合いかね。カッコいいね。感謝しなくちゃねぇ〜」
「そうだな。ここまで深い感想、そして、影響を広げてくれる人物ってのはなかなかいないぞ。貴重な存在だな。感謝しなくちゃな」
「うん、まぁ、そうだね……」

 くされ縁である二人から、感謝の推奨。苛立ち、嫉妬感情からの上書きの上書き。むむむ……くそぅ。感謝だ。本当に、感謝。ありがたい……。

「あぁーーーーーっ!!」

 振り返ると。以前、僕らが秋歯原で出禁をくらった、メイド喫茶のメイドさんたちが立っていた。二人。

 一人は、「デビルズマウンテンパフェ」をつくっていた紫髪メイド。一人は、「デビルズマウンテンパフェ」を運んできたピンク髪メイド。今日は私服らしい。二人とも、ふりふりな格好をしている。かわいい。

 紫髪が高橋を指さす。

「あなた! 私がつくった『デビルズマウンテンパフェ』を完食した男ね」
「あぁ、そうだ。俺だ。なにか、用か?」
「用も何も、私の中に宿る『悪魔』を食べたんでしょ? 責任取りなさい!」
「……ふふ、あぶない女だ。……ひょっとして、お前そのものが『悪魔』だろ?

 そう言うと、高橋は紫髪に近づき、ガッとワンピースの下から手を入れた。

「……ちょっ、何してんのよ!!」
「ふん、これはなんだ?……」

 ブチッ!! すごい音がした。と思ったら、高橋の手には、黒い尻尾が握られている。ちぎれた尻尾。先っちょが矢印になっている。どっかで見たことあるような、ないような、悪魔の尻尾。

 ちぎられても、まだウネウネ動いている。とても生命力を感じる、悪魔の尻尾。

「……やはり、『悪魔』だったか」
「お、お姉さま!!」

 倒れかけた紫髪をピンク髪が支える。

「お姉さま! しっかり!!」
「……いいのよ……こんな素敵な会場に……バイブ突っ込みながら来場した、私の性癖が悪いの…………

 佐川が興奮して吠える。

「やっぱり『悪魔』じゃん! でも、二人とも背がちゃっちゃいね! ってことは、『小悪魔』か! 『悪魔』はワルい奴、『小悪魔』はエロい奴! ウェルカム! ソゥハッピー!!」
「ちょっと! お姉さまは、“エロい奴”なんかじゃないわ! “超”がつく、“ド変態”よ! そこらのエロボーイ&イヤラシガールと一緒にしないで!」
「“超”がつく、“ド変態”!? ぬぅわぁにぃ〜、ボクチンも負けてられん! 高橋大佐、その手に持っているウネウネコケシを、ワタクシの菊門にGOできますでしょうか?
「お前、大丈夫か? これ、けっこう太いぞ? あと、釣り針みたいな形してるから、一度入れたら、簡単に後戻りはできないぞ」
「バッキャロー! セーブ不要で、迷宮ダンジョンに入る心構えはいつだってできてんだ!」
「や、やめて! お姉さまのバイブは、私との共用なの! 大事な想い出が、たくさんつまってるの! 汚さないで!!」
「あなた、そんなに大事に思ってくれてたなんて……ごめんね、“双頭”だったら、こんなことにならなかった……かも…………」
「お姉さま! 傷口が開くから、しゃべっちゃダメ! 下の口でしゃべって! いつものように!!
「佐川、じゃあいくぞ〜」
「バッチコ〜イ!」
「この人たち、私たちの話、まったく聞いてない!!」

 この変態どもが落ち着くよう、僕は訴えた。

「……あのぉ、あなた方4人、とても気が合いそうなんで……どうか一緒のグループになって、お静かに、ごゆっくりご覧くださいまし……」
「そうしよう! そうしよう!!」
「ふん、そうするか」
「お姉さま!」
「バイブ……」

 注意を受けた、佐川・高橋・紫髪メイド・ピンク髪メイド。4人は仲良く、行儀良く、パネルを見始めた。ほっ。警察を呼ばれかねなかった……。

 それにしても、さっきまで五月蠅さがウソのようだ。行動のコントラストがすごい……。“究極の変態”ってのは、“究極の真面目さ”を兼ね揃えているのかもしれない。

「ピンク髪? 紫髪? いろんな髪がいるけど、“カミ”って言ったら、“神”様でしょ!」

 振り向く。多真川であった、勧誘おばさんだ。あの時とちがって、緑髪で競泳水着を着ている。そして、胸元には大きな鈴。

「久しぶりね! あなたから、デ・ジ・キャロット様のキ○ガイ勧誘を受けて、はじめはドン引きしてたんだけど……あの後、気になって調べたら……ドハマりしたの! 今じゃ、私自身がデ・ジ・キャロット様!」

 おばさんは手鏡を出して、自分の顔を見る。

「あっ、デ・ジ・キャロット様!」

 手鏡をしまう。

「あれ? デ・ジ・キャロット様はどこ? デ・ジ・キャロット様〜!!」

 手鏡を見る。

「ああっ、デ・ジ・キャロット様! どこ行かれてたのですか! 心配したんですよ!!」

 手鏡をしまう。

「あっ、またいなくなった! デ・ジ・キャロット様ぁ〜!!」

 再び、手鏡を見ようとしたおばさん。僕は、その手をとめた。

「ちがう。全然ちがう。デ・ジ・キャロット様になりきろうとする心構えは褒めてやる。しかし、語尾に“にょう”が着いてない時点で失格。ゲェイマァズ行って、一から勉強してこい!!」
「すっ、すいませんにょう!!」
「そうだよ、それ。いい感じだ」

 おとなしくなったおばさんは、作品を見始める。独り言をブツブツつぶやきながら、真面目に見てくれている。これで、一安心……。

「キュ〜〜〜!!!」
「炊き出しはここか?」

 多真川のホー○レス俳優、水谷さんが頭に多真ちゃんをのせながら来場。

「いい会場じゃない! 惚れないけど、惚れそう……あ、本気になっちゃ、ダメよ」
「『デザイン』と向き合う時間自体が、『デザイン』そのものだからな!」

 デザイン東京専門学校の辻先生と中井先生も来てくれた。

「はいっ、差し入れの“E缶”! またの名は、“固形ブドウ糖”!」
「……人がたくさん…………大人気……良かったね……」

 クライアントの千夏、優美。

「いい男はいねぇかぁ〜! デートバイトのやり過ぎで、恋愛価値観が狂っちゃったよぉ〜! 1時間、8,000円に値上がりどぅえぇ〜す!!」

 イラストを描いてくれた、あかり……。こんなキャラだったっけか……。

「おぉ、ミスター・コッペパン! キミィ、探したよ! コロス! 笑」
「オーナー! うちの店、持ち込み解禁になったじゃないですか! もう許してあげましょうよ!」

 カフェ・ベローチャ、オーナーと黒髪ロングのバイトさん。

「いい『書』になったな。元の良さが生きつつ、デザインとして昇格している。俺も、まだまだ勉強しないとな……」

 高橋の親父さん。

「15万円〜返済、待ってるよ〜その小指、いつまでもついていると思わないでよ〜冗談冗談、半分冗談! つまり、第一関節までは、いただき☆」

 ニッコニコファイナンスのおやっさん。

「うちの会場で、こんな感じのデザイン展やったのは“初”かもしんないね。来場者数もすっげぇ。……うん、わるくないね! いいじゃん、最高じゃん」

 本会場を貸してくれた、担当のお兄さん。

  *

 顔見知りだけじゃなく、本当にたくさんの人が来てくれた。 

 そろそろ終了時間が近づく。夜。突然、会場の空気がかわる。入口をみる。……ハッ。息を飲む。ナカヤマさんがいる。ナカヤマヒトシ。あの、「黒子のD」の“ナカヤマヒトシ”だ。

 驚きを隠せない。直接見るのは、東京メガサイトの講演以来。直接、話したことは一度もない。緊張する。今までにない緊張。ちゃんと挨拶せねば……。ナカヤマさんに近づく。

「……あ、あの……ナカヤマさんですよね? いっつも『黒子のD』での活動、ご活躍、拝見しています。ナカヤマさんの考え方、とてもリスペクトしています……!」
「はは、ありがとう。この展示のことが、Twitterでまわってきてね。たまたま、仕事で会場の近くにいて。面白そうだから、寄ってみたんだ。見せてもらうよ」

 か、樺島ぁ〜、くそぅ。ありがとう……。お前発信のツイート・リツイートは、ナカヤマさんまで届いていた……。

 僕は、ナカヤマさんを案内する。丁寧な案内は、何度も繰り返してきた。繰り返してきたことは、“ここぞ”という時に力が発揮され、評価されるものだ。

  *

 いそがしいのにも関わらず、1つ1つの作品、パネルを丁寧に見てくれる。文章も、しっかりと読んでくれている。緊張と歓喜。ドキドキ、とまらんち。

 見終えたナカヤマさん。声をかける。

「い、いかがだったでしょうか?」
「うん。なかなかよかったよ。デザインのクオリティはともかく、君は……」
「は、はい」
「『人とのつながりをデザイン』しているね」

 パッカァーーーーーン!! 脳天に落雷。僕の頭は割れた。

 割れた隙間から、パァーーーッと光が漏れ出す。漏れた光は、ミラーボールのようにくるくる回りながら、会場内を照らす。ガラス張りの入口を抜けて、外へ漏れる光。空に向かっていく光。パァーーーッ。くるくるくる。

 本当に、我武者羅に走ってきた。

 はじめは、加奈子に振り向いてもらう衝動から。しかし、その目的。ライバルである男、樺島と加奈子が付き合い出したことによって、ゴールを見失った。

 余裕で結果を出せる、と高を括っていた卒業制作。なんの成果も出なかった。就職先、内定は決まっていない。就職活動は置き去りのまま。

 それでも、「自主企画」を優先した。「デザインのむきだし展」で、「自分の頭の中にあるデザイン」を形にすべく、人に伝えるべく、走ってきた。

 結果、今。「進むべき道」が見えた。

 自分の進みたい道、なりたいデザイナー像とは、「クライアント規模が大きかったり、業界で名のある有名な場で活躍するんじゃなくて、『人とのつながりをデザイン』するデザイナー」なんだ。悟った。

 悟った僕の表情をみて、ナカヤマさんも何か感じたのかもしれない。じゃ、そろそろ、と言うナカヤマさんと名刺交換をした。

 こんな噂を聞いたことがある。ナカヤマさんは、1週間経って、「渡された名刺の相手を思い出せない場合」は、その名刺を捨てるらしい。「中途半端な記憶を残しておくことは、逆に相手に失礼」という考え。有名な話しだ。

  *

 3日間に渡った「デザインのむきだし展」、終了。

 撤収、搬出も箱森くんが手伝ってくれた。そんでもって、またもや、家まで送ってくれた。「話してる時間が楽しいしさ!」、そう言って去っていく。もう、感謝しつくせない……。本当に大好き!

 家のベッド。疲労のピーク。しかし。寝る前に。

 僕のことが記憶に残ったか定かじゃないけど。ナカヤマさんからいただいた「言葉」で「悟った」こと。

 そのすべてを、僕自身の「言葉」に起こし、御礼メールを送った。送り先は、もちろん、ナカヤマさん。ありがとうございます。

 眠りに落ちる直前。自然と、口角が上がり始めた自分。目はつぶっているけど、ほんの少し、明るさを感じた。光かな。わずかな光。でも、確実に存在する光。

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◎ 次の話、「第21話. ユーガットメール。」はコチラです。
「あらすじ・コンセプト・目次」はコチラをご覧ください。

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グラフィックデザイナー。グッドデザイン賞受賞。東京デザイナー学院講師。日本タイポ協会会員。YouTube→bit.ly/2KHHgo1 著書「デザイナーになる!MdN」→https://amzn.to/2USvPvi デザイン事例サイト→https://atooshi.com
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