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第19話. 「デザインのむきだし展」中日。複雑な来訪者。(青春電波小説「デザインのむきだし」)

 こんばんは、永井弘人(アトオシ)と申します。「試合」で負けても、「勝負」で勝つ! …そんな話しをします。

 本noteに訪れたみなさま。2003年、魔裟斗vs須藤元気、K-1 WORLD MAX。この試合をすでに見ていると思いますが……え? 見てない?? え?? 生まれてなかった方も!!?

 もしよかったら、動画検索して、ダイジェストでもいいんで見てみてください。

 どちらも強く、めちゃくちゃいい試合をするんですが、注目すべきは、須藤さんの“ファイトスタイル”。

 ネタバレになっちゃうけども、もう2003年の試合なんで、語っていいですよね? さきに試合動画を見たい方のため、すこし待ちますね!……

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 ……はい! 待ちました! ここから、試合ネタバレもふくむ、感想をのべます。

 「試合」には、魔裟斗さんが勝ちます。しかし、「“印象”に強く残った闘い方」をしたのは、どちらでしょうか? ……私の中では、須藤元気さんでした。

 もちろん、本気でどちらもいい試合をする。その上で、「記憶にこびりつく、真面目にトリッキーな“ファイトスタイル”」をかました、須藤さん。こいつぁ、やべぇ。

 と同時に。

 デザイン業界という荒波の中、「強い広告的な表現」とか「賞歴の数」とかで闘うと、圧倒的に強い方々がいるわけです。

 “その土俵”に上がって挑もうもんなら、バチコンと返り討ちにあう確率たかし。

 ならば、己が勝つ、かつ、“人の印象・記憶”にのこる、「闘い方・ファイトスタイル」。これをやろう。いや、やるべきだ。

 だから、この小説を書いたり、入門書を出版したり、芸の学校にいくのです。やってる本人は、楽しい。みている人たちは、盛り上がる。

 “一般的評価”という、既成概念に裏拳をかますのです。Oh, yeah.

 こんかいはー、そんなお話だよぉー!!!!!

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「あらすじ・コンセプト・目次」はコチラ
「第18話.  『デザインのむきだし展』初日。人と感情とリンクする。」はコチラ

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 「デザインのむきだし展」2日目。折り返しの日でもある。

 来場者は、昨日と同じく上々。丁寧に案内を続ける。疲れはあるが、爽やかな疲れだ。スポーツで汗をかく。デトックス。一瞬、一瞬、人との触れあいを大切にする。

 昼過ぎ。見慣れた二人が入ってきた。加奈子を連れた、樺島だ。

 僕の中で一気に血圧が上昇していくのがわかる。怒り、はちがうな。悔しさ、恥ずかしさ、惨めさ。絶対にそんなつもりはないんだろうけど、「ひょっとして、僕のことを馬鹿にしにきたんじゃないか」……そんなことさえ勘ぐってしまう。

 気まずさもある。けど、お客さんであることは変わらない。他のお客さんもいる。元気に振る舞う。気丈に。大丈夫、大丈夫。

「よっ、加奈子と樺島! お似合いカップル! ここはラブホじゃないぞ!」

 変な間をつくらないように、瞬時に僕から声をかけた。急なテンション接近に、すこしビクッとした加奈子。下を向きながら、

「ホント、ゴメン……樺島さんと付き合っているの、隠してて……言い出せなくて……」

 あやまんな。くそぉ……余計、惨めになってくるじゃんか。なんて、感情は表に出さず(もしかしたら、ちょいと漏れちゃってたかもしんないけど)、改めて、「デザインのむきだし展」の企画内容、順路を説明する。ごゆっくり、どうぞ。本心だよ。

 加奈子と樺島。はじめは、二人揃って作品を見ていた。

 2つ目のパネルから、ペースが徐々にバラバラになる。加奈子が先をゆく。意外なことに樺島はゆっくり、じっくり、作品を見ている。文章を読んでいる。真剣な樺島の目。これは、素直に嬉しい。

  *

 先に見終わった加奈子に声をかけた。

「どうだった?」
「……すごい、良かったよ。この感想が正しいかわかんないけど……こんなに『人』のことを考えているなんて、意外だった」
「意外?」
「だって、いつも学校じゃ『デザイン』のことしか考えていない感じだったし、『人』と接すること自体、避けてたじゃん……」
「……そっか…………」

 僕の頭の中では、「デザイン」と「人」は意味が重なる。

 「人」に向けた「デザイン」こそ、真の「デザイン」。

 だから、「人」と「デザイン」は切っても切れない関係。だけど、そんな考えを持っていること自体、近くにいた加奈子に全く伝わっていなかった。ちがう。「伝わっていなかった」じゃなくて、僕がちゃんと「伝えていなかった」んだ。

 「伝える」ことはむずかしい。

 皮肉にも、一番伝えたい相手に伝わっていなかった。がんばる気力をくれた、源の相手。加奈子。がんばる方向が間違っていた? いんや、そうじゃない。

 “後悔”なんてものは、いくらでも、“改善のきっかけ”に変えることができる。

 どのように変えるか、捉えるかは、自分次第だ。

  *

 気づくと、樺島も見終わっていた。声をかける。

「どうだった? “玉野美、最優秀賞をとった目線”の感想を聞きたい」
「……“大日本デザインフィールドに内定もらった目線”も追加してくれ」
「自分でいうなよ……で?」
「ん〜……いい展示だったよ。うん、いい展示だった。それじゃ」

 じっくり見てくれたのにも関わらず、感想の言葉は少なく、加奈子とそそくさと会場を去っていった。ちょっと残念だったけど、まぁ、デートの最中だ。次の予定もあるのだろう。

 引き続き、来場される方々と接する。豊かな時間。

  *

 その日の夜。僕は、Twitterで「デザインのむきだし展」をエゴサーチ。すると。あれだけリアクションの薄かった樺島が、長文感想をツイートしていた。

「今日、『デザインのむきだし展』を見てきた。正直、いい展示だった。俺は美大に通う4年間、“カッコ良さやキレイさ”といった『強い表現』を、誰よりも突き詰めてきた。だからこそ、卒業制作で最優秀賞を取った」
「だけど、彼の展示は『表現』よりも、『人』の『らしさ・あり方』を形にしていた」
「メインで『ロゴ』が展示されていたけど、『デザイン表現』の『完成度・クオリティ』において、俺は負けていない。しかし、『デザインを人に、世の中に“伝える”』という点では、俺は負けているかもしれない」
「わかりやすい結果。賞を取ったり、いい会社から内定をもらったり。その点、『試合』には勝った。しかし、『勝負』には負けた? 悔しいけど、素直にそう感じる。もう一度。『デザインのむきだし展』、いい展示です。みなさんもぜひ」

 そして、その感想ツイートを、加奈子がすべてリツイートしてくれていた。二人に負の感情を抱えている僕。恥ずかしくなって、画面を閉じた。

 会場内では言ってこなかった樺島の感想。その時は色々と思うことがあったのだろう。考えを整理してから、ロジック的にしっかり伝える。樺島らしいか。

 加奈子を取られ(はじめからお前のもんじゃない!)、心底「嫉妬」を感じる、非常に複雑な相手。これも「感情」だ。

 ただ、さっきの感想は「嬉しい」。こんがらがって交差する「感情」。純情。慕情。

 ……いかん。「デザインのむきだし展」は、まだ明日もある。最終日だ。深い考えごとは、展示終了後もできる。早く寝よう。スマホを伏せる。

 そして、僕は目を閉じた。

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◎ 次の話、「第20話. 『デザインのむきだし展』最終日。悟る。」はコチラです。
「あらすじ・コンセプト・目次」はコチラをご覧ください。

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アトオシ(永井弘人)デザイナー

グラフィックデザイナー。グッドデザイン賞受賞。東京デザイナー学院講師。日本タイポ協会会員。YouTube→bit.ly/2KHHgo1 著書「デザイナーになる!MdN」→https://amzn.to/2USvPvi デザイン事例サイト→https://atooshi.com

◎ 青春電波小説「デザインのむきだし」

【 *完結 】「勉強ダメ。運動ダメ。女の子にはモテない。……でも、“ものづくり” だけは好きだった」。デザインを学び、掴み取りにいく、専門学生のお話。デザインとは? 夢とは? 四苦八苦の先に何が見えるのか!!
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