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いつから区分所有者か


時期が気になる理由

 共用廊下の電灯を点けたり、エレベーターを動かしたら、電気代がかかります。建物等の掃除をする人にも費用を支払わなければなりません。ALSOKにも毎月支払いが発生します。区分所有者が一人であっても毎月の支払は発生しますので、お金がなければ、マンションを維持・運営できません。そのため、区分所有者の皆さんには管理費等の支払が義務付けられています。
 支払い義務は、管理組合が作られている場合には管理規約で定められています(管理規約第25条1項)。一方、新築時には、どのマンションでも管理組合を設立していませんので、マンション売買時に重要事項説明書等で買手に管理費等の支払額とともに支払義務があることを伝えていますので、管理組合の設立の有無によらず、区分所有者になった時点から管理費等を支払わなければなりません。
 世の中には、裁判例を誤認して、自分に都合がいい主張をすることで混乱させ、管理費の滞納期間を時効まで伸ばそうとしていると思われる理事長がいます。その理事長の主張はこのようなものです。マンションの竣工から管理組合が作られるまでの間は、管理規約がなく管理費等の額が管理規約に示されていないので、管理費を支払う義務はない、という主張です。明らかに裁判例の読み方を間違えています。特別な免除規定がない限り区分所有者になった時点から管理費等を支払う義務を負っています。
 なお、管理組合は管理費等を徴収しなければなりません(管理規約第60条1項)。理事は業務を委任されていますので、理事が徴収することになります。

(管理費等)
第25条
 区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなければならない
一 管理費
二 修繕積立金

B管理組合法人規約

(管理費等の徴収)
第60条 管理組合は、第25条に定める管理費等及び第29条に定める使用料について、組合員が各自開設する預金口座から自動振替の方法により第62条に定める口座に受け入れることとし、当月分は前月20日までに一括して徴収する。ただし、臨時に要する費用として特別に徴収する場合には、別に定めるところによる。

B管理組合法人規約

区分所有者と認知される時期

 では、いつ区分所有者になり、管理費等の支払義務が発生するのでしょうか。弁護士法人タウン&シティ法律事務所 代表弁護士 鈴木軌士氏によれば、東京地裁の判決に基づいて「各専有部分について区分所有である旨の登記がなされた場合」に区分所有関係が成立します。登記簿を見れば区分所有者になった日が分かることになります。

4 区分所有関係の成立・消滅の原因と時期
(1)成立時期
一棟の建物の内部に構造上、利用上の独立性を有する建物の部分が存在するという客観的状況に加え、当事者が当該建物部分を区分所有権の目的とするという特別の意思が必要とされている。(東京地裁昭和51年5月13日、横浜地裁昭和55年12月17日によれば、それは各専有部分について区分所有である旨の登記がなされた場合。未登記の場合には、一棟の建物を数人で当初から各自の取得部分を定めて建設した場合。)

事例としては、先に区分所有である旨が確認され(公正証書)、事後的に建物が完成した場合。→公正証書作成時点で区分所有関係が成立したとされたものもある(福岡地裁小倉支店平成6年10月21日)。

同一所有者が一棟の建物全住戸を一人で所有しているに過ぎない段階であっても、各専有部分を分譲して販売する広告を行ったり、区分所有建物として建物の表示登記を申請したりした場合には、区分して所有する意思が客観的に明確になったといえて、区分所有権が成立する

マンションの権利関係と管理, 弁護士法人タウン&シティ法律事務所, 代表弁護士 鈴木軌士

まとめ

  • 管理費等の支払義務は、区分所有者になった時に発生する。

  • 区分所有である旨の登記がなされた場合に区分所有権が成立する。

  • 建物の全住戸を一人で所有している場合でも、区分所有することが明確であれば、区分所有権が成立する。

  • 管理組合(理事)は管理費等を徴収する義務を負う。

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