【医師直伝】インフルエンザの新薬『ゾフルーザ』!!【3分で超解説】

(2019年3月15日改変済み)


こんにちは森田です。


今シーズン(2018-2019)もインフルエンザの季節がやってまいりました。


ま、皆様におかれましては、いつもどおりで特に変わったこともなく、普通に「インフルエンザワクチン」も受けていただいておりますこと感謝申し上げます。

あ、「変わりなく」という点に置きましては、今年のインフルエンザ周辺状況は一点変化がありますね。それが表題の新薬「ゾフルーザ」です。本日は、これについて、超簡単に3分で分る解説をしたいと思います。



◎新薬「ゾフルーザ」の基礎知識。「何が新しいの?」


「何が新しいの?」これは、重要なところ。

薬を飲む患者さんにとってもっとも新しい点、それは、



「一回飲めば治療終了!」



これに尽きるでしょう。

これまでの薬は、1日2回☓5日間=計10回のタミフル(内服)リレンザ(吸入)。あと、唯一「イナビル」は一回のみで終了できたのですが、こちらもリレンザと同じく「吸入薬」で、粉末を気道・肺に吸い込む形式の薬。やはり小さな子供とか高齢者には使いにくい感じでした。その点、今回の新薬は、


「一回のみ、しかも内服」


なので、患者さんには大きな利便性向上となるでしょう。



◎ゾフルーザの作用機序

 薬の作用機序なんてたいして興味ないと思いますので、飛ばしたいところですが、一応簡単に。

 これまでの薬(タミフル・リレンザ・イナビル)は、インフルエンザウイルスが体内の細胞内に入り、細胞の中で増殖したあと、その細胞外に出ていくところをブロックしていたんですね。でも、今度の新薬「ゾフルーザ」は、その細胞内での増殖自体をブロックしてくれるとのこと。なので、その効果として以下が挙げられます。【新薬を開発したシオノギさんが強調するのは、ここ!】



  ウイルス検出期間が短縮される!



と言う効果です。


つまり、増殖自体をブロックしてくれるので、インフルエンザにかかってもウイルスが早く体内からいなくなってくれる効果がある。ということですね。これまでのタミフルよりだいぶ短縮されたと報告されています。(ウイルス検出期間中央値はゾフルーザが約24時間、タミフルが約72時間、偽薬で約96時間)


これは凄い!


と拍手したいところですが、意外にそうでもないというデータも。

実は、



  症状が改善するまでの時間はタミフルと大差ない。

 (偽薬と比較すると24時間程度短縮=タミフルと同じくらい)


らしいです。



じゃ、意味ないじゃん!



と言う声も聞こえてきそうですね。ごもっともです。


ウイルスが早く体内から消えてくれることも大事ですが、患者さんにとってもっと大事なのは早くつらい症状がなくなることですから。


そういう意味では、効果は限定的なのかもしれません。


インフルエンザのつらい症状の代表格は、頭痛・発熱(またそれらによる倦怠感・食欲不振)などですが、これらの症状は解熱剤で抑えることが出来ます。解熱剤で楽になると食欲も出て回復も早いかもしれません(ただし、熱がある方が回復も早いとも言われています)。インフルエンザのときに病院でもらう解熱剤の代表格はアセトアミノフェンですが、これは市販薬でも買えます。(詳細は末尾)
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◎「ゾフルーザ」のデメリット


そう、もちろんデメリットもあります。大体この3つくらいでしょうか。


  1. 価格が高い


 どれくらいかと申しますと、1回の治療あたり



■ ゾフルーザ

(1回内服で終了。約4800円 3割負担で約1500円)



ちなみにこれまでの薬はこれくらい。

■イナビル

(1回吸入で終了。約4300円 3割負担で約1300円)

■リレンザ

(1日2回5日間、全10回吸入。約3000円 3割負担で約900円)

■タミフル

(1日2回5日間、全10回内服。約2700円 3割負担で約800円)

【タミフル(オセルタミビル)は今季からジェネリック医薬品も発売されていまして、こちらは上記の半額(自己負担400円)程度になるようです。】



 ちなみに以上は薬代だけのなので、実際の窓口での支払いには診療代・検査代などがプラスされます。




  2.ウイルスの変異


 細菌に対する抗生剤でもそうなのですが、ウイルスは薬(抗ウイルス剤)に対して抵抗力を獲得することがよくあります。これはタミフルでもそうで、いわゆる「タミフル耐性ウイルス(タミフルが効かないインフルエンザウイルス)」が問題となっています。新薬ゾフルーザでも同様のようです。報告によると、


ソフルーザを飲んだ人の約1割(小児では2割以上)でウイルスに遺伝子変異が生じるとのこと。


で、そうなったばあい、当然といえば当然ですが、ウイルス検出期間がむしろ延長し,症状が改善する期間も長引くようです。
…1〜2割となると結構高い確率ですね。

(2019年1月27日追記)
ウイルスの変異→治癒遷延、につきましては、すでに実例報告が国内でも出始めております。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/special/flu/topics/201901/559578.html

(2019年3月15日追記)
とうとう、ゾフルーザを使っていない患者さんからも「ゾフルーザ耐性ウイルス」が3例検出されました。ゾフルーザが世間に広く広まったので、同時に「耐性ウイルス」も広まってしまったと言うことでしょう。せっかくいい薬を開発したんですから、社会全体でよく考えて大事に使っていきたいですね。

ゾフルーザ未投与の患者から耐性ウイルス検出 (日経新聞/2019.3.14)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO4244983014032019000000/



  3.副作用が出揃っていない可能性がある

 新薬というのはなんでもそうなのですが、臨床試験(発売前のテスト段階)ではわからなかった副作用が新たに判明することが多々あります。

 タミフルでも「こどもの異常行動」などが発売後に騒がれました。

(異常行動については、そもそものインフルエンザの症状なのかタミフルのせいなのかはよくわからず、結果として今はタミフルの小児への投与制限は解除されています、ただし投与した場合の保護者への注意喚起は続いています)

 特に今回の新薬「ゾフルーザ」は、作用機序がこれまでの薬と違うので、副作用についても新しいものが今後判明する可能性は否定できないでしょう。

 また、副作用のことを考えると、1回で治療が終了するというメリットはデメリットにもなりえます。タミフルなら副作用が出た時点で内服を中止すれば薬は比較的早く体内からなくなりますが、ゾフルーザの場合1回で治療が終了する=つまり薬が長く体内にとどまり効果が持続するということで、その結果、副作用も長引いてしまう可能性も十分に考えられるからです。




で、結局どうなの?


 これまで見てきたメリット・デメリットを総合して考えると、一医師個人としての意見は


「患者さんからリクエストがあるとかの理由がない限り、今シーズンは処方することはあまりないかな〜」


と言うところです。

 ま、そもそもインフルエンザの場合、薬がどうこうというよりも、まず


◎ワクチンをうつ


 で、それでもインフルにかかってしまったら、


◎安静・休養・栄養


 が大事。

新薬も含めて、インフルエンザ薬の効果は「発熱などの症状を半日〜1日程度早く直してくれる」というくらいの限定的なものです。しかも使うだけ耐性ウイルスが増えるかも…。だったら、しっかりと休んだほうがいいのかな〜、とも思えますね。

 以上、インフルエンザの新薬「ゾフルーザ」についての3分解説でした。




【おまけ】 


インフルエンザのときの解熱剤はロキソニンなどのNSAIDsは使いにくく、 アセトアミノフェンという薬がよく使われます。特に小児の場合はアセトアミノフェン以外は副作用の危険があり使われません。

実はこれ、病院でわざわざ処方箋をもらわなくても薬局で買えます。
以下の3つの薬は、他の薬効成分は入っていない「アセトアミノフェン」単剤の市販薬です。薬剤師さんと相談しながら使うといいですね。(我が家でもよく使っています。)


病院で処方される場合、アセトアミノフェン300~500mg前後が一般的な大人の一回分です。


 ◎ノーシンAC

(1錠中アセトアミノフェン150mg、成人は1回で2錠)

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 ◎バファリンルナJ

(1錠中アセトアミノフェン100mg、成人は1回で3錠)

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 ◎小児用バファリンCⅡ(1錠中アセトアミノフェン33mg)

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ちなみに熱は高いほうがウイルスは早く死ぬので下げないほうがいい、というのもまた事実らしいのですが…でも、ご飯も食べられないとか、うなされるほど辛いとか、そういう場合はこうした解熱剤でつらい発熱を抑えながら、自分の中の免疫力の活躍を待つ。というのもまた一つの方法だと思います。



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あわせて読みたい




元論文 

Baloxavir Marboxil for Uncomplicated Influenza in Adults and Adolescents.
New England Journal of Medicine 2018; 379: 913-923
 ↓↓
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1716197



ぼくの本

財政破綻・病院閉鎖・高齢化率日本一...様々な苦難に遭遇した夕張市民の軌跡の物語、夕張市立診療所の院長時代のエピソード、様々な奇跡的データ、などを一冊の本にしております。
日本の明るい未来を考える上で多くの皆さんに知っておいてほしいことを凝縮しておりますので、是非お読みいただけますと幸いです。


著者:森田洋之のプロフィール↓↓

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夕張に育ててもらった医師・医療経済ジャーナリスト。元夕張市立診療所院長として財政破綻・病院閉鎖の前後の夕張を研究。医局所属経験無し。医療は貧富の差なく誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」である!が信念なので基本的に情報は無償提供します。(サポートは大歓迎!^^)

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