黄昏の向こう側

理解できないことはとりあえず考えない。
というのが紫苑の信条である。山のようにあるタスクをこなさなければならない時に優先順位の低い思考へとリソースを割くことは無駄だ。だから今もそうすることにした。"あの人が生きている"なんてことは考えない、目の前の対象をいち早く殺害するのだ。そう意気込みはしたが殺害は手早く済んだ。どういう訳だが知らないが対象は紫苑が来る前からアキレス腱を切られて動けなくされていた。作為的な何かを感じなくもないが、そんなことは考えない。この殺害はタスクからしたら氷山の一角。次の仕事をこなすのだ。

紫苑は十九歳の男だ。元々は名無しの捨て子でこの名は髪の色が由来だ。姉がいたが現在は音信不通となっている。
紫苑を拾ったのは玲音という女だ。有翼族の中でも珍しい西洋竜の片翼を持つ。それ以外に外見上の特徴はない。
二人は超格安ボロアパートに住んでいる。他の住人との仲は良好だ。

【続く】

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