不定の王
(本を手に取る)
(短冊状の紙に黒と青の顔料で紋章のようなものが描かれている。おそらく栞に使えということだろう)
最極の国。そこは他国からのあらゆる干渉を受け付けない国。外交は成立しておらず、故にその存在のみが語り継がれる国。
そんな御伽噺は終わりだ。
私は中央の国の者。とある事情でかの国に滞在していたことがある。あの七日間を忘れることはないだろう。だが私は只の人だ。いずれは寿命か病で命を失うが運命。
だから書き残す。
あの七日間を。刹那的でありながら永遠であった日々を。己の全てに疑念を抱くこととなった事件を。そしてもう二度と会えぬ友のことを。
私の記す真実が心あるものによって守られることを希う。そして正しき者によって読み解かれることを祈る。
遥かなる未来にこの書を読むであろう若人よ、どうか僅かばかりでも汝の力にならんことを願う。
(一枚分丁寧に破られた形跡がある)
一日目
【続く】
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