子どもの本のもつ力

清水真砂子 著
『子どもの本のもつ力』(大月書店)

『ゲド戦記』の翻訳や児童文学評論で知られる著者が選ぶ、60冊の「子どもの本」。

例え古くても、時代遅れでも、自分が読んで、手にした喜びを、誰かと分かち合いたい。

子どもが喜びそう、役に立ちそうだからと選んだ本は、ここには1冊もない。

ただの絵本ガイドではなく、著者自身の体験が盛り込まれたエッセイでもあり、「子どもの本」に関する思いこみやイメージを、見事にクリアにしてくれる。

1章の「かわいい」がとりこぼすもの、に深く共感。

その力を信じているからこその、強いメッセージが伝わってくる。

素晴らしいあとがきから一部抜粋。
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 世の中にはたしかに憎悪が渦巻き、不正義も多々ある。私自身だって、内には魑魅魍魎がうごめいていて、そうしたものと無縁だなんて、とうてい言いきれるものではありません。どうせと言ってしまえば楽になる場合のなんと多いことか。
 でも、そんなとき、はっと我に返らせ、光のほうを向かせてくれたのは、どんなにつらく、苦しく、絶望の淵に追いやられても、踏みとどまって、「どうせ」をこらえてくれた先人たちでした。気がつけば、世界のあちこちで人々は絶望的な悲惨を記録しながら、でも、こんな人もいるよ、と語りかけてくれています。そういう人々の言葉に私は幾度、自身の世界の狭さを思い知らされ、カッコいいニヒリズムから救い出されてきたことでしょう。
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