見出し画像

夕立(男性目線)

 雨は嫌いだ
頭は痛いし、気分が滅入る。
少し外に出ただけで服は濡れ、
寒くて風邪をひく。
僕はそんな雨が大嫌いだ。

 テレビでは連日、
猛暑を更新しましたと言う
ニュースが流れ、
少し外にいるだけで
汗で服がまとわりつくこの季節
僕の生活はずっと変わらず
家と会社の往復で
他に楽しみも何も無かった。

 外にいる時間は行き帰りの
バス停で
バスを待つ時だけ。
毎日同じ時間に乗る
バスを待ってる人も
代わり映えは無いが
話すどころか
挨拶すらしたことも無い。
特に話す必要性も感じなかったし、
それでいいと思う。
仲良くなったところで
どうせ他人だ。
この世界は他人に何も興味が無い。

 いつからだったか
バスを待つ人数が
一人増えた。
いつも白いワンピースで
黒髪のロングヘアー
歳は…多分僕より少し上かな?
清楚とゆう言葉が
ピッタリな女性だ

ある時帰りのバスも一緒になり
バス停から家まで帰っていると
前を歩くその人は
僕の住むマンションに
入っていった。
「今入ると確実にストーカーに
間違われるよな」
そう思っているとその人は
「どうぞ」と言って
エレベーターで扉を開け
待ってくれていた。
「何階ですか?」そう聞かれ
「5階です」と答えると
一つのボタンが光った
エレベーターは上を目指す。
そこから毎日
軽く会釈位はする関係が続いた。

 そこから時間は少し経ち
夏の猛暑も少し和らぎ、
夜は肌寒い日々が
顔を出してきた頃
帰りのバスを降りると
突然激しい雨が降ってきた
傘もないし
走ろうかと思っていると
「あの、この傘大きいんで
よかったら」
と声をかけられ
振り返るとあの人が軽く微笑み
こっちを見ていた。
ありがとうございます。
と傘を借り
話しながら家路を進む。
一つの傘で
一緒に帰る僕の右肩は
酷く濡れていた。

やはり雨は嫌いだ。
急に降るし
予報もあてにならない
雨は嫌いだ。
傘を持っていない時に
限って降る気がする
でも、濡れた右肩を隠しながら、
君と話して
一緒に帰れるこの雨は、
なんか好きだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?