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夕立(女性目線)

雨が好き
辛い事も洗い流してくれる気がする。
お気に入りの傘も、可愛い長靴も
この日は遠慮する事なく使える。
私はそんな雨が好き。

本格的な暑さが顔を出し始め
夏の訪れを感じるようになってきた

最後の荷物が蓋をされ
トラックに運ばれていく
私は今日大好きな地元を離れ
上京する。

大切な思い出や大事な人たちとの
記憶が頭を巡り、私はいつの間にか
涙を流していた。
雨が降る。涙を誤魔化すには
ちょうどいい雨が

慣れない土地での生活が始まり
新しい職場には
バスで向かうことになった。
毎日同じ時間だから
いつもの人たちだけど
お話しとかしないのかな?

仕事が終わり帰りのバスに
揺られていると
朝同じ時間に一緒に乗る
男の人が乗ってきた。
最寄りのバス停に到着し
家に帰る道のり
マンションまで後ろから
彼がついてくる
でもエレベーターには乗ってこない?
気を遣ってくれてるのかな。
「どうぞ」と声をかけると
彼は小さくお礼を言って乗ってきた。
何階かを訪ねてボタンを押し
一つのランプが光った
エレベーターは上を目指す。
そこから彼は、目が合うと
少し恥ずかしそうに
微笑みかけてくれるようになった。

少し暑さも和らぎ、朝晩は
肌寒い日が増えてきた頃
また彼と帰りのバスが一緒になった
バス停に着くと激しい雨が降ってきた。
あの様子じゃ彼は天気予報見てないな
私は思い切って声をかけた
彼はまた小さくお礼を言って
傘を手に取りさしてくれた。
ちゃんと気付いてるよ?
優しい彼の右肩が
ひどく濡れていることを

雨が好き
振り終わった後には
綺麗な虹が現れる。
雨が好き
辛い時は代わりに
泣いてくれてる気がする
そして濡れた右肩を一生懸命
隠しながら話してくれる彼の
隣で一緒に帰れるこの雨が
やっぱ大好き。

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