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氷川きよし『きよしこの夜Vol.22』に見る歌手としてのあり方

毎年行われている氷川きよしさんの『きよしこの夜』
ファンにとっては恒例の年末行事ですが、今年は大きな意味を持つコンサートだったと思います。
今年の初頭に発表された「無期限活動休止」
この最後の最後のラストコンサートである14日夜の部を拝見してきました。
私が氷川さんの記事を初めて書いたのは、まだ音楽評論家になる前の2019年でした。NHK『うたコン』で初めて彼の『限界突破✖️サバイバー』を拝見し、どうしても書きたい、と思ったからです。
今は、音楽評論家としてさまざまな人を書いていますが、その頃はまだ私は単に趣味で書いているだけのブロガーで、本当に自分が「書きたい」と思った人しか書いていませんでした。そういう私に彼の歌は純粋に「書きたい」と思わせてくれるだけの力があったのです。
あれから3年、私の立つ位置も大きく変わりましたが、氷川さんも大きく変わりました。
その彼が休養前に行うラストコンサート。
彼の歌手としての決意と人間性が大きく現れたコンサートだったと思います。
このコンサートについて書きたいと思います。

意外だった会場の雰囲気

このコンサートが活動休止前の最後のコンサートだというのに、会場には全く悲壮感が漂っていませんでした。
色とりどりのペンライトは、その持ち主と氷川きよしという人の歴史をそのまま表しているかのようです。
このペンライトという考えは、日本では西城秀樹が初めて取り入れたと言われていますが、広く日本のアーティスト達が取り入れるようになったのには、K-POPの存在が大きかったかもしれません。韓国のアイドル達の応援に欠かせないペンライトは、カラーが決まっているのが普通です。いわゆるシンボルカラーと呼ばれるもので、ライブごとに形は変わっても色は同じです。
これに比べて彼のペンライトは様々な色があり、毎年、コンサートのたびにカラーが違うように見受けられます。そのペンライトをそれぞれのファンが会場に持参しますから、いつも会場は様々なペンライトの色で溢れているのです。
この日の東京国際フォーラムも例外ではなく、赤や青、ピンクに白など実に様々な色の洪水でした。
ですが、その会場には、これがラストコンサートになる、という悲壮感はどこにも漂っていませんでした。
それは、彼が「必ず帰ってくる」と明言していたからかもしれません。
そうやってファンに安心感を与え、ラストコンサートを行う、というのもKiinaという人の優しさだと感じます。

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