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平原綾香ツアーファイナルに見る『CHRISTMAS LIST』に込めた平和への思い

12月24日の夜、大阪フェスティバルで行われた「Walking with A-ya」を拝見しました。
私は平原綾香のコンサートを拝見するのは、これで3回目です。
今年は彼女はデビュー20周年ということでアニバーサルツアーとのこと。
昨年、大阪フェスでのライブを拝見したときに、彼女が、「フェスティバルホールで歌うならぜひアカペラで歌ったらいい、と勧められて、ここでは特別に他のホールよりも1曲多くアカペラで歌います」と話していたのが印象的で、今年も拝見するなら、絶対にフェスティバルにしようと思っていました。ですから、行ってみて初めてツアーファイナルだということを知った、という、ファンの方が聞いたら怒られそうですね。
そして、ついでに怒られそうなことを言えば、実は私は彼女の歌を音楽評論を書くようになってから本格的に聴き始めました。
いつかの彼女の記事に書いたのですが、彼女が最初に『Jupiter』でデビューしてきたとき、私の印象は正直、あまり良かったとは言えませんでした。
多くの方が絶賛した彼女の歌声が、長年、声楽を勉強し、自分でも歌ってきた私には、どうにも賛美出来なかったからです。
ですから、その後も彼女の歌というものを聴くことはなかった、というのが、本当のところでした。
その印象が覆ったのが、NHK「生き物地球紀行」の『スマイルスマイル』の歌声を聴いたときでした。
非常に伸びやかで力強く、響きが安定している歌声に私は彼女がどれほど努力し続けてきたのか、ということを一瞬で感じました。
まさに「進化した歌声」だったからです。
それからは、彼女の楽曲を数多く聴きました。特に彼女がクラシックの楽曲をカバーしたものは、彼女の歌手としてまだまだ進化することを感じさせるものでもありました。

3年前に音楽評論家になってからは、彼女のコンサートを直に拝見するようになりました。そのどれもが満足させてくれるものであり、年々、彼女が進化し続けているのを感じるものでもあります。
そして、昨夜のライブは、本当に一生、私の心に残るものになったと言えるのです。

『CHRISTMAS LIST』に込められた歌手としてのメッセージ

今回、20周年アニバーサリーコンサートということで、いつものライブとはずいぶん違った趣向がなされていました。
5歳の彼女から、その年代年代の過去の彼女へのメッセージ。その時々に節目となった出会いの音楽。
それらをMCと共に彼女が歌い綴るというもの。
この構成は松任谷正隆氏のプロデュースによるもの。
ノンストップの3時間近いライブの最後の最後。アンコールの後に彼女は1人ステージに残り、客席との際まで出てきて、アカペラで歌い始めました。
『CHRISTMAS LIST』

この曲は、戦争が起きないように、戦争によって引き裂かれないように、子供の頃に願ったクリスマスの願いを、大人になった今、クリスマスリストにして、どうしても叶えて欲しい、と願う曲です。

去年、ウクライナで突然始まった紛争は、今年、治るどころか、ガザ地区の紛争も始まり、平和への願いは遠のく一方です。
クリスマス、という誰もが平和に楽しく過ごす一夜を過ごせない人々がいる。そんな情勢の中で、2006年に発売された、この曲を、彼女がアイバーサリーコンサートの最後の最後にアカペラで歌った思い。
彼女の平和への願いが、この曲に込められているのを感じました。

丁寧にゆっくりと会場にいる人達に、
世界中の人々に届けるように、
ひと言、ひと言を噛み締めるような澄み切った歌声は、歌姫平原綾香の渾身の想いがこもった歌声でした。
彼女は「歌」「音楽」というものを通して、平和へのメッセージを発し続ける歌姫なのだということを感じさせました。

彼女の歌声には力があります。

歌手という職業が、どういう職業であるのか、という姿と、歌手であることの彼女の信念を見せた一夜だったと言えるでしょう。

最後に「もう1曲だけ、歌って帰りまーす!」と言って、ピアノ伴奏のみで歌った『からっぽのハート』

私の大好きなこの曲が最後に聴けるとは思いませんでした。
私にとっても、人生の記憶に残るクリスマスイブになりました。


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