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おじさんは眼鏡屋さん②

こんにちは、おじさんだよ。

今回も、おじさんが眼鏡屋さんとして出会ったお客さんたちのお話をしていくよ。

さて今回は、前回とはまた違った切り込み方をしてみようかと思います。
所謂接客業が「大変なお仕事」と言われる理由のひとつとして、「理不尽なクレーマー対応」があると思います。
変なお客さんに絡まれたり。酷い場合だとセクハラまがいのことをされたり、暴力が起きて警察沙汰になったり…

でも幸いなことに眼鏡屋さんは、ある程度お金があるお客さんが、しかも明確な用事を持って来る場所でありますから、おじさんもそこまで理不尽な目に遭ったことはありません。
その上チェーンのお店なので、おじさんたちはあくまで一次対応。大きな話になりそうになったら「上の者と電話で代わります」と取り次ぐまでがお仕事の範囲。それ以上でしゃばるのはむしろご法度なのです。

ただ、おじさんも接客業の端くれとして、クレーマー対応の経験が、もちろん無いわけではないです。

おじさんが働く眼鏡さんがあるのは高齢の方が多い地域。
うちのお店で出禁レベルのクレーマー認定を受ける人は、認知症、または精神的な病気をお持ちの方が殆どです。

今回は前回よりは淡々と、今まで出会ったちょっと困ったお客さんのお話をしていこうかな、と思います。


まず一番多いタイプは「値段を安くしろ!」です。JINSやZoffなど、格安で眼鏡が作れる眼鏡屋さんが増えてきている今、昔ながらの、フレームレンズ別料金の眼鏡屋さんはこのタイプのお客さんの標的になりがちです。
「安くならないなら向かいの店に行ったっていいんだぞ!」みたいな、明確にこちらを傷つける意図がある人。
若者相手だから強気に出てくるタイプのおじちゃんは殆どこのタイプです。
価格が合わないなら素直に帰ってくれればよいものを…

ただ、ここでお客さんにとにかく穏便に帰ってほしいがために、軽い気持ちで「サービスですよ」と値引きしてしまう人は山ほど知っていますが…段々とお客様からの要求が激化して、耐えられず辞めてしまう新人さんや、店長を降ろされる人、更には売り上げ低迷で店自体が無くなり、そのお客さんが近隣の同社店舗に流れて「あそこの店長はこんなに安くしてくれたのに!」と、他所の店の迷惑になり…と、悪循環で大変なことになったのを見たことがあります…というか、おじさんのお店はまさに、つい一年前までそんな感じだったのです。

今の店長に代わってからは「独断での値引き禁止」と厳しく言い渡されています。
「前の店長は安くしてくれたのに!」と言われることも多く、今まさに昔の負債を払わされているなーと思いながらせかせか働いています。

でもやっぱり、普通に考えて、値札に書いてある額を払えない人にものを売るのはおかしいし。
そういう人に安く売って人助けをした気になって悦に入っているのか、はたまた穏便にものを済ませたいと面倒がっているのか知らないけれど。

うちのお店のルールはこうなっています。
それがおかしいと言われたら、それに対処すべきはルールを考えた人たちで、現場のおじさんたちが個々人の感情でそれに対処すべきでは、ないのです。
それが、どんなお客さんでも。怖い人でも、同情してしまいそうになるような相手でも。


ただこれは、まだたまによく居るくらいの、ちょっと偏屈なお客様、のお話で。

たとえばうちのお店で「出会っても絶対まともに取り合うな」と言い含められているおばあちゃん。
フェラガモの眼鏡に御執心で、たまにカートを引いて現れては「このフェラガモの眼鏡はないのか」「取り寄せられないのか」ときかれます。
でもこのおばあちゃんは過去に5度眼鏡を取り寄せて、キャンセルになっていまして。
忘れて取りに来なかったり。連絡をすれば電話口にそんなの知らないと怒鳴り散らし。
最後に見た時は隣の保険屋さんの福引をしているお姉さんを怒鳴って追い出されていました。

恐らくは、認知症なのでしょう。
ただおばあちゃんと初対面の時、おじさんはそんなこと全く知らないし周りに助けてくれるスタッフがたまたま1人もおらず。
名前を顧客検索して要注意アイコンがついているのを見て、そこで自分がつい数分前に「お探しのフレームが1本だけ九州の店舗に残っているかもしれないから電話してみましょうか」と言ってしまったのが大ミスだと気付き。
まあ、お客様が来たら一番最初に顧客データを確認しろと何度も言われていたのに、そうしなかったおじさんが悪いのですが。
考えた挙句(あんまり良い事ではないけれど)、おばあちゃんの目の前で九州に電話をかけるふりをし、一芝居打って難を逃れました。
しょんぼり帰っていくおばあちゃんの鞄に、「健忘症です。何かあったらここに連絡してください」と書かれた赤い札が下げられており、なんとも言えない気持ちになったのを覚えています。


はてさて、うちのお店でおじさんが出会った大事件といえば、万引き事件。
これは困ったお客さん、というと正直主題から逸れる気はするけど、まあまあまあ。

昨年の…多分夏頃。レイバンのサングラスが店頭からとつぜん無くなっていることがありました。しかも、酷い時には週に2、3本ペースで無くなる…これはもう万引きに間違いないと確信したおじさんたちは交番にかけこみ、相談しながら犯行現場を抑える計画を立てました。
気付かれないように、アイパッドのカメラを店内に仕掛けて。すると案の定、仕掛けたその日に、買い物カートを押して歩く男が、籠にサングラスを放り込んで去っていくのが映りました。

堂々とやられるとこんなに気付けないものか、と驚いた記憶。万引きが疑われる前から(パチ屋勤務時代の癖ではありますが)店頭のお客さんの動向を誰よりも気を張って見ていたつもりでしたから。

そしてこれはもう数日以内にまた来るな、と確信したおじさん達は交番にその動画を持っていき、各所に話を通して準備。
そして翌日またやって来た男がサングラスを盗んだのをわざと見逃して…外に出たのを店で一番大柄で柔道経験者の店長が捕まえました。

その日のうちに、盗んだ商品分のお金、計30万円をお店に返すことを条件に起訴しないでくれと頼まれ、それを呑み…支払いが終わったら店に近づかないと約束させる誓約書を作り署名してもらいました。

お金がないから分割で返す、各月の生活保護が入金される日に払いにきます、と約束していたのですが…最初のうちは払いに来ていましたが、段々と支払いが滞り始めました。
「お金がない」「別の借金返済があるから待ってほしい」と言う万引き犯。
しかしお金がないと言う割に、来るたびに髪色がピンクになったり金髪になっていたり。派手な服を着ていたり。
ある時は籠にインコを入れて、その籠をカートに乗せて現れたり。
足や言語に障害があるのは見てとれましたし、生活に苦しんでいるのに美容院やペットにお金をかけてしまうのも、恐らくは病気に近いなにかなのでしょうが。

ついに半年ほど支払いが滞ってきたころ、うちで盗んだサングラスをかけて、店の前を避けて近くを通っていくのを見つけ…ついに痺れを切らした店長がそれを捕まえたりだとか。

それ以降気まずくなったのか万引き犯は近くでぱったり見かけなくなり…つい最近、万引き犯が刑事起訴になったお知らせが裁判所から届きました。
こちらは正直出禁にできれば何でもよかったので、それ以降は特に気にしていません。

さて、最後の締めくくりに…
何故こんな話を今回noteに書いたかというと。
丁度今日、おじさんが休みの間困ったお客さんとの戦いがあったのを聞かされたからでした。
とにかく話を聞かない。高圧的な女性。
最初は眼鏡を欲しいと来たが値段が高いと一蹴。眼鏡とレンズのセールのセットを案内すると「そんな安物を売り付けるな」と怒鳴り散らし。
結局フレームだけを一本買って帰ったらしいですが、その間も何か質問され、それに答えると「難しいことはわからないのよ!」「時間がないの!さっさとして!」と言われ、取り付く島もなし。

ただ、帰ったあと気がついたそうですが、この女性はとある芸能人と同姓同名…現在の写真をネットで調べると瓜二つ。
彼女は昔テレビによく出ていた、タレントさんだったらしいです。今はあまりテレビで見かけないそうですが(20代のおじさんが知らない人でしたし)、変わり果てた姿に驚いた、と担当したスタッフさんが言っていました。
「芸能人だからこそ、あんな風になってしまうのかもねえ」なんて、スタッフさんはぽつぽつと漏らしていましたが。

我々の仕事は、利益を出すことが第一です。
それにそぐわないお客さんにはやはり厳正に対処しますし、それに手を抜くことは仕事なので許されません。
どんなお客さん相手でも、個々人の勝手な感情で、勝手な判断で対応をしてしまえば、それは会社にも、一緒に働く仲間にも、他のお客さんにも、とんでもない迷惑をかける可能性を生んでしまいます。
それはやっぱり、許されません。それは、おじさんが仕事の上で一番の悪だと思っている事です。

だけれど、「何故そうなってしまったのか」に思いを馳せることも、そりゃあるよな、おじさんたちだって、人間だもんね、って。
そんなふうに思った、今日一日でした。

また機会がありましたら語らせてくださいな。
ではでは。おじさんでした。

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