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美しい庭

実家の庭にマーガレットが
咲いていたころのこと

小学生のとき、教室にかざるお花を
各家庭から自由に持ってきて良い風習があった
あさ一番で先生に渡すと、
まあ!と言われて花瓶に活けられ
朝の会かなにかで
「今日は◯◯さんが
 お花をもってきてくれましたー ぱちぱち」
みたいな感じで紹介される

むろん、登校時に花束を
かかえてくるんだもん
朝のいつもの光景のなか
まさにその子は一輪の花

近所の花屋の子と
ガーデニング趣味のお家の子
常連メンバーはそのふたりで
他にもときどき、もらったーとか咲いたーとかといって
毎日ではないものの、月に何度か誰かしら
それはまあ色とりどりのかわいい花をもってきた
わたしはそれが、羨ましくて仕方なかった

でも、思い出した
実家の庭のかたすみに
毎年季節になるとたくさんのマーガレットが咲いたこと
色は白のみだったけど、ほんとうに豊かに咲いた
そしてそれを忙しい朝、切り花にして
広告に包み、母はわたしに持たせてくれた

でも白いマーガレットは
幼いわたしにはつまらない花にみえて
心は晴れずむしろ憂うつ
それでも朝の会で紹介されることに
憧れるほうが強かった
自分が持つ花は豪華絢爛な花束だと
想像で思い込み
学校までの道すがら
お友だちに会えばこそうっとり得意気に抱えた

あれから30年以上がたち
娘がまた園のお土産でこんなに色とりどりの
マーガレットの花束を持って帰ってきた
わたしは大人になってから
マーガレットという花は
好きなお花のひとつだと思っていたものの
実家の庭の白いマーガレットのことは
なぜかほとんど忘れていた、
ということを思い出した

あのとき庭には秋田犬のミミもいた
あのマーガレットは
どうやってうちに咲くようになったのかなあ
ミミがいて、おおきくてやさしい
その背中にはよくスズメがとまったりしてて
マーガレットが揺れて
陽射したっぷり降り注いだ
あの庭は
世界でいちばん
かわいくてうつくしい素敵な庭だったなあと
思い出してはなぜか涙がとまらない朝

もしも叶うならもう一度あの白いマーガレットを
両手いっぱいにかかえたい

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