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オオツカヒサオ コラム

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オオツカヒサオのコラムです。
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記事一覧

彼女を元気にしていたものは、

彼女を元気にしていたものは、

たまに家族で行く洋服屋がある。

妻が何かを買う日もあるし、娘の何かを買う日もある。などと言うとよほどの常連かのようだが、せいぜい半年に一度くらいの客である。そんな店にその日は私がロンTを探しに行った。

すると若い女性店員さんが話しかけてきた。

「(娘さん)〇〇ちゃんですよね?」

半年に一度のハンイチ客(んな言い方はない)であるにも関わらずよく覚えている。

「とても可愛かったから」

娘は

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別れたと思っていたら、

別れたと思っていたら、

タバコを辞めてもうすぐ一年が経つ。

禁煙アプリでは今日時点で6,476本禁煙し、174,853円の節約ができているらしい。俺は禁煙に成功したと言えるだろう。意志の強さ、としておきたいところだが、飲みに行く(私は飲めないので正確には飲み屋に行く)機会が激減して誘惑がなくなったのも一因であることは認める。

禁煙に成功したいま、俺にとってタバコとは何であったかということを一度総括する必要があると思っ

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世界一のクレーム

娘(3歳半)がプリンを食べていた。

妻はアイスを食べていたのだが、美味しいからと自分のアイスを娘にわりと無理やりひと口あげた。プリンに夢中ではあったがママが差し出してきたひと匙のアイスにももちろん興味はある。ぱくりと食べた。美味しそうではあった。しかしそのあとまたプリンを食べた3歳児は表情を変えた。

「ママがアイスクリームを食べさせたからプリンのお味が変わっちゃったじゃないか!!!」

アイス

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俺はそのとき「信じてくれよ」と妻に言った。

俺はそのとき「信じてくれよ」と妻に言った。

何度買ってもカーテンは難しい。

引っ越しをするたびにカーテンは買ってきた。10回近くは買ってきた。しかし、買い方に関しては上手くなっている実感がまったくない。まず事前の測り方が雑になる。いや、雑なつもりはない。そもそもレールから床までをまっすぐメジャーで測るという行為自体が私にはかなり難しい。そして長さをどうにかこうにか測ってお店に行くと「Aフックでしょうか、Bフックでしょうか」とか「測り方はレ

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偶然たちの大運動会

偶然たちの大運動会

運動会は好きではなかった。

嫌い、というほどではなかったが、足も遅かったし、球技も得意ではなかったから、特に自分のための日ではないという感じで毎年受け入れていた(他に自分のための日があったわけではないが)。

中学に入ると、運動会には時間割に縛られない非日常的な雰囲気(つまり授業がない)とか、友人との意味のない会話(つまり遊べる)とか、付随する楽しさが「運動」以外にもいろいろあることを知っていっ

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「映像の世紀」は誰のために。改訂

「映像の世紀」は誰のために。改訂

NHK「映像の世紀」シリーズの「映像の世紀 バタフライエフェクト」が放送中である。今までのシリーズよりさらに個別の人物や出来事に焦点を当てた短編集のような構成で、相変わらず眼福のある番組となっている。

二十数年前、中学生だった私は学校の歴史の授業中にシリーズ最初の「映像の世紀」を観させられた。NHKへのイメージが相撲中継と大河ドラマくらいだった当時の私にとって「放送局」というものへの新しい視座と

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「鎌倉殿の13人」が面白すぎるので誰かと話したすぎたが相手がいないので書きすぎた。

「鎌倉殿の13人」が面白すぎるので誰かと話したすぎたが相手がいないので書きすぎた。

鎌倉殿の13人、いよいよである。
と、ずっと言っている気がする。

「いよいよ頼朝が挙兵」「いよいよ源平合戦」「いよいよ鎌倉幕府」「いよいよ13人の合議制」そして今回のいよいよは「いよいよ北条義時」であるわけだ。つまりいよいよ主役が真ん中にきたのだ。「鎌倉殿の13人」の主役は北条義時である。

しかし、タイトルは「北条義時」ではない。

タイトルで主人公が分かるかどうかは、その年の大河ドラマが描こ

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「家、ついて行ってイイですか?」と聞かれたら

「家、ついて行ってイイですか?」と聞かれたら

またまたテレビ東京の番組だが「家、ついて行ってイイですか?」という番組がある。番組のメインは繁華街で終電を逃した人たち(あえて逃した人たち含め)にインタビューをして「家までのタクシー代を支払う代わりに自宅について行く」という内容となっている(「YOUは何しに日本へ?」と同じくスタッフが汗をかけばかくほどという企画だ)。インタビューされるのは、たいていは楽しく飲んでいたという人が多いわけだが、カメラ

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「ゴッドタン」、愛。

テレビ東京系「ゴッドタン」。放送開始から10年以上になる人気深夜番組だ。

まず昨今のバラエティ番組でここまで芸人に愛のある番組はないと思う。もちろん他の番組に愛がないと言っているわけではなく「ゴッドタン」の場合は異常に愛があるのだ。芸人への愛だけでできていると言っても過言ではなく、また芸人側もその愛に応えようとしているから作る側と出る側が共闘関係にあって「やらせる」「やらされる」といった類の予定

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「あいつ今何してる?」の名台詞

「あいつ今何してる?」の名台詞

テレビ朝日で放送されている「あいつ今何してる?」。有名人の学生時代の同級生を探すという今までにもあっただろう内容の番組だけれども、ある工夫によって新鮮な発見のあるバラエティになっている。

本来この手のゲスト系バラエティのその面白さは毎回のゲストにかなり左右されるはずで、それは番組に出演する有名人のメジャー感や珍しさが毎回異なるという如何ともしがたい理由があるわけだが「あいつ今何してる?」にとって

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「この世界の片隅に」を毎年観る

「この世界の片隅に」を毎年観る

【ネタバレは極力ありませんが多少内容に触れていますのでご注意ください】

映画「この世界の片隅に」は何度観ても傑作だ。縁あって原画展なども見に行っていたのでハードルも上がっていたのだが軽々と越えていった。

6年の歳月をかけ、4000万円近い資金をクラウドファンディングで集め、こうの史代さんの原作を「マイマイ新子と千年の魔法」の片渕須直さんが監督したアニメーション映画である。

舞台は戦時中の広島

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寿司屋のエキストラ

寿司屋のエキストラ

24時間営業の場末の寿司屋。18時前に入ると角の席には60代の店内でもジャンパーを脱がないおっちゃんと、金髪で化粧の下手なよく喋る女。会話の内容から同伴ではあるのだが、同伴と呼ぶにはあまりにも生々しさのない、色気のない、年の離れた友人のようなふたりだった。「私さ、◯◯◯48ができるときオーディション呼ばれたんだって」「ははは」「興味なかったから行かなかったんだけど、なっとけば良かったな」「ははは」

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カラオケ歌い終わりのひと言リスト

カラオケ歌い終わりのひと言リスト

カラオケで歌い終わってマイクを置くときの何とも言えない素に戻るときに言いがちなひと言をまとめてみた。

「初めて歌ったわ」
→いちばん無難。本当に初めてじゃなくても言える。

「いい歌だよねー」
→上手く歌えたかどうかは置いておく。歌ったのは自分なのに謎の客観視。周りが先にこう言ってくれた場合、その人はいい人。

「懐かしいわあ」
→上手く歌えたかどうかは置いておく。さらに自分の気分も添えて。

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【後輩を飯に誘ったら断られた上司のハートブレイク値】
〜後輩のリアクションによる値の違いと、またその理由についての考察〜

【後輩を飯に誘ったら断られた上司のハートブレイク値】 〜後輩のリアクションによる値の違いと、またその理由についての考察〜

【後輩を飯に誘ったら断られた上司のハートブレイク値】
〜後輩のリアクションによる値の違いと、またその理由についての考察〜

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CASE①
●「今日まだ忙しい?」と聞いてくる(【メシ】という単語は出せないけど伝わってほしい系の)控えめ上司の場合

「(目を合わせずただただ表情が曇る)」
→10pのダメージ/
嫌だという覇気が全身から発せられていて、上司には言葉

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