その日サウナで何があったか。

朝からその街のサウナは混んでいた。

そこはカプセルホテルも備えているため、地上六階地下四階という大規模サウナであるにも関わらず早朝からどこにこれだけ人がいたのだというくらいの混雑であった。

男性専用を謳ってはいたが、そもそも女性など来ないだろうというような前時代的な造り。しかしそれが妙に心地よい。私もそういうお年頃である。そして1000円という安さと、スタッフのおじいちゃんたちのムダにでかい声が、古い湯治を思わせてますます良い。

浴場では裸の男たちがぞろぞろと歩きまわり、効能があるのかないのかわからんが「なんたらの湯」的な様々な種別の浴槽たちに入っては出て入っては出て、を繰り返している。温泉などとは違い、一人で来ている人が多いため会話もなく、音と言えばシャワーと誰かが浴槽に入ったか出たかの音だけである。

私もそんな一員として堂々たる入浴ぶりを見せていたわけであるし、なんなら総髪、ちょび髭の私などまさか初めて来たとは思わせない「常連の湯」と呼ばれかねない入浴ぶりだったはずである。

これはいい。これはよいところを見つけた。今度会社の人たちも誘ってみよう。ちゃぷちゃぷ。などと、いい湯いい気分になっていた。そしていよいよサウナに入ったわけである。

いや、今回は別に何か妙なことが起きたという話ではない。最後まで妙なことは起きない。

ただサウナに入ると数人の男たちがいるわけである。より汗をかくために腕立て伏せをしている40代の男。ただひたすら力石の如く顔を伏せ耐えている60代後半の男。そして私。別によくあるサウナの風景だ。アウトレイジのようなことはない。

しかし、サウナの中にはテレビがあった。ガラス越しにテレビがあった。日曜日の朝8時台である。流れていたのはブリキュアだったのだ。ただ、それだけである。だが、思うのである。時間を潰すためのテレビだろう。そのために経費をかけて入れたテレビだろう。それなのにチャンネル。それなのにチャンネルである。

日曜の朝からひとりでサウナに来る男たちはプリキュアでは時間を潰せない。そしてプリキュアだってサウナで見られることなど想定して作っていない。

コンタクトポイントの悪い例として「サウナとブリキュア」は広告の講義かなんかで使われるわけもないけど使ってもいいのである。じゃあ、この場合、何が正解かと言われても難しいけど。

#コラム

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