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Hisao, Go Home (家に帰りなさい)

私はいわゆる最初から「外資系」と呼ばれる会社に勤めていたわけではない。ソフトウェアを売る会社でサポートという業務をやっていた。たとえ昼休みであっても電話を取るのが遅いとお客さんに叱られた時代だった。口の中に食べ物がいっぱい入ったまま慌てて電話にでて、かえって怒られたのも今は笑い話だ。

個人的な理由から少しだけ英語ができたおかげなのか、上司と一緒に海外の取引先の偉い方と打ち合わせをしたりして、サポートだというのにピークの時は月の半分は海外にいて、文字通り世界を飛び回っていた。

良い経験もたくさんさせてもらったが、ある時出張後にひどい体調の崩し方をして、本当にダメだと思った。今考えれば自分の体調管理すらろくにできず、勢いだけで仕事をこなしていたのだと思う。これが転職を考えるきっかけになった。

少し時は流れ、ある外資系企業に転職した。出来たばかりの日本支社は、なんだかほのぼのしているというか、牧歌的というか、そんな雰囲気を持っていた。例外的にコーヒーうまかったこの会社は元気があって、ある意味キラキラしていたと思う。立ち上がったばかりの企業にありがちな、毎週新しい人が入ってくる状況で、「古株」なんて概念がない会社で私はオリエンテーションの用意に追われていた。

そんなある日、夜7時くらいだろうか、日本語が全くしゃべれない支社長がのっそり部屋から出てきた。10メートルくらい向こうから大きな声でこういった。

Hisao, go home! (ひさお、家に帰りなさい!)

残業するのがあたりまえと思っていた自分は、確か、生意気にも「年棒で残業代発生しないんだからいいじゃないか」と言い返したと思う。すると、支社長は「そうじゃない、残業代を払っていないから帰れと言っている」と言う。頭をガツンと殴られたような衝撃だった。「残業はあたりまえじゃない」ということとともに、外資系は日本企業とは大きく考え方が違うと言うことがすり込まれた瞬間だった。

あれからずいぶんと時が流れたが、いまだに、時折この言葉を振り返る。
実はもっと厳しい言葉だったのではないかと思うのだ。

予定もちゃんと組めないような中途半端なプロであってはいけない。
仕事とプライベートはきちんと分けなさい。
よく遊び、よく学び、必要なら猛烈に働きなさい。

仕事もプライベートも多くが変わったが、変わらない大事な言葉の一つとして自分の中に残っている。


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