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最先鋭のブリティッシュ・カリビアン・ジャズ 〜 ナサニエル・クロス

(3 min read)

Nathaniel Cross / The Description Is Not The Described

Astralさんに教えてもらいました。

南ロンドン人で、チューバ奏者テオン・クロスの兄弟であるジャズ・トロンボーン奏者、ナサニエル・クロスのデビュー・ソロ・アルバム『ザ・ディスクリプション・イズ・ノット・ザ・ディスクライブド』(2021)がかなり楽しいです。

まるで多様な文化が共存する南ロンドンをそのまま映し出したかのような作品で、ナサニエル自身、セントルシア人の母とジャマイカ人の父とのあいだに生まれたカリビアン・ブリティッシュ。このアルバムの音楽にもそんな出自が色濃く反映されているように感じます。

基調になっているのはUKらしいブロークン・ビーツで、いかにもカリブ文化が息づいているロンドン・ジャズだと言えるところ。このリズム、ビート感を聴いてほしいんですよね。スムースに流れるようでいて、どこかイビツなつっかかり、よれも感じるポリリズム。イキイキと躍動するロンドン・ジャズの現代性がここにあるのがわかるでしょう。

それにホーン陣のサウンドが分厚いのもぼく好み。といってもトロンボーン、トランペット、サックスの三管で、それでもって演奏するテーマやアレンジ(ナサニエル自身)が心地いいです。インプロ・ソロもたっぷりあるんですけど、アレンジメント好きのぼくにはみずみずしい三管アンサンブル・パートが大のお気に入り。

1曲目「グッドバイ・フォー・ナウ」なんか、もう最高じゃないですか。ブラジリアン・フュージョンの香りすらただよっている一曲ですが、基本的にはブリティッシュ・カリビアン・ジャズだと言っていいビート感だと思います。リズム担当はドラマー+複数のパーカショニストかな。

そのへん、ナサニエルの公式Instagramにパーソネル記載があったので書いておくと、トランペット、トロンボーン、テナー・サックス、キーボード、ギター、ベース、ドラムス、コンガ、ジェンベ、ガンガン(Gangan、ってなに?)だそう。ところで、近年はこうした公式情報をInstagramでリリースする音楽家が増えていますね。

打楽器編成からも、音を聴いた感触からも、カリブ経由の西アフリカ音楽がこのビート感のルーツになっているんだろうことは容易に察せられます。西アフリカ〜カリブから現代ロンドンへ、という旅を経た上でのコンテンポラリーなUKクラブ・ジャズの最先鋭のかたちがここにはありますね。

(written 2021.9.23)

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